3月8日付
『ABCニュース』、
『ワシントン・ポスト』紙等が
『AP通信』記事を引用して、男女平等指数が最低ランクの日本にあって、特異な存在として東京地検について報じている。
男女格差が激しい日本にあっては、多くの職場で、女性職員がお茶くみをしたり、コピー取りを命じられたりしていた。
しかし、東京地検では、自分の書類は自らがコピーを取り、また、飲みたければ自分でお茶を入れている。
同地検でも20年前は、女性職員は僅か8%で、男性中心の職場であった。
ところが、男女比率改善の方針が出されたためか、2018年には、女性職員が3分の1まで増えた。
更に、今年においては、男女比率が50:50になったという。
日本は、教育機会が男女平等に与えられている点でトップを走るが、総合的な男女平等指数は最低レベルとなっている。
特に、女性の働き場所は、主にサービス業界だったり補助業務であったりで、製造現場、治安職員、管理職はほとんどが男性で占められている。
内閣府男女共同参加局によれば、上場企業の取締役中の女性比率は僅か5%だという。
また、ジェンダーギャップ指数世界ランキングにおいて、日本は116位と最低ランクとなっている。
そこで、『AP通信』が東京地検の2人の女性検事にインタビューして、状況を取材した。
<伊藤りな氏>
・女性の権利擁護を提案した福澤諭吉(1835~1901年)が創設した慶応義塾大学(1858年前身設立)卒業。熾烈な司法試験に合格後、入庁して10年。“裁判官、弁護士の道もあったが、真理を追究する検事が自身のやりたい仕事”だと選択。
・サラリーマンの父、専業主婦の母の下で育つ。キャリア官僚の道を目指すことを応援。現在、2歳の娘を持っているが、夫は料理も作るし、子育てにも積極参加。
・同地検では、男女問わず、1、2年で配置転換がなされるため、上司に取り入って引き上げてもらう等は不可能であり、全て実力・能力主義。
<鈴木ともこ氏>
・検事になって20年の中堅。
・検事であると同時に、2人の息子の母であり妻であるため、現職を全うすることがきつい挑戦となっているが、両親・姉やベビーシッターの助けを借りて何とか乗り切っている。
・今年、育児休暇を終えて職場復帰。同地検では、男性も育児休暇を取る職員が増えている。
・現在、夫が仕事でシンガポールに単身赴任中。“別居生活は本当にしんどいが、休暇で現地を訪れ、息子たちに文化多様性を学ばせる機会が得られるのは良いこと。また、夫と久し振りに会うこととなり、その度にトキメキを感じている”。
・事件捜査に当たって、男女問わず、被疑者や関係者とのコミュニケーションが重要と考えているが、女性が被害者となった性犯罪事件では、被害者が気兼ねなく話せる度合が高いということで、女性検事であることの意義はある。
・但し、(伊藤検事ともども)仕事上の評価は男女に関係なく、個人の能力が全て。
森本宏同地検次席検事(2021年就任、元特捜部長)は、“女性検事を、女性だからという目で見たことはない”と断言している。
なお、同地検は、著名な特別捜査部(特捜部)を抱えていて、古くは1970年代のロッキード事件(世界規模の汚職事件)で田中角栄元総理(1918~1993年、1972~1974年在任)を逮捕し、1980年代にはリクルート事件(未公開株に関わる贈収賄事件)で政治家・官僚らを逮捕し、直近でも東京オリンピックに関わる贈収賄・談合事件を手掛けている。
(注1)ジェンダーギャップ指数世界ランキング:世界経済フォーラムが毎年発表している男女平等指数。昨年7月公表の2022年版では、対象146ヵ国中、日本は116位。特に政治分野(衆議員や閣僚に占める割合等)で139位、経済分野(労働参加率・賃金格差・管理職の割合等)で121位と低迷。なお、トップ5は北欧諸国が占め、その他、10位ドイツ、15位フランス、22位英国、27位米国、99位韓国、102位中国、135位インド等となっている。
(注2)国際婦人デー:国連が、1975年(国際婦人年)の3月8日以来、この日を「国際婦人デー」と制定。現在は、国連事務総長が女性の十全かつ平等な社会参加の環境を整備するよう、加盟国に対し呼びかける日となっている。1908年ニューヨークで、参政権のない女性労働者が労働条件の改善を要求してデモを起こしたが、これを受けドイツの社会主義者クララ・ツェトキンが、1910年にデンマークのコペンハーゲンで行なわれた国際社会主義者会議で「女性の政治的自由と平等のために戦う」記念の日とするよう提唱したことが起源。
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エネルギー関連の最新調査によると、世界最大の石炭生産国である中国では、温室効果ガスの排出から脱却する世界とは逆方向に、新たな石炭発電所の建設の承認スピードが加速しており、2022年には2015年以降で最も承認件数が多くなっていたという。
2月27日付
『ロイター通信』:「中国の石炭発電承認が2022年急増、2015年以来最高」:
27日発表された調査によると、エネルギー確保を目的とし、中国では昨年、106ギガワット相当の石炭発電所建設が承認されている。これは2015年以降で最も多いという。
エネルギー・クリーン・空気研究センター(CREA)とグローバル・エナジー・モニター(GEM)によると、過去一年、中国国内では前年比で半分以上となる50ギガワットの石炭発電の建設が始まった。2022年の建設許可プロセスは異常なスピードで、「数ヶ月ほどの間で、多くのプロジェクトが立ち上がり、承認され、資金を得て着工される」のだという。
2017年~2020年の間の建設承認件数は減少していたが、電力不足へが懸念されていることから、その後の数年は増加傾向となっている。
新規に承認されるプロジェクトの多くは、発電所のベースロード発電量を保証するのに重要とみなされているものの、発電量が十分な地域にも多く建設されており、供給問題には直接関係しないともみられている。
中国では、石炭不足により、2021年9月から工場や家庭での停電が頻発し、昨年の干ばつの影響から水力発電による発電供給も不足していた。昨年の「ゼロコロナ政策」によるマイナス成長や雇用不況により、中国では景気回復が望まれる一方で、CO2削減努力が置き去りされることが懸念されている。
再生可能エネルギー普及も記録的レベルを維持しており、2022年には太陽光パネルが87ギガワットとなり、2023年にはさらなる増加が期待されている。中国は2030年をCO2排出量をピークとする目標を掲げているが、達成の見通しは不透明となっている。
26日付米『ワシントン・ポスト』:「中国の石炭発電建設承認が過去7年で最高に」:
中国では昨年、石炭発電所の増強が2015年以来最高となった。世界最大のCO2排出国では未だに化石燃料への依存が大きく、専門家は早急な削減が必要だと警鐘を鳴らしている。
中国では火力発電プロジェクトが増加しており、2022年中国当局は、国内82地域で106ギガワットの相当の発電承認を出しているという。これは2021年の4倍で過去7年で最高レベルとなっている。
全てのプロジェクトが実際に行われるわけではないが、地方政府は、現在50ギガワット相当の発電所建設を早急に進めている。発電所の建設は、地方政府にとっては、長期的にプロジェクトがそれほど利益につながらなくとも、短期的な雇用創出や建設契約の創生による景気対策目的という側面もある。
当局は新規発電所建設の決定は、エネルギー生産供給力を高めるための「必要悪」で、必ずしも電力セクターが石炭を使用したり、CO2を排出することを意味しないと主張する。専門家は、たとえそうだとしても、新たに数百の発電所を建設するのは、資金的にも、中国の気候目標をより困難にするものだと指摘している。
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