仏メディアがみるG7とオバマ大統領の広島訪問
米国のケリー国務長官が広島の原爆慰霊碑と原爆資料館に「歴史的訪問」を実施した。米国に加え、核保有国の英国とフランスを含む先進7か国(G7)の外相らも初訪問だった。それ以上に関心を集めるのが、米国のオバマ大統領の広島訪問の可能性である。フランスメディアの関心も米国大統領の訪問に集中する。
ケリー長官が示唆するオバマ大統領の広島訪問
『レゼコー紙』、
『ルモンド紙』、
『リベラシオン紙』等フランス各メディアは「ケリー長官の象徴的な広島訪問」と見出しをつける。G7外相初の訪問と、G7初の軍縮と核不拡散に特化した宣言に注目する。しかし広島宣言と同様に、もしくはそれ以上に世界の関心を集めるのは米国大統領初の広島訪問実現だ。ケリー長官が
『フェイスブック』に投稿した原爆資料館での記帳内容の写真が憶測を呼んだ。...
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ケリー長官が示唆するオバマ大統領の広島訪問
『レゼコー紙』、
『ルモンド紙』、
『リベラシオン紙』等フランス各メディアは「ケリー長官の象徴的な広島訪問」と見出しをつける。G7外相初の訪問と、G7初の軍縮と核不拡散に特化した宣言に注目する。しかし広島宣言と同様に、もしくはそれ以上に世界の関心を集めるのは米国大統領初の広島訪問実現だ。ケリー長官が
『フェイスブック』に投稿した原爆資料館での記帳内容の写真が憶測を呼んだ。「深く心を動かされた」「各核兵器の脅威の終結と戦争回避への行動の義務を負う」「全ての人が来るべき」に加え、「オバマ大統領がこの“全ての人”の一人になる事を望む」の文で締めくくられた。
広島訪問を肯定する状況
前述のフランスメディアは、オバマ大統領の訪問実現を肯定する幾つかの状況を挙げる。
●オバマ大統領は核廃絶への意向を就任時から示した。5月の首脳会談は任期中最後の訪日となるので、象徴的な広島から再び核兵器廃絶を訴えて意向を示したい。
●G7の主な議題となった世界的なテロの脅威や北朝鮮の核実験やミサイル発射実験、ウクライナ危機などの深刻な世界情勢がある
●ケリー長官はベトナム戦争に従軍し、米国の軍事介入主義に懐疑的で常にあらゆる軍縮推進政策を支持してきた。
●日本側は既にシークレットサービスの責任者を決め、4月末に現地の治安評価を行うよう手配済みという情報筋の話。
見送られたオバマ大統領の広島訪問
一方
『ルモンド紙』によると、広島訪問実現に際してケリー長官は細心の注意を払っている。「原爆投下が第二次世界大戦の終結を早めた」、「兵士の犠牲を減らした」として、今でも米国世論の6割以上が原爆投下に肯定的である。退役軍人と共和党の保守派がその急先鋒に立つ。しかし国内要因だけではないようだ。「ルモンド紙」は
『ウィキリークス』が公開した外交公文書を参照する。「オバマ大統領は2009年の就任以来広島訪問に言及したが、「この時期のオバマ大統領の広島訪問を時期尚早と判断したのは日本政府」だった。
ケリー長官の訪問で反応を確かめる。
『ルモンド紙』は「ケリー長官の訪問は米国内の反応を見るため」と見る。「大統領の広島訪問の決定は、国内情勢を見極めるまで保留される」。「11月の大統領選キャンペーンたけなわの今、共和党と退役軍人がどう出てくるか様子を見ている。広島訪問によって懺悔の外交へと傾く事が、大統領選の弱点と見なされる可能性がある」
だが
『レゼコー紙』は「謝罪表明はない」と断じる。
『ルモンド紙』は広島訪問時の大統領のスピーチは2009年のプラハ演説の核兵器廃絶を呼びかけた時の談話を踏襲する」と見る。
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アップル vs FBI (1) FBIの論拠
米国の銃乱射事件で押収された殺人犯のiPhoneのロック解除要請をめぐり、アップル社と米連邦捜査局(以下FBI)が対立する。国の安全保障かプライバシー保護か。仏メディアでは次の通り22日の司法闘争を前に詳細な検証が続く。
『レゼコー紙』は公聴会の答弁からFBI長官に否定的である。
1) FBI長官の回答は不明瞭。3月下旬の裁判所での決着を見込んで、プライバシーと安全保障に関しては一般的な質問にとどめるよう議会に求めた。
2) 端末ロック解除ソフト作成を義務付けても、議会の権限が及ばない海外ソフトをテロリストが使用すれば、テロの暗号通信は阻止出来ないとFBI長官が認めた。
3) 押収した携帯のデータを犯人がiCloud経由で復旧出来ないよう、FBIがパスワードをリセットを試みた結果データを消去したが、犯人は全データを回復。...
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『レゼコー紙』は公聴会の答弁からFBI長官に否定的である。
1) FBI長官の回答は不明瞭。3月下旬の裁判所での決着を見込んで、プライバシーと安全保障に関しては一般的な質問にとどめるよう議会に求めた。
2) 端末ロック解除ソフト作成を義務付けても、議会の権限が及ばない海外ソフトをテロリストが使用すれば、テロの暗号通信は阻止出来ないとFBI長官が認めた。
3) 押収した携帯のデータを犯人がiCloud経由で復旧出来ないよう、FBIがパスワードをリセットを試みた結果データを消去したが、犯人は全データを回復。
「レゼコー紙」は「FBIの要求はセキュリティーを弱めるだけで、テロリストには何の影響もない」という法務責任者に同意する。議会も大半が長官の回答に懐疑的だったようだ。
『リベラシオン紙』もFBIの法的根拠が弱いと見る。
FBIの過失穴埋めのためのソフト開発要求への疑問:犯人のiCloudへのパスワード再設定によってデータを失った。安全保障との天秤以前の話という事だろう。
1) 判例の問題:セキュリティ迂回ソフト開発の要求が認められれば、今後の判例となり得る。一方麻薬密売人のスマホ内のデータアクセスの裁判では、ニューヨーク裁判所はアップル側の主張を認める判決を下したという先例がある。
2) 全令状法(All Writs Acts)の議論:全令状法は「裁判所が必要とされる全ての令状を発行する権限」を認める法律。今回のカリフォルニア州地裁の決定もこの法律を根拠としたが、ニューヨーク地裁は「ロック解除に1789年制定の法律を現代に適用するのは拡大解釈」と判断した。また「FBIの要求は議会の特権を逸脱する」と「リベラシオン紙」は判断する。
『ルモンド紙』は「今回のサンバーナディーノのケースが判例を生み出すケースだと認める一方、たった一つのiPhoneのロックを解除するに過ぎないと繰り返す」と報じ、判例確立の狙いがあるのは明らかと「ルモンド紙」は見る。
また「ルモンド紙」と
『フィガロ紙』は国連人権高等弁務官のフセイン氏が市民のデータの暗号化と匿名性に賛成した」事を重く受け止める。
テロの衝撃後、国家の安全保障の方へ振り子が振れる事が多いフランスだが、FBIの要求の法的根拠は弱いという見方が目立つ。
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