米メインメディアの一つNBCニュースの最新の全国世論調査によると、アメリカ人の過半数がバイデン大統領の職務遂行能力に不服を感じており、半数が大統領としての適性や国の団結について低い評価を下していることが判明した。
米
『NBC』が行った最新の世論調査で、民主党員のほぼ半数を含む10人に7人のアメリカ人が、国が間違った方向に向かっていると考えていることが判明した。また、約60%の人が、バイデンの大統領就任からわずか9ヶ月で、経済の管理能力に否定的な見方をしていることが明らかになった。
米『ブライトバート』によると、NBCのキャスターは、「今朝発表されたNBCニュースの最新世論調査の結果は、民主党にとって恐ろしいニュースです。アメリカ人がバイデン大統領への信頼と国への楽観的な見方をなくしています。」と伝えている。
さらに、「バイデン大統領の支持率は42%、不支持率は54%という惨憺たる状況です。信じられないかもしれませんが、わずか2ヶ月前、バイデンは49%の支持を得ていました。では、何が大統領の支持率を下げているのでしょうか。大統領に危機管理能力があると答えた人はわずか37%で、ないと答えた人の方が多数でした。また、大統領として有能で結果を出すと答えた人は37%で、50%は同意しませんでした。さらに、信じられないかもしれませんが、国境警備、インフレ、犯罪、国家安全保障、経済、そして衝撃的なことに、物事を成し遂げることについて、共和党が二桁のリードを見せています。民主党支持が上回っている気候変動、コロナウイルス、教育、中絶などの分野でも共和党支持率との差が縮まっています。これが現在の状況です。」と語った。
『NBCニュース』によると、今回の調査を実施したハート・リサーチ・アソシエイツ社の世論調査員ジェフ・ホーウィット氏は、「民主党は、4月以降、バイデン大統領に対する評価が急激に下がっている国に直面している」と述べ、「バイデン大統領の約束であった、困難な状況下での、経験、能力、安定のすべてが疑問視されている。人々は安定と落ち着きを求めて投票した。彼らが得たものは、不安定さと混沌であった。」と述べている。
米『ビジネス・インサイダー』は、最新の世論調査で、「アフガニスタンからの撤退や、特に無党派層の間でパンデミック対策に対する嫌悪感が広がっていることなどにより、大統領に対する全体的な支持率は低下傾向にあるものの、党内支持率は85%と依然として高い水準を維持している。しかし、次期大統領選の大統領候補者としては、立場が微妙になってきている。」と報じている。
民主党員のうち、バイデンを指名したほうが「2024年の大統領選に勝つ可能性が高い」と答えた人は41%にとどまった。41%は「他の人」のほうが良いと回答し、党内が真っ二つに分裂している。
2010年にオバマ元大統領について同じ質問をしたところ、民主党員の52%が彼を支持したのに対し、37%が他の人のほうが良いと回答していた。『ビジネス・インサイダー』は、インフレや混乱した外交問題など、バイデン政権の置かれている状況に最も近い過去の政権として、カーター政権を挙げている。
カーター元大統領は、ニューヨーク・タイムズ/CBSの世論調査で、再選をかけた予備選挙で彼を支持すると答えた民主党員はわずか23%であった。カーター氏は1984年の民主党予備選挙で、故テッド・ケネディ上院議員に勝利したが、最終的にはレーガン元大統領に敗れた。
なお、ハリス副大統領の同盟者たちは、バイデン大統領が2024年の出馬を辞退すれば、2020年の予備選挙でのハリスのライバルであったピート・ブティジェッジ運輸長官から挑戦を受けることになる可能性を心配しているという。
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習近平国家主席(シー・チンピン、68歳)は10月9日、辛亥革命(注1後記)110周年記念大会に出席して、「台湾の統一は必ず実現する」と訴えた。その際、平和的な統一を目指すとも付言したが、直近の度重なる台湾領空への数多の戦闘機派遣等の挑発行為から、武力による台湾侵略・併合の可能性は否定できない。これに対して専門家は、中国はほぼ全軍を投入して作戦を遂行するから、米軍の防衛体制構築前に決着がついてしまうだろうと分析している。
10月13日付
『AP通信』:「台湾を取り巻く緊張が高まる中、アジアにおける米中軍事衝突の恐れ」
中国は建国記念日である国慶節(10月1~7日)期間中の4日間で、台湾近海にこれまで最多となるのべ149機の戦闘機を派遣して台湾を威嚇した。
専門家らは、この時点での中国による武力行使は起きないとの見方で一致しているが、今後台湾をめぐる状況は益々危険な状態となるのは必至であることから、米中関係が険悪な中、不測の事態や偶発的衝突が発生する可能性は高いとしている。
英国のシンクタンク国際問題戦略研究所(IISS、1958年設立)のヘンリー・ボイド国防アナリストは、“米国は、大国となった中国と対峙するとしており、台湾が脅かされた場合に助太刀に立ち上がらないとしたら、米国の国益に反することになると考えているので、必ず支援に向かうはずだ”とコメントした。
一方、中国にとって台湾は政治上も軍事上も配下に置くことを歴史的使命と捉えており、習近平国家主席は先週末、改めて“台湾の統一は絶対に実現させる”と高らかに宣言している。
同国家主席は、2019年に公表された国防白書に記されているとおり、“平和的な統一を図る”と繰り返したものの、同白書には、“目的を達成するためには、武力行使も含めてあらゆる手段を講じる”とも言及されている。
これに対して、国務省のネッド・プライス報道官(38歳)は10月12日、台湾支援は“盤石なこと”だとし、“台湾との関係強化は既定路線だ”と強調した。
これまで、米国は台湾に対して、政治的にも軍事的にも支援をしてきているが、しかし、もし中国が台湾に武力行使した場合に台湾防衛に乗り出すか、までは明確に確約していない。
両国間の緊張が最も高まったのは1996年であった。
当時、米国による台湾支援が強まったことにイライラした中国が、よりによって台湾総統を選出する初の直接選挙(それまでは国民大会代表による選挙)の直前に、台湾沖30キロメートル(20マイル)地点においてミサイル発射を含めた軍事演習を実施したからである。
米国は即座に、空母打撃群2編成を台湾海域に派遣して中国を威嚇したことから、当時空母を保有していない中国はたちまち後退を余儀なくされている。
かかる背景もあって、その後25年の間に、中国の軍事力強化が促進され、今やミサイル防衛力が格段に進歩しただけでなく、複数の空母を保有・建造するまでになっている。
国防総省が最近議会に提出した国防白書によると、2000年における中国軍は“規模は大きいがほとんどが旧式”と評価されていたが、現在においては、世界最大の海軍を抱える等、一部では米軍を凌ぐ程になっているとしている。
また、カルロス・デル・トロ海軍長官(60歳、2021年就任)は先週、中国を“最も重大な”抵抗勢力だと位置付け、“今や米海軍を凌ぐ能力を備えた中国軍は、米国の原則・パートナーシップ及び繁栄の対象である台湾を脅かすために、軍事力投入を強行しようとしている”と言及した戦略的指針を公表している。
一方、IISSのボイド氏は、米国が11隻の空母を保有しているのに対して中国は僅か2隻であるものの、中国は台湾侵攻にほぼ全軍を投入できると考えられるだけでなく、中国本土に据えられた対潜ミサイルで米軍艦船を攻撃できることから、艦船保有数で単純に戦闘能力を比較するのは最善のことではないとコメントした。
その上で同氏は、“中国は当然、米国の参戦を遅らせたり、投入部隊を制限させたりする作戦を考えるであろうから、米軍が台湾防衛のために必要な戦闘態勢を敷く前に、中国軍は台湾軍を殲滅させうる”と分析している。
更に、『AP通信』が取得した、台湾国防部(省に相当)が8月に立法院(国会に相当)に提出した中国軍能力分析報告によると、中国軍は台湾の港湾・空港を即座に制圧する能力を有しているが、大規模編成での上陸作戦を実行するには輸送及び物流面で不十分であるという。ただ、それも日々進歩しているとの評価である。
そうした中、中国軍は国慶節期間中の4日間だけで、これまで最多となるのべ149機の戦闘機を台湾の防空識別圏(ADIZ、注2後記)に派遣し、爆撃体制を取らせている。
更に中国は10月11日、台湾対岸の福建省(フーチェン)で上陸作戦と急襲演習を実施したと発表した。
中国国務院(内閣に相当)台湾事務弁公室(1988年設立)の馬暁光報道官(マー・シャオカン)は10月13日、かかる演習は、“域外勢力”と結託した“台湾独立勢力”に対峙するために必要な行動だと正当性を主張している。
なお、台湾の蔡英文総統(ツァイ・インウェン、65歳、2016年就任)は、米外交問題評議会(1921年設立)が発行している『外交問題』(1922年創刊)の最新号に寄稿して、台湾に対する世界的な支援を訴えている。
すなわち、同総統は、“もし台湾防衛が失敗したら、台湾国民にとって悲惨となるだけでなく、戦後70年余りも続く地域の平和及び飛躍的な経済発展を支えてきた安全保障が瓦解してしまう”とし、それは“民主的な連合システムの崩壊にも繋がりかねない”と警鐘を鳴らしている。
(注1)辛亥革命:1911~1912年にかけて、清国で発生した共和革命。名称は、革命が勃発した1911年の干支である辛亥に因む。10月に孫文(スン・ウェン、1866~1925年)の率いる革命軍が清国の主要都市を武力制圧し、中華民国の成立を宣言。12月に上海で孫文が中華民国大総統に選出され、翌年2月に清国最後の皇帝溥儀(プーイー、1906~1967年、1908~1912年在位)が退位し、清国は滅亡。この結果、アジアにおいて史上初の共和制国家である中華民国が誕生。
(注2)ADIZ:各国が防空上の必要性から領空とは別に設定した空域のこと。同空域では、常時防空監視が行われ、(通常は)強制力はないが、あらかじめ飛行計画を提出せず、ここに進入する航空機には識別と証明を求める。更に、領空侵犯の危険がある航空機に対しては、スクランブル発進等を行使することもある。
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