仏メディア:国連高官トランプ氏を名指し非難(2016/09/08)
ついに国連高官までもが米国共和党の大統領候補トランプ氏を名指しで非難した。国連の職員が公式な立場で発表するする演説や声明は通常抑制的で極めて官僚的であるのは国際機関でも変わらない。しかし国連高官がハーグで表明した右傾化への懸念は、国連の外交スタンスにおいて極めて異例なものとして世間を驚かせた。フランスメディアは次の通り報じる。
『レゼコー紙』は「国連がトランプ氏とルペン氏を標的とする」と見出しをつけて異例の発言を報じる。異例の発言をしたのはヨルダン人の国連人権高等弁務官のザイード・ラアド・アルフセイン氏で、オランダのハーグでの安全保障関連の会合の就任演説の場だった。アルフセイン氏は欧米民主主義におけるポピュリズム演説の高まりを嘆き、仏極右政党党首ルペン氏やオランダ極右政党のウィルダース氏と共に米国共和党大統領候補のトランプ氏を名指しで激しく非難した。...
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『レゼコー紙』は「国連がトランプ氏とルペン氏を標的とする」と見出しをつけて異例の発言を報じる。異例の発言をしたのはヨルダン人の国連人権高等弁務官のザイード・ラアド・アルフセイン氏で、オランダのハーグでの安全保障関連の会合の就任演説の場だった。アルフセイン氏は欧米民主主義におけるポピュリズム演説の高まりを嘆き、仏極右政党党首ルペン氏やオランダ極右政党のウィルダース氏と共に米国共和党大統領候補のトランプ氏を名指しで激しく非難した。「恐怖の戦略に頼る扇動政治家」、「嫌悪に満ちた空気はいつでも大規模な暴力に変質しうる」と懸念を示す。
ここまでの非難であれば、国連高官の発言だとしても世間を驚かせなかっただろう。しかしアルフセイン氏は、極右政治家が発信する声明を過激派組織イスラミック・ステート(以下、略称IS)と関連付けた。
『ルモンド紙』によると、アルフセイン氏は、自身がヨルダン人イスラム教徒で人権を擁護推進が任務と明言した上で、「欧米極右のポピュリズムに共通する特質は、ISが提唱するイデオロギーと全く類似する」と述べた。「恐怖のプロパガンダで市民を煽って操り、過度な単純化に基づく」点で、「程度の差はあれIS同様の戦術と思想」という。また極右が約束する「単一の民族と宗教で統一された人々が平和に暮らした輝く過去への回帰」は、「ありそうだが実際には過去にもこれからも決して存在せず」、「ペテン師の作り話」とオランダ司法の責任者や職員の前で述べた。
「ルモンド紙」によると、アルフセイン氏は「行為ではなく、発信や宣伝の手法の類似」である事を強調した。また、排他的な極右を「グロテスク」と非難したアルフセイン氏に対してオランダ極右政党PVVのウィルダース氏はツイッターで「官僚を排除しよう」と応酬した。ウィルダース以外はまだ反応を見せていない。
『リベラシオン紙』はアルフセイン氏の発言に同意するようだ。イスラムの過激化とテロ対策に迫られるオランド政権にとっては極右の台頭は頭痛の種だ。トランプ氏がパリ襲撃とフランスを度々選挙キャンペーンで持ち出して煽る事を「全く迷惑な演説」と報じる。
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仏メディア:北朝鮮ミサイル発射(2016/09/07)
杭州のG20サミット開催中のタイミングで北朝鮮は弾道ミサイル3発を発射した。核兵器と弾道ミサイル開発国連決議を無視した格好の北朝鮮の挑発行為に対し、安全保障理事会で非難決議が全会一致で採択された。フランスメディアは次の通り報じる。
『レゼコー紙』は、北朝鮮国営
『朝鮮国営通信』の報道内容から「金正恩第一書記は日本の米軍基地に新たな狙いを定めた模様」と報じる。「レゼコー紙」によると、北朝鮮西部から発射された弾道ミサイルはノドン型で1000キロ飛行し3発とも日本海の防空識別圏で落下した。また金正恩第一書記は実験目的を「信頼性、標的まで到達する精密性、改良版弾道ミサイルの飛行の安定性の再評価」と述べ、軍備強化は「太平洋に駐在する米国の侵略の起点となる軍事基地に対する攻撃のため」と発言した。...
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『レゼコー紙』は、北朝鮮国営
『朝鮮国営通信』の報道内容から「金正恩第一書記は日本の米軍基地に新たな狙いを定めた模様」と報じる。「レゼコー紙」によると、北朝鮮西部から発射された弾道ミサイルはノドン型で1000キロ飛行し3発とも日本海の防空識別圏で落下した。また金正恩第一書記は実験目的を「信頼性、標的まで到達する精密性、改良版弾道ミサイルの飛行の安定性の再評価」と述べ、軍備強化は「太平洋に駐在する米国の侵略の起点となる軍事基地に対する攻撃のため」と発言した。この事から「つまり日本に駐留する米軍基地とグアム島が北朝鮮の射程距離に入った」との韓国の専門家の見解を採用する。
また「レゼコー紙」は「中国が北朝鮮のミサイル所有を支援したのか?」と小見出しをつけて中国の関与の可能性を報じる。「8月末に北朝鮮の潜水艦から発射されたミサイルは中国のJL-1型ミサイルに酷似しており、中国製もしくはJL-1型に極めて近い改造型である可能性が高い」という米国サンアンジェロ大学のベクトル氏の見解を引用する。この見解は「北朝鮮は中国からミサイルを獲得した事を示唆する」というイスラエルのフィッシャー研究所の専門家と共通の見解という。
『フィガロ紙』はG20開催中でも特に、中国の習近平国家主席と韓国の朴大統領の会談の数時間後に実施された事から、中国への警告でもあったと指摘する。「中国は北朝鮮が懸命に維持したい主要同盟国だが、両国の関係は北朝鮮の核や弾道ミサイル計画で緊張状態にある」。また「韓国は米国の防衛ミサイルTHAADを国内配備して北朝鮮に反撃したが、この決定は論争を呼び、中国とロシアが一斉に非難した」という状況がある。習近平国家主席も「米国ミサイルシステム配備に繰り返し反対し、この問題の扱いを誤れば地域の紛争を激化させると警告」しており、これら「北朝鮮の挑発行為」は「中韓関係に対する挑戦」で両国に揺さぶりをかけているとの見方を示す。
『ルモンド紙』は、国連安全保障理事会は北朝鮮のミサイル発射を強く非難し、さらなる制裁措置を示唆し、北朝鮮に新たな核実験行為を控えるよう求めた事を報じる。理事会宣言が全会一致で採択され、北朝鮮の主要同盟国である中国を含む事を大きく評価する。一方で、核と弾道ミサイルを禁ずる国連決議と制裁措置を北朝鮮は無視する現実があり、効力への疑問が浮き彫りになる。また「ルモンド紙」は弾道ミサイルの飛行距離が伸びて日本のほぼ全土に到達可能になった事、金正恩が実験成功に満足して先制攻撃を示唆した事を報じ、北朝鮮のミサイル技術改良が懸念される。さらに今回は日本への事前通告がなかった。
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