仏メディア:ローマ法王中絶に赦免を認める(2016/11/25)
中絶はその是非をめぐり度々政治論争を引き起こした。保守的なカトリック国や南米では、多くが中絶は殺人と見なす。一方レイプによる望まぬ妊娠のケースもある。しかし11月21日にローマ法王は書簡の中で中絶の罪を赦免する見解を示した。カトリックの価値観に根底から影響を与える「カトリックの文化的革命」として仏メディアは報じる。
『ルモンド紙』は、カトリック教義では中絶は許されるまで破門を招くほどの重大な罪である事に触れ、カトリックおよびキリスト教社会全体にとっていかに大きな価値観の転換であるかを示唆する。「ルモンド紙」によると、もともと聖年期間(*1)中のみ、中絶の罪に特赦を与える権限を全カトリック司祭に法王は付与していたが、この権限付与を無期限に延長する事を、聖年が終了した21日に決定した。書簡の中で「無垢な命を終わらせるため、中絶は重大な罪である」が、「神の慈悲が届いて消す事が出来ない罪は存在しない」と、赦免を認める理由を法王は示した。...
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『ルモンド紙』は、カトリック教義では中絶は許されるまで破門を招くほどの重大な罪である事に触れ、カトリックおよびキリスト教社会全体にとっていかに大きな価値観の転換であるかを示唆する。「ルモンド紙」によると、もともと聖年期間(*1)中のみ、中絶の罪に特赦を与える権限を全カトリック司祭に法王は付与していたが、この権限付与を無期限に延長する事を、聖年が終了した21日に決定した。書簡の中で「無垢な命を終わらせるため、中絶は重大な罪である」が、「神の慈悲が届いて消す事が出来ない罪は存在しない」と、赦免を認める理由を法王は示した。また法王は、この書簡の中で「最も貧しき者達へ関心をよせるべく想像力をもつ事」を求めた。
『フィガロ紙』は、今回の法王の書簡を「カトリック教会の精神が困難な状況に対する思いやりとなって示されるように、革命を求める」と総括する。これまでは中絶に対する赦免は、経験豊富な司祭にのみ委託された権限で、司祭より高位の司教の責任において各教区で実施されていた。法王は書簡の中で「和解と悔恨の心を持つものに対して、導き支えて励ます」事を全司祭に求めており、聖職者への指針を示すものとなっている。この指針によって「懺悔の重要性」と「和解」を法王は重視し、キリスト教徒の生活の中心的価値観となる事を望み、その中心に中絶問題を置いたと「フィガロ紙」は評する。
仏カトリック系
『ラクロワ紙』はさらに、法王の今回の決定の背後を説明する。信者の懺悔では司祭を通して罪を神に言い表すため、告解と赦しの過程に介在する司祭や司教にかかる圧力は相当なものだったようだ。「このため司祭と司教は扱いきれない状況に身を置かねばならず、緊張状態の中で圧力を避けるために、告白された罪を保留にするしかなかった」ようだ。そのため赦しの秘跡までいかず保留になったままの罪が増えた。多数を占めた内容の一つが中絶だった可能性が高かったと考えられる。高位の司教と経験豊富な司祭に限られた「赦免の権限」を全司祭に無期限に拡大する事で、「懺悔、慈悲、赦し」という「カトリック精神の本質」を保とうとしたようだ。「意思決定に統一感が減るリスクがある」が、「カスタムメイドで個別化する傾向と必要性」を法王は認めたと「ラクロワ紙」はみる。
法王とバチカンの決定は現実に則した極めて現実的なものと言える。中絶のみならず離婚と再婚に制約があるカトリック社会の家族の在り方にも、大きな影響を及ぼすだろう。
(*1)1300年以降25毎に、カトリック教会で特赦を与える年と定められた年。直近の聖年はミレニアムの2000年。で今回の聖年は2015年12月8日から始まった。
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仏大統領選:本命サルコジ消える右派指名候補予備選(2016/11/22)
2017年に行われる仏大統領選へ向けて右派と中道派の統一候補指名の予備選(第一回戦)が実施された。サルコジ前大統領、ジュペ元首相、フィヨン元首相の3候補のみつどもえで、サルコジ氏とジュペ氏が本命視されてきたが、ふたを開けてみればフィヨン氏圧勝で予備選を通過し、サルコジ氏は姿を消した。予備選敗北を受けサルコジ氏はブレグジット、米大統領選に続くまさかの結果に最も衝撃を受けたのはメディアかもしれない。仏メディアは衝撃をもって報じる。
『ルモンド紙』は今回の結果は、サルコジの政権復帰を阻止する力が身内の中で大きく働いた結果との見方を示した。党員以外の一般人に投票を認めたのは右派だったが、アンチサルコジを加速させたと見る。トランプ大統領しかり、マクロン仏経済相しかり、日本しかり、離反や身内おろしなど政界再編は世界的な流れのようだ。
右派
『フィガロ紙』は社説で、予備選で最有力視してきたサルコジ氏が消え、本線に最も遠いと思われたフィヨン氏圧勝に「津波!」と見出しを付けた。...
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『ルモンド紙』は今回の結果は、サルコジの政権復帰を阻止する力が身内の中で大きく働いた結果との見方を示した。党員以外の一般人に投票を認めたのは右派だったが、アンチサルコジを加速させたと見る。トランプ大統領しかり、マクロン仏経済相しかり、日本しかり、離反や身内おろしなど政界再編は世界的な流れのようだ。
右派
『フィガロ紙』は社説で、予備選で最有力視してきたサルコジ氏が消え、本線に最も遠いと思われたフィヨン氏圧勝に「津波!」と見出しを付けた。移民政策やテロに厳しい姿勢をみせたサルコジ氏の敗因は「ジュペ氏に対する口激と毒舌が裏目に出て、アンチサルコジ主義を助長した」、「穏健派で右派団結を呼びかけたジュペ氏は反サルコジの受け皿となったがフィヨン氏の政治的手法は影が薄い」と分析する。一方、予備選3週間前に方向転換したフィヨン氏の圧勝については「怒れる有権者が再度テーブルをひっくり返した」「民主主義の危機」と嘆きトランプ氏勝利に重ね合わせる。「フィガロ紙」によると、フィヨン氏は本来の自由主義経済を捨てて「イスラム全体主義に反対する著書、アンチ現ジャーナリズム、アンチ政治ゲーム」など右派の大衆のあらゆる「アンチ」に訴えた。一方トランプ氏と違い、「穏やかな右派像」を確立した事が勝因となった。「討論会でジュペ氏より毅然としてサルコジ氏より穏やか」に有権者にはみえた。
最大経済紙
『レゼコー紙』は「全選挙区、全世代、あらゆる職業で票を根こそぎさらった」事を、「フィヨンという名の見知らぬ人」と評し、全方位的で「アンチ」を軸に勝利したフィヨン氏に批判的である。相手によって戦略を変え、本来のリベラル経済主義を破棄したフィヨン氏をカメレオン的な評価を下す。101県のうち87県でトップに出たが、年齢層、職業が多岐にわたるフィヨン氏の支持者をひとくくりにする事ができず、左派の4分の1までもが支持する。「フィヨンがだんとつトップでサルコジが消えた」この現状を「二重の稲妻」と形容する事からもその衝撃がうかがえる。今回の投票は党員以外の一般市民も参加可能で、400万という前回の大統領指名予備選を大きく上回る人数が投票に参加し、国民の関心の高さがうかがえる。
「レゼコー紙」によると、フィヨン圧勝は社会党には不利に働く。社会党を始めとする左派は、反サルコジ色を強く出していたため、方針転換に迫られているだけでなく、オランド大統領に反旗を翻した経済相のマクロン候補に有利に働く。オランド大統領が左派指名予備選で敗退する可能性を指摘する。
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