ウクライナ侵攻後の世界秩序の変化:欧州シンクタンク(2023/02/22)
ウクライナ侵攻から1年となる今、欧州シンクタンクが先月行った調査によると、欧州が結束を固める一方で、その他の地域とは溝が広がり、世界秩序が変わりつつあるという。
2月21日付英
『Guardian』:「ウクライナ侵攻による世界秩序の変化」:
ウクライナ侵攻から1年となる今、15カ国を対象とした調査によると、欧州が結束する一方、その他の地域とは溝が広がりつつあり、世界秩序が変わりつつあるという。
シンクタンク欧州外交問題評議会 (ECFR)が先月行った意見調査の対象となったのは9カ国はフランス、ドイツ、ポーランド、英国、米国、そして中国、ロシア、インド、トルコ。...
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2月21日付英
『Guardian』:「ウクライナ侵攻による世界秩序の変化」:
ウクライナ侵攻から1年となる今、15カ国を対象とした調査によると、欧州が結束する一方、その他の地域とは溝が広がりつつあり、世界秩序が変わりつつあるという。
シンクタンク欧州外交問題評議会 (ECFR)が先月行った意見調査の対象となったのは9カ国はフランス、ドイツ、ポーランド、英国、米国、そして中国、ロシア、インド、トルコ。
その結果、地域により、戦争、民主主義やパワーバランスに対する意見が異なっており、ロシアによる侵攻は「ポスト西欧」の到来となる世界秩序にむけたターニングポイントともいえる。シンクタンクのマーク・レナード氏は、「西欧はより結束を硬めたが、世界への影響力は弱まった」とする。
オックスフォード大学の西欧研究ティモシー・ガートン・アッシュ教授は、「この戦争は中国、インド、トルコなどの大国を説得することに失敗した。インドなどの大国を納得させることが喫緊の課題」だとする。
調査により、過去1年ロシアへの感情が硬化したことがわかる。英国(77%)、米国(71%)、EU諸国(65%)と大多数は、過去には「ライバル関係」等とみなしていたロシアを「敵対国」とみなしている。一方、ロシアを利益を共有する「同盟国」または「必要なパートナー国」とみなすのは10%前後で、西欧では平均的にロシアに否定的意見が目立った。
米国やEU諸国では約半数がロシアを「信用できない」としており、EU諸国では、経済的打撃を受け入れてでも、制裁の継続を望む意見が平均55%となった。
昨年の同様の調査結果と比較すると、現段階では戦争はより「民主主義や安全保障をめぐる戦い」という意味合いが強まっているという。
米国では、36%がウクライナを支持すると回答し、「米国の民主主義を守る」必要があるという意見が多かった一方、英国の44%、EU諸国45%は、「自国の防衛」に関してウクライナを支持する傾向にあった。
「戦争が長引いていでも、ウクライナは領土を取り返すべき」とする意見が英国では44%、EUでは38%と多かった。「領土を譲歩してでも、すぐに戦争をやめるべき」という意見は22%、30%と少なかった。
一方、西欧以外の地域では、意見が非常に異なっている。中国(76%)、インド(77%)、トルコ(73%)の大多数は、ロシアは戦争前より「強くなっている」とし、ロシアを戦略的「同盟国」や「必要なパートナー国」とみなしている。また、ウクライナは「領土を譲歩してでも戦争を早く終わらせるべき」との意見が西欧より多い傾向にあった。
ロシアでは、約3分の2が、米国は「敵対国」であるとし、約半数は、EUや英国と同等だとしている。中国では、米国を「ライバル」とみるが43%、英国と同じが40%、EUと同じが34%となった。
西欧以外の多くが、今後10年で「米国主導のリベラル秩序が世界を統一する」と見ているが、西欧では「米国は世界大国の一つに過ぎなくなる」としている。米国が世界をリードすると見るのは、ロシアではわずか7%、中国では6%だった。一方、欧米では、多くが米国と中国の2国支配構造となると予見している。
インドでは回答者の87%が、米国を「同盟国」または「パートナー国」とみなしている。一方、EUは82%が、ロシアや英国は79%が、トルコに対しても59%が「同盟国」または「パートナー国」だと回答している。中国だけが、「ライバル」または「敵対国」(75%)とみられている。
西欧では多くの人々が国際秩序は、西と東、民主主義と絶対主義で二極化した冷戦状態のように戻ると予見している。一方、インドなどの第三国は別の見方をしており、西欧は中国やロシアなどの敵対権威主義国と共存しつつ、第三ブロックでもなく共通したイデオロギーもない、独立したインドやトルコなどとも共存していく必要があるとの見方をしている。
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豪州外相;中豪国交樹立50周年を迎え4年振りに訪中【米・中国メディア】(2022/12/21)
日中は今年9月末、国交正常化50周年を迎えたが、尖閣諸島や台湾をめぐる問題でギクシャクしていることもあって、政府幹部同士の交流があったとは言い難い。一方、豪州も今年12月下旬、国交樹立50周年を迎えるが、冷え込んだ関係を修復すべく、豪州外相が政府要人として4年振りに訪中することになった。
12月20日付米
『AP通信』は、「豪州政府高官、貿易対立改善及び拘束豪州人解放を図るべく訪中」と題して、中豪関係はここ数年、新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題の発生源騒動や双方のスパイ疑惑等で冷え込んでいたが、保守党から労働党政権に転換したことを契機に、関係修復を図るべく、豪州外相が政府要人として4年振りに訪中することになったと報じている。
豪州外相が今週、政府要人として4年振りに訪中することになるが、これを契機に、貿易紛争の解決や中国に拘束されている2人の豪州人の解放に繋がることが期待されている。...
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12月20日付米
『AP通信』は、「豪州政府高官、貿易対立改善及び拘束豪州人解放を図るべく訪中」と題して、中豪関係はここ数年、新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題の発生源騒動や双方のスパイ疑惑等で冷え込んでいたが、保守党から労働党政権に転換したことを契機に、関係修復を図るべく、豪州外相が政府要人として4年振りに訪中することになったと報じている。
豪州外相が今週、政府要人として4年振りに訪中することになるが、これを契機に、貿易紛争の解決や中国に拘束されている2人の豪州人の解放に繋がることが期待されている。
しかし、ペニー・ウォン外相(53歳、2022年就任)は離豪前の12月20日、両国間に顕在する諸問題解決には時間を要すると表明した。
それでも外交問題専門家は、何年も冷え込んでいた両国関係の改善に可能性を見出すために良い機会となるとコメントしている。
同外相は今週、中豪国交樹立50周年記念日を迎えることから、訪中の上、王毅外交部長(ワン・イー、69歳、2013年就任)と会談する予定である。
同外相は記者団に対して、“直近で様々な憶測が飛び交っているが、自身が今言えることは、訪中して中国外相と会談するということと、直接会談は両国関係改善に不可欠なことだ”とした上で、“(進捗に関して)自身は憶測でものを言うことはできず、ただ、両国間の懸案事項を解決していくには大変な時間が必要となるということだ”とコメントした。
中国で目下拘束されているのは、スパイ活動容疑で2019年に逮捕された中国系豪州人の楊恒均氏(ヤン・ヘンチュン、57歳、スパイ小説著者・民主活動家)、及び国家機密漏洩容疑で2020年に拘束された成蕾氏(チェン・レイ、47歳、TVジャーナリスト)である。
豪州政府はこれまで即時解放を訴えてきたが、中国政府は二重国籍を認めていないために外国籍の人物に適用されるべき問題とは捉えておらず、特にスパイ容疑である以上、両人とも中国人として厳しく取り調べた上で厳正に裁くとしている。
一方、今回の外相訪中は、今年5月に保守党政権から労働党政権に代わったこと、また、先月インドネシアで開かれた主要20ヵ国首脳会議(G-20サミット)の機会を捉えて、アンソニー・アルバニージー新首相(59歳、2022年就任)が習近平国家主席(シー・チンピン、69歳、2012年就任)と6年振りとなる首脳会談を持ったことから、何らかの進展が期待されるところとなっている。
なお、豪州保守党政権が数年前、豪州国内の中国系関係者の工作疑惑や、COVID-19発生源の厳正な調査を強く主張したことの腹いせに、中国が豪州産品の輸入規制や高官レベルの交流を拒否したことから、直近数年間は非常に冷え切っていた。
そこで、外交政策関係シンクタンクのローウィ・インスティテュート(2003年設立)のジェニファー・スー特別研究員は、“両国間の懸案問題の進展には時間を要するものであるが、ともかく両国高官が直接会談することで、何かしら動き出す契機となることが期待される”と歓迎した。
同研究員は、中国にとっても豪州産品の輸入規制を緩和することによって経済的なメリットとなることは確かだ、ともコメントしている。
同日付中国『人民日報』は、「外交部報道官、豪州外相訪中について説明」と詳報している。
外交部の毛寧報道官(マオ・ニン、50歳、2022年就任)は12月20日、ウォン豪州外相が12月20~21日に中国を訪問すると発表した。
同報道官は、同外相の訪中は12月21日に中豪国交樹立50周年を迎える一環でのものであるとした上で、滞在中に王外交部長とも会談するとした。
同報道官によれば、先月のG-20サミットの機会に中豪両首脳が会談し、両国関係を発展させるとの重要な共通認識を持ったことから、今回の豪州外相の来訪に繋がったという。
その上で、両国の国交樹立50周年を契機に、相互尊重、互恵、“小異を残して大同につく”原則を堅持し、直接対話を重視して、両国関係を正常軌道に戻し、そして持続可能な発展を遂げるよう後押ししていくことが望まれる、と結んだ。
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