ロシア;野党勢力代表ナワルニー氏帰国を警戒して、まず同氏右腕を投獄【欧米メディア】(2021/01/17)
ロシア野党勢力代表のアレクセイ・ナワルニー氏(44歳)は、昨年8月に選挙活動で訪れた西シベリアで毒殺されかけたが、緊急避難したドイツで療養していた。ロシア当局は、同氏が帰国次第、横領容疑等で逮捕すると脅しているが、同氏としては、今年9月に予定される総選挙で少しでも野党票を伸ばすべく、帰国しての選挙活動を再開したいとしている。そして、同氏がいよいよ1月17日に帰国することが明らかになった途端、ロシア当局は前日に同氏右腕の活動家を投獄して、早速同氏の政治活動を妨害する行為に出ている。
1月17日付
『ロイター通信』:「野党勢力代表のナワルニー氏の同胞がモスクワで投獄」
野党勢力代表のアレクセイ・ナワルニー氏は、反汚職財団(FBK、2011年設立)を立ち上げてロシア政治家らの汚職解明に注力する一方、ウラジーミル・プーチン大統領(68歳)による独裁政治に最も強く対抗してきた。
その間、何度もロシア当局から拘束されたり投獄されたりしたがめげず、野党勢力を伸ばすべく政治活動を展開してきた。...
全部読む
1月17日付
『ロイター通信』:「野党勢力代表のナワルニー氏の同胞がモスクワで投獄」
野党勢力代表のアレクセイ・ナワルニー氏は、反汚職財団(FBK、2011年設立)を立ち上げてロシア政治家らの汚職解明に注力する一方、ウラジーミル・プーチン大統領(68歳)による独裁政治に最も強く対抗してきた。
その間、何度もロシア当局から拘束されたり投獄されたりしたがめげず、野党勢力を伸ばすべく政治活動を展開してきた。
プーチン政権は、勢いを増す野党勢力に恐れを抱いたのか、昨年8月に同氏が選挙活動のために訪問していた西シベリアで、同氏を毒殺しようとした疑いが持たれている。
ロシア国内の病院での治療に危険を感じて、同氏は支援者の助けでドイツに緊急避難して快復を待った。
そしてこの程、当局による帰国次第逮捕との脅しに屈することなく、同氏は、今年9月に予定されている総選挙に備えての選挙活動継続のため、1月17日にロシアに戻ることを決断した。
しかし、その前日に当局は、同氏の右腕として活動してきたFBKのメンバーであるパベル・ゼレンスキー氏を逮捕し、投獄した。
容疑は、同氏が昨年過激思想をツイートしたとの罪で、2月28日までの1ヵ月半拘留されることになるとする。
モスクワ本拠の人権擁護団体アゴラ(2005年設立)代表によると、ゼレンスキー氏は1月15日に突然当局によって逮捕された際、容疑は昨年10月のツイート内容が問題とされたという。
同氏は昨年10月2日、同日にイリーナ・スラビナ記者(1973~2020年)が抗議の焼身自殺をしたのは、当局の不当捜査が原因だと非難するツイートをしていた。
故スラビナ記者は、10月1日に当局が突然アパートに押し掛けて室内捜索したことに抗議して、翌日に内務省が入るビルの前で焼身自殺している。
ゼレンスキー氏の逮捕・投獄を受けて、FBKのイワン・ズダノフ代表(32歳)は、“我々は決して諦めない”とした上で、“ゼレンスキー氏の家族のことはしっかりケアする”とコメントした。
一方、ナワルニー氏の帰国に当たって、プーチン政権がどう出るか注目されている。
すなわち、当初表明しているとおり、同氏を逮捕・投獄すれば、野党勢力の抗議活動が更に活発化し、また、西側諸国から懲罰的な制裁が科せられる恐れがある。
しかし、野放しにすれば、国内タカ派から突き上げられるばかりか、弱腰とみられてしまう。
なお、プーチン大統領は、昨夏のナワルニー氏毒殺未遂事件に当局が関わったとの指摘を全面的に否定している。
同大統領によれば、もし当局が関わっていたとしたら、同氏は既にこの世にはいないはず(失敗するはずがない)と嘯いている。
1月16日付『ラジオ・フリー・ヨーロッパ(米議会出資のラジオ放送局)』:「モスクワ裁判所、ナワルニー氏創設のFBKメンバーを過激思想流布容疑で有罪判決」
人権擁護団体アゴラ創設者のパベル・チーコフ代表はSNSの『テレグラム(2013年ロシア人技術者が開発したインスタントメッセージシステム)』上で、モスクワのプレズネンスキー地区裁判所が1月16日、ゼレンスキー氏に過激思想流布容疑で有罪判決を下したと訴えた。
この所業は、昨夏の毒殺未遂に遭ってドイツに逃れていた野党勢力代表のナワルニー氏が、5ヵ月振りにロシアに戻るとされた前日になされたものである。
なお、ゼレンスキー氏が罪に問われたツイートは、昨年10月2日に行われたもので、同日に焼身自殺を遂げたスラビナ記者を追悼するとともに、この責任はロシア当局にあると糾弾していた。
この根拠として、スラビナ記者が直前、フェイスブック上で“私の死はロシア連邦政府への抗議のためのもの”だと訴えていたことがある。
閉じる
ベラルーシの独裁大統領;8月の大統領選を控えてプーチン政権の陰謀を阻止したと宣言【欧米メディア】(2020/06/20)
ベラルーシは1990年に旧ソ連から独立以来、ロシアとの国家統合を模索していて、1999年末にはボリス・エリツィン大統領(当時、1931~2007年)との間でベラルーシ・ロシア国家連合創設条約の締結に漕ぎ着け、同条約は2000年初めに発効した。しかし、四半世紀余り同国初代首脳として君臨しているアレクサンドル・ルカシェンコ大統領(65歳、1994年就任)は、後任のウラジーミル・プーチン大統領(67歳)によるベラルーシを吸収統合しようとする対応に我慢ができずに対立してきたことから、同国家連合は機能せず棚ざらしとなっている。そしてこの程、同大統領は、自身の6選(2020~2025年)を阻止しようと、ロシア側が対立候補を送り込むという陰謀を画策したとして、当該候補を逮捕することでこれを防いだと発表した。
6月19日付
『ロイター通信』:「ベラルーシ大統領、大統領選対立候補を逮捕したのは他国の策謀を防ぐためだったと発表」
アレクサンドル・ルカシェンコ大統領は6月19日、大統領選を8月に控える同国を政情不安に陥れようとした他国の陰謀を阻止したと発表した。
同大統領は前日、同大統領選の有力候補とされる、ガスプロムバンク(注1後記)ベラルーシ支店長だったビクトール・ババリコ氏(56歳)を不正資金流用容疑で逮捕している。...
全部読む
6月19日付
『ロイター通信』:「ベラルーシ大統領、大統領選対立候補を逮捕したのは他国の策謀を防ぐためだったと発表」
アレクサンドル・ルカシェンコ大統領は6月19日、大統領選を8月に控える同国を政情不安に陥れようとした他国の陰謀を阻止したと発表した。
同大統領は前日、同大統領選の有力候補とされる、ガスプロムバンク(注1後記)ベラルーシ支店長だったビクトール・ババリコ氏(56歳)を不正資金流用容疑で逮捕している。
ベラルーシの安全保障担当高官によれば、同氏はロシアの“人形使い”に操られているとし、同大統領は、同氏が同銀行資金を選挙キャンペーンに不正使用していると糾弾している。
同大統領は、目下ベラルーシは“西側からも東側からも狙われて”いて、そのうちの“一部の国”が具体的陰謀を企てていたと言及した。
同大統領は具体的に当該国の国名は明かさなかったが、2014年のクリミア半島併合時と似通った革命を煽る大掛かりな陰謀が計画されていたとし、それを見事に防いだと強調した。
同大統領は、ベラルーシ初代大統領として26年間も同国を統治してきているが、景気低迷と人権問題に加えて、直近の新型コロナウィルス感染問題に対する不十分な対応によって国民の不平・不満が高まっており、(大統領選を控えて)同大統領は初めて苦境に立たされている。
また、長い間同盟関係にあったロシアとの緊張が高まっており、特に同大統領は、ロシア側が最近、同国内を通る天然ガスパイプラインの通行使用料を一方的に値下げしてきたことに大変立腹している。
かかる背景から、同大統領がロシア側手先と目されるババリコ氏を逮捕したものとみられるが、一方で、この措置によって西側諸国との関係改善の道をより険しくしてしまう恐れがある。
何故なら欧州連合は、同氏を至急解放するよう公式に要求してきているからである。
一方、ロシア政府は同氏に関しては無関係だと装っていて、大統領府のドミートリィ・ペスコフ報道官は、“ベラルーシ大統領選に誰も候補は送り込んでいない”とし、“候補者は皆ベラルーシ市民ではないか”と強調している。
6月20日付『BBCニュース』:「ベラルーシの反政府活動家らが逮捕」
ベラルーシ当局は6月19日晩、ルカシェンコ大統領の6選反対を訴えて、首都ミンスクの目抜き通りに集結した数百人に及ぶ活動家やジャーナリストらの一部を拘束した。
活動家らは、同大統領の対立候補を応援するために集まっていたが、警察隊の乱入によって強制的に解散させられた。
現地でライブ報道していた『ラジオ・フリー・ヨーロッパ(米議会出資の短波放送局)』の特派員も逮捕された。
この直前、同大統領が演説で、ベラルーシを政情不安に陥れようとした外国勢力の陰謀を防いだ、と発表していた。
前日の6月18日には、最有力対抗馬と目されるババリコ氏が逮捕されていて、それ以前からも、反政府活動家、ジャーナリストやブロガー(ネット評論家)ら多数が拘束されている。
なお、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長(61歳、ドイツ人政治家)は、“政治的陰謀”の疑いがあるとして、ババリコ氏を即刻解放するよう訴えている。
一方、欧州安全保障協力機構(OSCE、注2後記)の国際選挙監視委員会によれば、ベラルーシにおいては1995年以降一切自由で公平な選挙は実施されていないという。
(注1)ガスプロムバンク:ロシア天然ガス独占企業ガスプロムの子会社として1990年設立。ロシア三大銀行のひとつ。
(注2)OSCE:欧州の国境不可侵と安全保障・経済協力などを約束したヘルシンキ宣言を採択して全欧安全保障協力会議として1972年に発足。冷戦終結後、紛争防止とその解決へ向けた新機構として、1995年に現在の名称に変更。欧州の他、北米、アジアを含め57ヵ国が加盟する、地域的安全保障組織としては世界最大の国際機関。
閉じる
その他の最新記事