フランス、12歳以下の子どもの新型コロナウィルスへの感染についてわかっていること(2021/08/25)
9月からの新学期の開始を数日後に控え、フランスでも子どもの間でのデルタ株の蔓延が懸念されている。0~9歳児の陽性数は、6月21日から27日は856例だったのに対し、8月2日から8日の間は8516例に増加している。
仏ニュースサイト
『ソルティラパリ』によると、9月2日から始まる新学期に向けて、ワクチン未接種の子どもたちの間で新型コロナウィルスの感染が急拡大するのではないかと心配されている。パスツール研究所は、デルタ株が現在フランス国内で新規感染者の98%以上を占めていること、デルタ株の感染力の高さ、12歳以下の子どもがワクチンを接種していないことなどから、9月にはフランスで毎日約5万人の子どもが感染すると予測している。...
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『ソルティラパリ』によると、9月2日から始まる新学期に向けて、ワクチン未接種の子どもたちの間で新型コロナウィルスの感染が急拡大するのではないかと心配されている。パスツール研究所は、デルタ株が現在フランス国内で新規感染者の98%以上を占めていること、デルタ株の感染力の高さ、12歳以下の子どもがワクチンを接種していないことなどから、9月にはフランスで毎日約5万人の子どもが感染すると予測している。
ヴァル=ド=マルヌ県の病院の集中治療室責任者、ジャン=ルイ・トゥブール教授は、「デルタ株は感染力が強く、予防接種を受けていない子どもたちがすぐに感染する。」と述べている。8月19日付のル・モンド紙に掲載された記事では、約30人の専門家が状況について警告し、「デルタ株が多数を占める国では、0~19歳の入院率が上昇している」と説明している。「フランスでは、過去1年間で、検査で陽性となった0~9歳児の1.2%が入院しており、その数は昨年の同時期の2倍、10~19歳児の4倍となっている。」と語っている。
しかし、医師たちは、幼い子どもたちの間で新型コロナウィルスの症例が増えても、重症化の増加につながることはほとんどないと説明している。現在までに、フランス国内で陽性となって入院した10歳未満の小児は56名で、うち7名が集中治療室で治療を受けた。
フランス小児科学会の会長クリステル・グラルゲン教授は、「幼いために高熱が出て入院が必要な子どももいる。気管支炎の場合は、数時間、病院で様子を見る必要がある。しかしほとんどの場合、重症化しない。」と述べている。
仏『ルフィガロ』紙によると、パンデミックが始まって以来、フランスで10歳未満の子どもは7人亡くなっている。一方、インドネシアでは、保健省のデータや専門家によると、新型コロナウィルスに感染した1200人以上の子どもが死亡しており、そのうち約半数が1歳未満である。これに対しフランス小児科医連合(SNPF)の会長であるブリジット・ヴィレイ医師は、「社会経済的なレベル、基本的な健康状態、医療などの問題がある」と指摘している。
仏『ウエストフランス』紙によると、米国疾病予防管理センター(CDC)が発表した報告書では、パンデミックが始まってからの米国での子どもの死亡数は約500人と報告されている。
フランス小児科学会の会長クリステル・グラルゲン教授は、「米国の子どもの死亡者数は、米国の子どもたちの健康状態との関連で分析しなければならない。残念なことに、アメリカの子どもたちのすべてが健康なわけではない。一部のマイノリティにとって、医療へのアクセスは困難であるなど、医療分野での不平等は大きい。肥満の割合の高さなどの影響も受けている。フランスとは比較できないアメリカの状況をそのままフランスに当てはめて親を不安にさせることは望ましくない。」と述べている。
また、「フランスの小児蘇生・救急グループと状況を確認したところ、直接コロナが原因で集中治療室に入院した子どものケースは、片手の指で数えられるほど。ベルギー、イギリス、イタリアでも同様の見解が示されている。感染した子供たちの大部分は、重症化しない。2021年の新学期を迎えるにあたり、保護者は子どもたちの感染について不安をあおる必要はない。」と説明している。
そして、「昨年のロックダウンでは、落ち込んだり、自殺したりする子どもたちが続出した。昨年の春には、思春期の子ども2人が病院内で自殺したこともあった。現在の感染拡大の子どもにとっての危険は、呼吸困難よりもメンタルヘルスであることを理解すべきだ。その点、新学期は対面式で、みんなが子どもとしての生活を再開できるようにすることが必要だ。」と指摘している。
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報道記者や活動家に対するサイバー監視、世界で拡がる(2021/07/19)
フランスを拠点とする非営利団体「フォービドゥン・ストーリーズ」と17のメディアによる調査の結果、イスラエルのスパイウェア「ペガサス」が、世界の様々な国で携帯電話の盗聴のために使用されている実態が判明した。数十カ国で使用され、5万件以上の電話番号が対象リストに載っていたことが分かった。
仏
『レゼコー』紙によると、非営利団体「フォービドゥン・ストーリーズ」は、17のメディアのコンソーシアムと協力して、イスラエルの「NSOグループ」社のスパイウェアプログラム「ペガサス」が、世界の様々な国家によって政治家、ジャーナリスト、弁護士に対するスパイ活動のために使用されていることを突き止めた。
このソフトウェアは、イスラエル政府の承認を得て、国家または政府機関にのみ販売されている。...
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仏
『レゼコー』紙によると、非営利団体「フォービドゥン・ストーリーズ」は、17のメディアのコンソーシアムと協力して、イスラエルの「NSOグループ」社のスパイウェアプログラム「ペガサス」が、世界の様々な国家によって政治家、ジャーナリスト、弁護士に対するスパイ活動のために使用されていることを突き止めた。
このソフトウェアは、イスラエル政府の承認を得て、国家または政府機関にのみ販売されている。しかしフォービドゥン・ストーリーズは、NSOの数十の顧客がペガサスを使用したスパイ活動の対象としている5万件以上の電話番号のリストを入手することができた。
このリストは、2016年以降からの数年間に及ぶもので、国際メディアコンソーシアムに共有された。約80名のジャーナリストが数ヵ月かけて、これらの電話番号を分析し、約50ヵ国に及ぶ電話番号の持ち主たちを特定することに成功した。
今回の発表は、サイバー監視が世界で広く行われており、あらゆる国が関与していることを示している。
ペガサスは、単なる「電話盗聴」ツールではなく、携帯電話に入っているすべてのデータ(写真、アプリでやり取りしたメッセージ、アドレス帳など)を吸い取ることができ、非常に効果的で強力なツールだと言われている。このソフトウェアは、アップル社やグーグル社のソフトウェアのセキュリティ上の欠陥を利用して、携帯電話のユーザーに気が付かれることなく、遠隔操作でインストールすることができる。
仏『ル・モンド』紙は、今回の調査結果によって、報道機関に対するスパイ活動がアゼルバイジャンのような独裁的な国だけではなく、民主主義国家でもスパイウェアを利用して行われていることが明らかになったと報じている。
メキシコやインド、ヨーロッパでもハンガリーのように調査報道機関を監視している。モロッコのように、外国人ジャーナリストを標的にすることに躊躇しない国もある。モロッコの諜報機関は、フランスの「ル・モンド」、「メディアパート」、「フランス・テレビジョン」、「ラジオ・フランス」などの、合わせて1000人以上のジャーナリストの電話に対しスパイ活動を行っていたことが判明した。
ジャーナリストへのスパイ行為は、目新しいことではない。以前の調査では、すでに何十人ものメキシコのメディア関係者が、このペガサスのソフトウェアによってスパイ活動の対象となっていたことが明らかになっている。2020年には、カナダ・トロント大学の専門家による調査の結果、カタールのテレビ局「アルジャジーラ」の子会社のジャーナリストや幹部36名がペガサスの攻撃を受けていたことが判明した。同年、アムネスティ・インターナショナルは、モロッコ人ジャーナリストのオマール・ラディ氏の携帯電話もスパイウェアに感染していたことを明らかにした。
NSOグループは、ソフトウェアの適切な使用については基本的には各顧客が責任を負うとしながらも、ジャーナリストが不正に標的にされるのを防ぐために、自社のほうでも厳格な確認体制と監査手順を導入して対策を取ってきたと反論している。シャレブ・ヒューリオCEOは、犯罪やテロとの戦い以外の目的でペガサスを使用する顧客は、NSOから「即座に、決定的に、妥協のない処罰」を受けることになるだろう、と述べている。
しかし、フォービドゥン・ストーリーズとアムネスティ・インターナショナルなどが行った調査では、ジャーナリストに対するスパイウェアの悪用は偶然ではないことがわかる。多くの場合、反体制派や人権侵害を訴える記者や活動家が標的とされている。
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