新型コロナウィルス(COVID-19)発症地と言われている中国は、マスク・医療防具等を世界中にばら撒き、初期対応のまずさを糊塗しようと試みた。これが然程効果を上げないとするや、今度は新感染症で最も重要とされるワクチンを大盤振る舞いすることで、世界からの支持を獲得しようとしている。そして、次に狙っているのが、2022年冬季オリンピックにおけるソフト・パワー外交(注1後記)で以て更に評判を上げようとしているが、国際人権団体等は、同国の数多の人権蹂躙問題より、各国に対してボイコットを呼びかけている。
2月3日付
『ロイター通信』:「中国、冬季オリンピックを通じてソフト・パワー外交を目論んでいるが国際人権団体は大反対」
中国は、2022年冬季オリンピックを通じて、COVID-19感染症の克服、華やかな競技場設備や壮大な演出等で、世界からの支持を獲得しようとしている。
しかし、国際人権団体が大反対していることや、世界のCOVID-19感染問題がどう展開しているかによって、中国の思惑どおりに運ばない可能性がある。
北京大会組織委員会は、2022年2月4日開会の冬季大会について、“純白な氷と雪の上での楽しいランデブー”を提供するとしているが、北京北西部の乾燥帯に広がる茶色の山々を削り取ってゲレンデ等を造成することから、人工雪の使用は必須とみられている。
また、習近平国家主席体制下では、COVID-19による景気後退から素早く回復しているものの、市民社会の締め付けを強化し、異議等を厳しく取り締まってきている。
そこで、国際人権団体や西側諸国の政治家らは、香港の反民主化政策や新疆ウィグル自治区での人権問題を理由として、中国がオリンピックを開催すること自体を問題視している。
更に、保健衛生専門家は、2020年夏季大会を1年延期に追い込んだCOVID-19感染流行問題が、2022年2月までに沈静化しているとは考え難いとも表明している。
しかし、中国は、水際対策を強化・継続して感染拡大を封じ込め、新たな感染者発生を低く抑え込んできている。
今現在も、ほとんどの外国人訪問者の入国を禁止しており、今後、選手団やその他関係者の受け入れをどうするのか明らかにされていない。
中国のシンクタンク、中国国際化センター(2008年設立)の王輝耀代表(62歳、ワン・ホゥエヤオ)は、中国近代化の祖である鄧小平最高指導者(1904~1997年、テン・シャオピン)の著名な言葉、“黒猫も白猫もネズミを捕まえる限り、(その違いについて)人は意に介さない”を引用して、“感染症制御の実績を示し、かつ、(オリンピックという)世界的娯楽の場を提供すれば、世界の人々もイデオロギーの違いや中国に対する悪いイメージなど問題視しないはずだ”と解説している。
習国家主席が1月に大会競技場等の施設を視察した後、大会組織委員会幹部はすぐさま、“中国共産党や国民の信頼及び期待を決して裏切ってはならない”との檄を飛ばしている。
しかしながら、英国のドミニク・ラーブ外相(46歳)が昨年10月、中国政府による新疆ウィグル自治区の少数民族迫害政策を理由として、英国選手団の北京大会ボイコットの可能性は否定できないと表明している。
更に、180以上の国際人権団体が2月3日、“世界における最悪の人権侵害のひとつ”と認定される中国の政策に“お墨付き”を与えないためにも、北京大会はボイコットすべきだと主張する公開書簡を各国宛に発信した。
また、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW、注2後記)は国際オリンピック委員会(IOC)に対して、冬季大会を開催する中国における人権問題にどう対応しようとしているのか、公式な見解を2月までに回答するよう求めている。
HRWのソフィエ・リチャードソン中国部主任は、IOCから依然正式な回答を得ていないとした上で、(人権問題に対する)選手団の行動に対して、中国側がどう対応してくるのかが冬季大会に関わる大きな懸念材料だとコメントした。
一方、IOCは『ロイター通信』のインタビューに答えて、中国政府には人権問題に関わる懸念を既に伝えており、これまでの中国側対応に対するIOCの評価は、中国側が人権、報道の自由、インターネット規制について“十分保護する”旨確約している、というものであった。
更に、直近で中国国営メディア『新華社通信』がIOCのトーマス・バッハ会長(67歳、ドイツ人弁護士、元フェンシング選手)にインタビューしたところ、同会長は、中国側の冬季大会の準備状況は“奇跡に近い”とコメントしていたという。
同日付『AP通信』:「国際人権団体、2022年北京冬季大会のボイコットを提言」
180余りの国際人権団体が2月3日、中国政府による少数民族の迫害政策を理由として、北京大会をボイコットするよう各国政府に求める公開書簡を発信した。
チベット族、ウィグル族、内蒙古族、香港住民等も所属する人権団体が統一行動を取ったものである。
同グループは以前、IOCに対して開催地を北京から別の場所に変更するよう求めたが、スポーツイベントであって政治は関わらないとして、この要求を退けている。
中国は2008年に北京夏季大会を開催した際、人権問題を改善すると約束したにも拘らず、同政府による少数民族に対する締め付け、取り締まりは厳しくなる一方で、むしろ改悪の状態となっている。
特に直近で注目されるのが、新疆ウィグル自治区のウィグル族に対する人権蹂躙問題で、米国新政権のアントニー・ブリンケン国務長官(58歳)も先週の就任初日に、ウィグル族に対する集団虐殺が行われたと認められると発言した。
しかし、中国政府はすぐさま、内政干渉やスポーツの政治問題化には断固抗議するとアピールしている。
(注1)ソフト・パワー外交:国家が軍事力や経済力などの対外的な強制力によらず、その国の有する文化や政治的価値観、政策の魅力などに対する支持や理解、共感を得ることにより、国際社会からの信頼や、発言力を獲得しようとする外交政策。
(注2)HRW:米国に基盤を持つ国際的な人権NGOでニューヨーク市に本部を置く。世界各地の人権侵害と弾圧を止め、世界中すべての人々の人権を守ることを目的に、世界90か国で人権状況をモニターしている団体。
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ミャンマーで2月1日に軍が政権を取って以降、100万人以上の国民がインターネットに接続しなくても通信できるメッセージングアプリを、スマートフォンにダウンロードしていることが分かった。このアプリは、香港やタイの民主化活動家の間でも利用されていたものである。
仏金融誌
『レゼコー』によると、ミャンマーでは、今週1日のクーデター後48時間以内に110万人以上のミャンマー人が「Bridgefy(ブリッジファイ)」をダウンロードした。この数字が明らかになったのは、プラットフォームのCEOであるJorge Rios氏が3日、ロイター通信社のインタビューで明らかにしたためである。軍事政権誕生後24時間で、人口5400万人のうちSNSユーザー2200万人を持つ国で、ダウンロードがすでに60万台に達していた。
Brigefyは、現在サンフランシスコに拠点を置くメキシコの新興企業が2014年に立ち上げた。インターネット接続を必要としないため、従来のプラットフォームを検閲、スパイ、禁止するような体制の国々で、最近人気が爆発的に高まっている。同社は3日、ミャンマーの人々が混乱の中で、「困難な時期に役立つことを期待している」と通知した。
インドの日刊紙『インディアン・エクスプレス』は、進行中の危機の中で、通信用アプリが突然人気を得ることは、新しいことではないと報じている。つい先月、WhatsAppのプライバシーポリシー変更の問題で、ライバルのSignalとTelegramが数日のうちに大量のユーザーを獲得している。
今回ミャンマーのクーデターでは、AndroidとiOSユーザー向けのオフラインメッセージングアプリBridegfyが人気を集めている。インターネットを利用せず、ブルートゥース(Bluetooth)で携帯端末をつないでチャットができる。遠く離れていても、間にいる人々の端末を経由することで、メッセージを交換することができる。そのため、通信する相手との間にBridgefyユーザーの数が多ければ多いほど良い。
また、他のユーザーと現在の位置情報を共有することもできる。さらに、連絡先リストに登録されていなくても、近くにいるユーザーたちにメッセージを一斉送信できるブロードキャスト機能も利用できる。この機能は、多くのユーザーが他のユーザーも近くにいることを知っているような場合、例えば大学のキャンパスやコンサート会場、またはデモのような大規模な集まりの中で有益なものとなる。
Firechatのような同様のBluetoothベースのネットワークで動作する他のアプリも、イランやイラクの抗議活動の際に使用されていた。
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