イラン:夫が10代の妻を斬首。女性への暴力に対して議論再燃(2022/02/10)
12歳のときに、いとこと強制的に結婚させられたイラン人の少女が、夫からのDVを逃れてトルコに非難した。しかしその後イランに連れ戻され、数日後に夫に斬首された。イランで古くからの風習である「名誉殺人」事件である。イラン国内では女性への暴力の問題が改善しないことに対する議論が再び沸き起こっている。
仏紙
『ル・パリジャン』は、モナ・ヘイダリさんはイランにおける「名誉の殺人」の犠牲者の長いリストに加えられた、と報じている。イランの通信社ロクナによると、17歳の女性が5日にイラン南西部の州の州都であるアフバズで夫によって斬首されたという。ユーチューブには、モナさんの頭を片手に、もう一方の手に大きなナイフを持って、笑顔でアフバズの通りを練り歩く姿が映っている動画が投稿された。
イランの女性擁護団体「女性委員会NCRI」によると、モナさんは15歳でいとこのサジャド・ヘイダリと結婚させられ、家庭内暴力の被害者となった。...
全部読む
仏紙
『ル・パリジャン』は、モナ・ヘイダリさんはイランにおける「名誉の殺人」の犠牲者の長いリストに加えられた、と報じている。イランの通信社ロクナによると、17歳の女性が5日にイラン南西部の州の州都であるアフバズで夫によって斬首されたという。ユーチューブには、モナさんの頭を片手に、もう一方の手に大きなナイフを持って、笑顔でアフバズの通りを練り歩く姿が映っている動画が投稿された。
イランの女性擁護団体「女性委員会NCRI」によると、モナさんは15歳でいとこのサジャド・ヘイダリと結婚させられ、家庭内暴力の被害者となった。同団体は、「離婚を求めるたびに、家族は子供のために家に帰り、夫と生活を続けるように説得していた」と報告している。
17歳になっていたモナさんは、半年間トルコに逃げていたものの、その後父と叔父に見つかり、安全な生活を約束されたことで戻ることに合意したという。しかし帰国直後、夫と義弟に殺害された。
医学誌「ランセット」は2020年10月に発表した論文で、2010年から2014年にかけてイランで行われたいわゆる「名誉殺人」の犠牲者は少なくとも8000人いることを明らかにした。15歳以下の子もいれば、10歳になったばかりの子もいるという。イラン刑法301条では、殺された女性や子供の父および祖父は、これに対して報復してはならないと定めている。
英『デイリーメイル』は、モナさんがトルコに逃亡後、父親はインターポールの協力で行方を突き止めたと伝えている。父親がイランの警察に苦情を申し立てたところ、警察はインターポールを通じて入手したモナさんの住所を教えたという。 父親はその後、娘を帰国させるために必要なすべての書類を準備し、通訳も用意してトルコに行き、娘を連れ戻したという。
娘の死後、父親のジャバド氏は、「娘は結婚を強制されたわけではなく、実際、夫は彼女に最高の生活を提供してくれた。確かに2人の間には争いがあり、時には暴力もあり、娘は家に戻ることがあったが、2、3日いるだけで、その後夫が迎えに来て、普通の生活に戻っていた。こういう夫婦喧嘩は全く普通のことで、娘が離婚を求めたわけではないので問題はなかったと思う」と話している。また、娘が結婚するには若すぎたことを認めながらも、「肉体的に結婚できる年齢であることを確認する証明書をもらったし、関係には何の肉体的な問題もなかった」と付け加えている。また夫側の家族は、妻が他の男性とトルコに逃げたことで、息子があざ笑われ、侮辱されたと主張している。
NCRI女性委員会は、「何らかの名誉殺人が見出しを飾らない週はない。これらの殺人を犯罪化しないイスラーム法学者による政権であるために、名誉殺人が破滅的に増加している」と述べている。また、イランにおける名誉殺人の増加は、「中世的な考え方に根ざしている支配体制」と「イスラーム法学者による政権の法律は、女性は男性に所有されている二級市民であることを公式に記している」ことが原因だと指摘している。
米国在住の社会学者ホセイン・ガジアン氏は、米『ラジオ・フリー・ヨーロッパ』の取材に対し、イランの多くの男性は家族の女性は自分の所有物だと考えていると語った。「男性は女性の心と体を所有しているのです。彼らは境界を定め、自分の名誉を守ることが社会的な義務だと考えています。もし失敗したら、彼らは自分の名誉を回復しなければならないと考え、体を犯された女性を殺すことでそれを行おうとするのです。」と説明している。
エブラヒム・ニクデル・ガダム弁護士はイランの法律ではこうした殺害に対する抑止力がなく、親族の女性を殺害した者の刑が軽いために、同じような殺害を招いてしまっていると指摘している。
閉じる
ロシアの野党系候補者が政府の独立系メディア取り締まりを非難して抗議集会【米・チェコメディア】(2021/09/05)
プーチン政権は、9月下旬の総選挙で反政府勢力の台頭を阻止するべく、野党勢力代表のアレクセイ・ナワルニー氏(45歳)を投獄したり、その他野党系候補者の立候補を制限したりと、形振り構わぬ対応に出ている。そうした中、政権が独立系メディアの取り締まりも始めたことから、透明性を持った報道が阻害されかねないとして、野党系候補が抗議集会を開催した。
9月5日付米
『AP通信』:「独立系メディアに圧力をかける政権に対する抗議集会」
数十人のグループが9月4日、ロシア当局による独立系メディアへの締め付けに抗議してモスクワ中心街で集会を開いた。
9月19日投票日の国家院議員(注1後記)総選挙に立候補している野党系候補者が企画したもので、当局による拘束や無許可デモと非難されないよう、候補者と有権者による討論会の形で実施された。
抗議グループのスピーチの中で、野党系候補者は、ロシア最大の独立系メディアのTVチャンネル『ドズド(雨の意)』(2010年開局)や読者の多いオンラインニュース『メデューサ』(2014年設立)等のメディアに対して、政権側が直近で取り締まりを強化していると非難した。...
全部読む
9月5日付米
『AP通信』:「独立系メディアに圧力をかける政権に対する抗議集会」
数十人のグループが9月4日、ロシア当局による独立系メディアへの締め付けに抗議してモスクワ中心街で集会を開いた。
9月19日投票日の国家院議員(注1後記)総選挙に立候補している野党系候補者が企画したもので、当局による拘束や無許可デモと非難されないよう、候補者と有権者による討論会の形で実施された。
抗議グループのスピーチの中で、野党系候補者は、ロシア最大の独立系メディアのTVチャンネル『ドズド(雨の意)』(2010年開局)や読者の多いオンラインニュース『メデューサ』(2014年設立)等のメディアに対して、政権側が直近で取り締まりを強化していると非難した。
人権活動家のニコライ・カフカツキィ氏(34歳、弁護士)は、“現政権はロシアからメディアを完全に追放したいようだ”とし、“何故なら、『ドズド』、『メデューサ』等のメディアを「外国代理機関」と決めつけて、それこそ英国人作家ジョージ・オーウェル(1903~1950年)が描いた反ユートピアのように、何でもかんでも取り締まろうとしているからだ”と強調した。
9月の総選挙は、ウラジーミル・プーチン大統領(68歳)にとって、2024年に予定されている大統領選挙での再々選を盤石なものにするための重要な足固めと捉えており、そのために独立系メディア、ジャーナリスト、野党支持者や人権活動家らに対して圧力をかけてきている。
同大統領は、昨年に改正された憲法に則って、(再々選されれば)2036年まで留まれることになり、2012年に2度目の大統領選当選以来、実に20年以上の超長期政権を築くことになる。
(編注;2000~2008年の大統領時代及び2008~2012年の連邦政府議長(首相に相当)時代を含めれば、三十有余年トップに君臨することになる。)
かかる政治的圧力の結果、既に二つの独立系メディアが閉鎖に追い込まれている。
しかし、現政権は、報道の自由を抑圧しているとの指摘を全否定した上で、独立系メディアを「外国代理機関」と指定しても、活動を禁止する等の措置は講じていないと主張している。
9月4日付チェコ『ラジオ・フリー・ヨーロッパ』(RFE、1949年開局の米議会出資の放送局):「数十人がモスクワ中心街で政権側の独立系メディアへの圧力に抗議」
抗議集会に参加したのは、ヤブロコ(ロシア統一民主党、1993年設立)党員、ジャーナリスト、総選挙野党系立候補者らである。
抗議集会の参加者は、「ロシア外国代理機関法(注2後記)」に基づいて、ロシア市民が必要とする独立系メディアを「外国代理機関」と指定して、あらゆる圧力をかけようとしていると非難している。
野党系候補者のマリーナ・リトビノビッチ氏(46歳)は、“プーチン氏は、自身を悩ませるメディアの一切を葬り去ろうとしている”と糾弾した。
なお、現政権は2017年、当『RFE』他6メディアを「外国代理機関」に指定して、様々な圧力をかけてきている。
(注1)国家院議員:国家会議あるいは国家ドゥーマと呼ばれる、議会下院に所属する議員。任期は5年。議席総数は450で、目下与党・統一ロシアが343議席(76%)を占める。なお、上院に当たる連邦院の議員定数は170。ロシア連邦を構成する85の連邦構成主体 (22共和国、9地方、46州、2連邦市、1自治州、4自治管区)から各々2名の上院議員が選出される。
(注2)ロシア外国代理機関法:2012年に制定された法律で、外国からの支援を受けて政治活動を行っているNPO法人に対して、「外国代理機関」であるとの申告を義務付けるもの。これに基づき、当局が当該法人に対して監査等を実施し、好ましくない法人に対して活動停止や解散等の措置が可能となる。野党勢力代表ナワルニー氏が率いる「反汚職基金」等の取り締まり対象とされて数々の政治的圧力を受けている。
閉じる
その他の最新記事