事の発端は、2月末から3月頭にかけて仏で開催された国際農業見本市でのマクロン大統領の発言。大統領は「昼食と夕食にワインを飲む」ことを告白し、自分が大統領である間は、アルコール飲料の広告に規制を課す「エヴァン(Evin)法」を強化するための改正は行わないと宣言。さらには、国際農業見本市に来ているワイン生産者達の人々の手前、「若者達が強いアルコールやビールを一気に飲んで酔うのは健康問題であるが、(彼らは)ワインを飲んでいるのではない」と、記者団達に語った。
つい最近、保険大臣のアニエス・ビュザン(AgnèsBuzyn)氏が次のように発言した。「最近のワイン業界は、ワインは他のアルコールとは違うものであるかのように思わせようとしているが、健康の面から見れば、ワインを飲むことは、ビール、ウォッカ またはウィスキーを飲むことと全く同じである。」この発言に対し、国内のワイン生産者達から怒りの声が上がり、大統領のワイン頌歌は、それを和らげるためのものだった。ワイン生産地の人々をなだめるために、閣僚たちを各地に送り、ワインは特別であることを伝えまわった。しかし、今度は大統領の発言が医療関係者達から攻撃の的となっている。
仏ル・フィガロ紙に、第一線で活躍している9名の医者たちが、大統領に対し、「政府は一般の人々の利益よりもアルコールの利益に敏感であるように感じる」と反論している。
また仏ル・モンド紙でも、3人の科学者たちが、大統領が「毎日お昼と夜にワインを飲むことが社会的通念として通ること」のように発言していることや、「若者たちのアルコール依存症をアルコールの乱用によるものと話しているが、その中にワインを含めていない」ことは、国民の健康を考える時、問題であると書いている。
フランスでは、ワインはアルコール消費の60%を占めている。飲酒による年間死者数は49,000人で、飲酒が原因で様々な悲劇が引き起こされることが分かっている。家庭崩壊、暴力、病気、胎児性アルコール症候群は年間約8,000人。
またワインに含まれる体に良いとされている成分、ポリフェノールやレスベラトロールは、ブドウジュースにも含まれている。フランス人の成人10人に1人はお酒に弱い体質だとされているが、そういう人はブドウジュースを飲んで摂取することが出来る。そのため、健康上の問題を避けたいのであればワインを飲むことに特に利点があるわけではない、と科学者たちは述べている。
医療関係者や科学者達の結論は、「肝臓から見れば、ワインはアルコールである」ということだ。
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