米・英・ロシアメディア;日ロ平和条約交渉と北方領土
11月24日付【
時流:正念場に来た「安倍外交」】の中で、“プーチン氏は、新たに北方領土の共同開発を提案してきたのだが、ここにきてロシアが、国後島と択捉島に地対艦ミサイルを配備することが判った。来月15日にプーチン氏を山口に迎えるというタイミングでのミサイル配備は、ロシア側が改めて北方領土の実効支配を示したものと言える”と述べられている。このニュースに接して安倍首相は、残念な話だとコメントしたものの、冷戦時代も旧ソ連外交に心血を注いだ故安倍晋太郎元外相を間近にみてきた同首相にとって、プーチン氏と胸襟を開いて会談し、日ロ関係を少しでも前進させようという気概が消沈することはないとみられる。
11月25日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』(
『ロイター通信』配信):「日本の首相:ロシアの北方領土へのミサイル配備について“残念”とコメント」
「●安倍晋三首相は11月25日、ロシアが北方領土の島にミサイル配備とのニュースに“残念な話”だとコメント。
●ロシア側は、ミサイル配備の話は、二国間の懸案事項の交渉姿勢に何ら影響しないはずと発表。
●なお、ロシアメディアは11月22日、過去70年にわたり日本と領土問題を抱えてきた北方領土に、バスチョン及びバル複合体地対艦ミサイルが配備されたと報道。...
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11月25日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』(
『ロイター通信』配信):「日本の首相:ロシアの北方領土へのミサイル配備について“残念”とコメント」
「●安倍晋三首相は11月25日、ロシアが北方領土の島にミサイル配備とのニュースに“残念な話”だとコメント。
●ロシア側は、ミサイル配備の話は、二国間の懸案事項の交渉姿勢に何ら影響しないはずと発表。
●なお、ロシアメディアは11月22日、過去70年にわたり日本と領土問題を抱えてきた北方領土に、バスチョン及びバル複合体地対艦ミサイルが配備されたと報道。
●安倍首相はこれまで、原油下落や西側諸国の制裁にあえぐロシアに対して、経済連携を持ちかけることで、長い間進捗をみなかった両国間の平和条約交渉を前進させたいとの考え。」
11月23日付米
『ザ・デイリィ・コーラー』オンラインニュース:「北方領土にミサイルを配備したロシア、日本側に二国間交渉に影響ないと表明」
「●北方領土に最新型ミサイルシステムを配備したと報道されたロシア政府のドミトリィ・ペスコフ大統領府報道官は、緊張が高まっている東アジアにおける防衛強化の一環で以前から計画されていたものであるとし、両国間の係争問題の交渉に何ら影響を及ぼすことはないと表明。
●日本の外務省も、“然るべき措置”を検討するとしながらも、平和条約交渉を進展させる意向に変更はないとコメント。」
11月24日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「日本、
ロシアの北方領土ミサイル配備は両国間関係に影響なしと表明」
「●菅義偉官房長官は11月24日、ロシアが北方領土にミサイル配備をしたニュースに関し、両国間の関係はもとより、ウラジミール・プーチン大統領の訪日準備にも影響は出ないと表明。
●一方、岸田文雄外相はその前日、これは重要な事態と捉え、事情を精査した上で何らかの措置を取ることになろうとコメント。」
一方、同日付ロシア
『ロシア・ビヨンド・ザ・ヘッドラインズ』紙:「北方領土の防衛強化:間が悪いこと、それともロシア政府の警告?」
「●バル複合体地対艦ミサイルは、射程距離120キロメーター(75マイル)の防衛型であるが、バスチョン複合体ミサイルは、オニックス超音速ミサイル搭載で、射程距離が600キロメーターの地対艦だけでなく地対地攻撃型ミサイルシステム。
●同ミサイルシステムの配備計画は、今年3月に報道されたが、軍事専門家の中には、ロシアは防衛戦略だけでなく、中国と同盟強化がなされた場合、日本及びその後ろに控える米国と軍事上対抗できるよう準備しているものと分析。
●ただ別の専門家は、極東の安全保障の問題は1年前にレビューされており、それに基づく今回のミサイル配備で、あくまで北東アジアにおける緊張の高まりに対して、ロシアの軍事ポテンシャルの強化を目指すものであって、日本との領土問題交渉に直接関係するものではないと分析。」
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ロシア・トルコメディア;シルクロードをめぐるロシア、中国の戦略の進捗状況は如何に?(1)
先週報告どおり、主要7ヵ国・地域首脳会議(G7サミット)において、一部に意見の食い違いはあったものの、総論として世界経済対策に一致して当っていくことが合意された。この先進国サミットに呼ばれていない、新興国代表のロシア、中国も、それぞれ「ユーラシア経済連合(EAEU、注1後記)」及び「一帯一路(B&R、注2後記)」政策を掲げて、G7サミット参加国以外の国々との経済圏確立に奔走しているが、世界経済が米国を除いて景気後退の最中にある状況下、中々容易ではない模様である。
5月28日付ロシア
『スプートニク』国際オンラインニュースの報道記事「対ロシア圧力激化:これがロシアのASEAN諸国との連携強化の背景」:
「・西欧は対ロシア経済制裁を継続しているため、ロシアとしては東方へ舵を切り、特に東南アジア諸国連合(ASEAN)と経済連携強化策を追及。
・5月19~20日、ロシア主導でソチにおいて“ロシア・ASEANサミット”を開催。
・1996年7月開始のロシア・ASEANパートナーシップ20周年を記念するもので、同サミット及び個別会談でプーチン大統領は、貿易取引、エネルギー及び武器供給、宇宙開発技術、観光業について積極的に協議。...
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5月28日付ロシア
『スプートニク』国際オンラインニュースの報道記事「対ロシア圧力激化:これがロシアのASEAN諸国との連携強化の背景」:
「・西欧は対ロシア経済制裁を継続しているため、ロシアとしては東方へ舵を切り、特に東南アジア諸国連合(ASEAN)と経済連携強化策を追及。
・5月19~20日、ロシア主導でソチにおいて“ロシア・ASEANサミット”を開催。
・1996年7月開始のロシア・ASEANパートナーシップ20周年を記念するもので、同サミット及び個別会談でプーチン大統領は、貿易取引、エネルギー及び武器供給、宇宙開発技術、観光業について積極的に協議。
・ロシアとASEAN間の貿易高は2015年も低調(2013年5億4千万ドルが2014年に僅か3千万ドルに激減)だが、ASEAN側としては、ロシア主導で進められているEAEUとの連携を模索。
・なお、EAEUは既に2015年5月、ベトナムと自由貿易協定を締結し、また、シンガポールとも同様の協定締結に向けて交渉中。」
5月27日付ロシア
『ロシア・ビヨンド・ザ・ヘッドラインズ』多言語ニュースの報道記事「ロジスティクス問題と相互不信がユーラシア大陸へのシルクロード政策の妨げ」:
「・2015年5月、プーチン大統領と習近平(シー・チンピン)主席は、EAEUとB&R構想のうちの“シルクロード経済ベルト(SREB)”を連携させることで合意。
・当初、欧州連合(EU)からの経済制裁に喘ぐロシアは中国の資金力に期待し、また、中国はEAEU主導国のロシアとの提携がSREB構想実現に資すると判断。
・しかし合意後1年経った現在、新敷設鉄道ルートの経済性及び中ロ間の不信感のために停滞。
・例えば、中国は新敷設鉄道を欧州までノン・ストップで走らせたいが、ロシアやカザフスタンはEAEU内で貨物の荷揚げ・荷卸しを要求しているため、その鉄道ルートの絞込みで未だ不合意。
・また、ロシアは中央アジアに影響力を留めるため安全保障面での関心が高くEAEU一体として交渉する立場を取っているが、中国のSREBは究極的に中央アジアを中国資本傘下に収める構想であるためか、EAEU内各国との個別交渉を強く主張しており、これが相互不信を増長。」
一方、5月26日付トルコ
『トルコ・ウィークリィ』誌の報道記事「B&R政策はシルクロー
ド沿い諸国に新たな機会」:
「・5月25~26日にアスタナ(カザフスタン)で開催された“アスタナ経済フォーラム(AEF、注3後記)”において、カザフスタン、シンガポール、エストニア、ラトビア、タジキスタン高官は異口同音に、B&R政策はシルクロード沿いの諸国にとって、提携強化・共同開発を遂行するまたとない機会だと演説。
・カザフスタンのザシリコフ経済副大臣は、B&RとEEAUの連携によって、シルクロード沿いの経済開発が発展することに期待すると発言。」
(注1)EAEU:2014年5月にカザフスタンのアスタナで創設条約を調印、ユーラシア経済共同体(2000年10月組成)を発展的解消して2015年1月に発足した国際経済同盟。加盟国は、ロシア、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス。総人口1億7千万人、国内総生産(GDP)合計額は4兆ドル(約440兆円)と日本の次だが、EU比較ではその4分の1に過ぎない。
(注2)B&R:2014年11月に中国で開催されたアジア太平洋経済協力首脳会議で、習主席が提唱した経済圏構想。中国西部から中央アジアを経由して欧州につながる「シルクロード経済ベルト」(「一帯」の意味)と、中国沿岸部から東南アジア、スリランカ、アラビア半島の沿岸部、アフリカ東岸を結ぶ「21世紀海上シルクロード」(「一路」の意味)の二つの地域で、インフラストラクチャー整備、貿易促進、資金の往来を促進しようとするもの。
(注3)AEF:ユーラシア経済科学協会とカザフスタン政府によって2008年に設立された国際的な地域組織。本部はアスタナで、毎年100ヵ国余りからの参加者を集めて年次総会開催。
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