ロシアでは、新型コロナウィルス(COVID-19)感染者が40万5,843人と世界3位となっているが、ピーク時より新たな感染者が漸減傾向にあるとして、モスクワ初め多くの都市で6月1日以降都市封鎖解除が段階的に進められようとしている。しかし、そうした中にあって、都市封鎖で最も打撃を受けた弱者、特に1,100万人に上る出稼ぎ労働者の多くが、仕事もなければ食糧も底をつく飢餓一歩手前の状態になっていると、国際機関が窮状を訴えている。
5月31日付米
『ABCニュース』:「COVID-19に伴う都市封鎖措置で数十万人のロシア出稼ぎ労働者が食糧危機」
ロシア当局は、COVID-19の新たな感染者が漸減傾向にあるとして、6月1日以降、モスクワ初め主要都市での都市封鎖措置を段階的に緩和すると決定している。
3月中旬以来、2ヵ月半余りの不自由な生活を強いられたロシア市民は、経済活動再開を心待ちにしている。
しかし、そうした中にあって、ロシア市民ではないロシア在住者、特に1,100万人と推定される出稼ぎ労働者の多くは苦難のどん底で喘いでいる。...
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5月31日付米
『ABCニュース』:「COVID-19に伴う都市封鎖措置で数十万人のロシア出稼ぎ労働者が食糧危機」
ロシア当局は、COVID-19の新たな感染者が漸減傾向にあるとして、6月1日以降、モスクワ初め主要都市での都市封鎖措置を段階的に緩和すると決定している。
3月中旬以来、2ヵ月半余りの不自由な生活を強いられたロシア市民は、経済活動再開を心待ちにしている。
しかし、そうした中にあって、ロシア市民ではないロシア在住者、特に1,100万人と推定される出稼ぎ労働者の多くは苦難のどん底で喘いでいる。
国際移民機関(IOM、注後記)によると、2019年現在、旧ソ連(キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン)の中央アジア諸国から出稼ぎに来ている人が500万人に上るが、3月中旬にロシア及びこれら中央アジア諸国で国境封鎖措置が取られたことから、特に困窮しているという。
すなわち、彼らの仕事は低収入の肉体労働(建設現場、倉庫、スーパーマーケット、レストラン、清掃等)に限られ、3月中旬にロシア全体で都市封鎖措置が取られた途端、失職することになった上、雇い主からは何の補償もなく、貯金もないために、居住するアパート家賃支払いはおろか、その日の食事にも事欠く状況になっている。
ロシアの出稼ぎ労働者支援に当たるNPOトン・ジャホニのバレンティナ・チャピック代表は、“これは悲劇以外の何物でもない”として、ロシア当局から何ら救いの手が差し伸べられない窮状を訴えている。
IOMロシア事務所のアブダサッター・エソーエフ所長によれば、出稼ぎ労働者の約60%が家賃支払いに困窮し、約40%が食糧を買うお金もないという。
そこでIOMは5月、ロシアの出稼ぎ労働者救済のため700万ドル(約7億5千万円)の緊急支援を行うと発表している。
一方、ウラジーミル・プーチン大統領は4月半ば、出稼ぎ労働者が支払わねばならない労働許可料を6月中旬まで適用除外とし、滞在ビザの期限延長も認めるとの大統領令を出した。
しかし、事実上は、多くの雇用主が出稼ぎ労働者から当該許可料を徴収しているという。
また、5月末に発表されたロシア当局データによると、4月の失業率が21%まで急上昇している。
これに伴い、出稼ぎ労働者の拠り所としたほとんどの職種は、都市封鎖解除となっても復活(再雇用)しない可能性が高い。
なお、世界銀行によれば、ロシア含め、世界の主要国に出稼ぎに来ている労働者は、自国に残した家族宛に生活資金を送金しているが、今回のCOVID-19禍によって、今年の送金総額は約20%減少して、1,100億ドル(約11兆7,700億円)になると試算している。
6月1日付チェコ『ラジオ・フリー・ヨーロッパ(米議会出資の短波放送局)』:「ロシアの都市封鎖解除加速」
ロシアでは、5月31日一日の新たな感染者が9,035人、死者は162人と公式発表されていて、依然収束には程遠い内容だが、モスクワ等大都市の一部都市封鎖解除が6月1日より実施されている。
主な内容は以下である。
・航空会社が全席満席での就航許可。5月18日より導入されていた規制では、毎便半分以下での就航義務。これにより、経営危機直前の航空会社にとって救い。
・ショッピングモール、公園、洗濯屋等小規模店の営業再開許可。但し、レストラン、カフェ、映画館等はまだ暫く再開不可で、大人数の集会も6月14日まで禁止。
・市民の買い物、散歩(事前登録制)、許可を受けた不可欠な職種の就業、また、午前5時から9時の間でのジョギングや運動を許可。但し、マスク着用義務。
なお、モスクワ市民は、封鎖一部解除は歓迎しているものの、ソーシャルメディア上で、外出する際の滑稽な規制について嘲笑している。
(注)IOM:世界的な人の移動(移住)の問題を専門に扱う国際機関。本部はスイスのジュネーヴ。100ヵ国以上に活動事務所があり、加盟国は162ヵ国で、国連総会オブザーバー資格を持つ。1951年に主として欧州からラテンアメリカ諸国への移住を支援するため設立された欧州移住政府間委員会が前身。日本は1993年に加盟。
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安倍晋三首相は今週、北方領土問題及び日ロ平和条約締結交渉のため訪ロしている。しかし、前以て持たれた日ロ外相会議において、ロシア側は、北方領土を合法的に所有しているとして、返還交渉に前向きな姿勢は一切みせていない。そうした中、一陣の追い風か、両首脳会談を前にして、在モスクワ日本大使館周辺で北方領土返還反対を叫んでデモ行進をしていた11人がロシア当局によって拘束された。なお、昨年11月のロシア世論調査の結果では、74%が平和条約締結条件として一部でも北方領土を返還することに反対し、賛成と答えたのは僅か17%であった。
1月22日付米
『ロイター通信』:「ロシア当局、日ロ首脳会談前に反対デモ参加の11人を拘束」
ロシア国内での政治デモ参加者の拘束状況を監視する非政府組織(NGO)OVD-Infoによると、ロシア警察が1月22日、在モスクワ日本大使館周辺で、北方領土返還交渉で如何なる譲歩も受け入れられないと叫んでデモをした11人が拘束されたという。
この当日、安倍晋三首相とウラジーミル・プーチン大統領が、70年余りも未解決のまま推移した北方領土問題及び両国平和条約締結について協議することになっている。
ただ、先週両国外相間で行われた事前折衝において、ロシア側は、今回の首脳会談で領土問題は正式議題となっていないと表明している。
同日付チェコ『ラジオ・フリー・ヨーロッパ(米議会出資のラジオ放送・報道機関)』:「ロシア政府、北方領土問題早期解決との日本の希望を打ち砕く」
ロシア政府のドミートリィ・ペスコフ報道官は1月21日、翌日に予定されている日ロ首脳会談に先駆けて、領土問題について協議する上で、忘れてはならない重要なことは国益に適うかという点であるとして、事前に日本側から示された、首脳会談での事態進展の期待について否定的なコメントをした。
1月21日からの訪ロ前、安倍首相はもとより、菅義偉官房長官は、今回の日ロ首脳会談を通じて、北方領土問題及び両国平和条約締結について交渉が進展しようとの期待感を表明していた。
なお、ロシア世論調査を行うNGOレバダ・センターの昨年11月の調査結果によると、両国平和条約締結のために北方領土の一部を返還するとの案に反対する人は74%いて、一方、賛成と答えた人は僅か17%であった。
また、安倍首相がモスクワ入りする前から、モスクワを含めたロシア国内の都市で、北方領土返還に反対するデモ行進が繰り広げられている。
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