COP22:米投資家トランプ氏へ圧力
昨年議長国フランスのメディアは、パリ協定合意を求めて特に米国の投資家や大企業が中心となって意見書を出していた事に注目し、気候変動枠組み条約に加盟する全196か国採択という快挙を成し遂げた影の立役者の一つと見た。今回もトランプ次期大統領に対する米国企業や投資家など資本主義の圧力に注目する。
『ルモンド紙』は、「パリ協定から離脱しないよう多国籍企業がトランプ氏に求める」と題して、16日マラケシュで始まった気候変動会議(COP22)早々に、米国を中心に企業、投資家、事業家の意見書が発表された事を報じる。意見書の中で昨年COP21で採択されたパリ協定の取組みと温室効果ガス削減のための政策継続を改めて求めた事を「企業や投資家の警告」と評する。
意見書には名だたる大企業(インテル、ヒューレット・パッカード、イーベイ、ナイキ、デュポン等)に加え、中小企業も名を連ねる。...
全部読む
『ルモンド紙』は、「パリ協定から離脱しないよう多国籍企業がトランプ氏に求める」と題して、16日マラケシュで始まった気候変動会議(COP22)早々に、米国を中心に企業、投資家、事業家の意見書が発表された事を報じる。意見書の中で昨年COP21で採択されたパリ協定の取組みと温室効果ガス削減のための政策継続を改めて求めた事を「企業や投資家の警告」と評する。
意見書には名だたる大企業(インテル、ヒューレット・パッカード、イーベイ、ナイキ、デュポン等)に加え、中小企業も名を連ねる。「気温上昇を2度未満に抑制するために、自分達の分担分を達成するよう努力」、「企業と国家両方が結集する事が必須で、環境とビジネス両方を維持する最良の手段」と並々ならぬ決意で圧力をかけた。これら企業には持続可能な発展に関連する部署があり、今回の意見書の署名者(社)の殆どはCOP21から参加しており、トランプ氏当選の翌日に直ぐに再結集した。世界自然保護基金(WWF)もパリ協定の目標達成に民間分野の声が必須と考える事に触れ、民間の力に期待を寄せる。
『レゼコー紙』も民間力に注目するが、パリ協定に関する米国を次の見出しで総括する。「企業のトランプ次期大統領への警告」、「ケリー長官は米国の目標維持を主張」、「化石異燃料の終焉は明日には来ない」。「レゼコー紙」も資本による警告の有効性を認め、「トランプ氏の気候変動懐疑主義によって、米国が気候への取組みを放棄する事になならない」との見方を示し、「企業や投資家が意見書で打ち出した要求は、低炭素経済の米国が将来繁栄するための条件の一つ」と意義付ける。また、負担を強いられるはずの民間企業の中でも米国ビジネスのアイコンともいうべき企業がパリ協定の目標達成のために、自分の分担分を果たす準備が出来ていると、進んで言ってきている」と、驚きをもって確実性を見出す。
また、
『フィガロ紙』によると、COP22での演説で、「再生可能エネルギーが徐々に競争力をつけて、気候とエネルギー需給両方の観点から選択できるよう方向づけるのは“市場”」と、ケリー米国務長官も述べており、民間力に期待をよせる。
とはいえ、直ぐに状況が改善する訳ではない。
『AFP通信』によると、「米国は現在設定された国際目標を達成するべくあるべき道筋にいる」とケリー長官が述べたものの、「化石燃料は使用料が増え続け、国際エネルギー機関(IEA)は、「石油ガス石炭は、以前2040年のエネルギー消費の74%に相当する」と予測を出し危機感を示す。トランプ政権がパリ協定に留まったとしても、道のりは長い。
閉じる
トランプ新大統領:仏メディアがみる各国への影響と動向
トランプ新大統領の一挙一動に世界が注目する中で、トランプ新大統領登場の主要国への影響と動向を読み解く。仏メディアは自国以外では特に、ブレグジット後の英国、中国、日本への影響に関する記事が多くみられる。仏メディアは次の通り報じる。
メイ首相にはトランプ新大統領登場は好機
『レゼコー紙』は「米国との特別な関係が試される」と見出しを付け、「慎重なメルケル独首相に対し、メイ英首相は極めてオープンだった」と報じる。トランプ氏とメイ英首相の電話会談後の英政府の発表によると、メイ首相はトランプ氏から米国に招待された。また「レーガン=サッチャーの蜜月時代よりも緊密な関係を望む」と望むトランプ氏に対し、「英国は変化する世界に適応しなければならない」と応じた。...
全部読む
メイ首相にはトランプ新大統領登場は好機
『レゼコー紙』は「米国との特別な関係が試される」と見出しを付け、「慎重なメルケル独首相に対し、メイ英首相は極めてオープンだった」と報じる。トランプ氏とメイ英首相の電話会談後の英政府の発表によると、メイ首相はトランプ氏から米国に招待された。また「レーガン=サッチャーの蜜月時代よりも緊密な関係を望む」と望むトランプ氏に対し、「英国は変化する世界に適応しなければならない」と応じた。また、ジョンソン英外相もトランプ新大統領に善意を示しており、「レゼコー紙」は「英政府も英国の伝統的な実利主義外交を取る」と評する。
英国のトランプ接近の背後には、北大西洋条約機構(以下、NATO)がある。「NATOで米国に次ぐ軍事力を誇る英国政府は、NATOにおける米国のコミットメントを再確認させるべく、トランプ氏に圧力をかける予定」で、「NATOで英国はその役割を期待される」との見方を示す。一方貿易協定では、「保護主義貿易を前面に出すトランプ氏と自由主義経済のメイ首相が妥協点を見つけるのは難しい」と見る。
東アジアでの軍事レース再燃と日本の軍事費負担増
『フィガロ紙』は、日本については「トランプ氏は日本にとって未知数」と報じ、「TPPを拒否するトランプ政権の不確実性の中で、輸出に牽引された最新の日本の経済成長も長くは続かない」とみる。しかしそれより、トランプ新大統領の外交政策が、日本国内の経済政策に深く影響を及ぼす事を「フィガロ紙」は重くみる。日本は伝統的に軍事費をGDPの1%に抑制してきたが、稲田防衛大臣が既に「1%を超える事を妨げる規定は何もない」と発言した事から、「日本は米国から既に、金融バズーカ砲よりも軍事費にもっと予算を使うよう命じられた」可能性を指摘するモルガンスタンレーのエコノミスト山口氏の見解を採用する。トランプ新大統領は東アジアを不安定化させ、費用がかかる軍事レースを再開する可能性が高いため、それに伴い日本国内の米軍の費用負担増加を免れないと見る。
トランプVS中国 既に応酬始まる
『トリビューン紙』は「中国は、トランプ新大統領が関税に固執すればiPhone販売を中止すると脅す」と報じる。具体的には、米国工業活性化のために、中国からの輸入品に45%の関税を課す事をトランプ氏が実施する場合、ボーイングの受注をまとめてエアバスに変更、米国車とiPhone販売中止、トウモロコシと大豆の輸入中止を示唆しており、既に米中の応酬が始まったようだ。
「トリビューン紙」は、トランプの保護主義政策の理由だけでなく、地球温暖化抑止への努力を中国が否認したため、中国との二国間関係を悪化させるポーズが必要だったと分析し、iPhoneの販売中止は余程の事がない限りない実施しないと見る。電話会談では両者は協力する事で一致した模様。仏メディアでは、以前より米中は見かけほど関係は悪くなく、真っ向から対立する事はないとの見方が主流を占める。
閉じる
その他の最新記事