ベラルーシの独裁大統領;8月の大統領選を控えてプーチン政権の陰謀を阻止したと宣言【欧米メディア】(2020/06/20)
ベラルーシは1990年に旧ソ連から独立以来、ロシアとの国家統合を模索していて、1999年末にはボリス・エリツィン大統領(当時、1931~2007年)との間でベラルーシ・ロシア国家連合創設条約の締結に漕ぎ着け、同条約は2000年初めに発効した。しかし、四半世紀余り同国初代首脳として君臨しているアレクサンドル・ルカシェンコ大統領(65歳、1994年就任)は、後任のウラジーミル・プーチン大統領(67歳)によるベラルーシを吸収統合しようとする対応に我慢ができずに対立してきたことから、同国家連合は機能せず棚ざらしとなっている。そしてこの程、同大統領は、自身の6選(2020~2025年)を阻止しようと、ロシア側が対立候補を送り込むという陰謀を画策したとして、当該候補を逮捕することでこれを防いだと発表した。
6月19日付
『ロイター通信』:「ベラルーシ大統領、大統領選対立候補を逮捕したのは他国の策謀を防ぐためだったと発表」
アレクサンドル・ルカシェンコ大統領は6月19日、大統領選を8月に控える同国を政情不安に陥れようとした他国の陰謀を阻止したと発表した。
同大統領は前日、同大統領選の有力候補とされる、ガスプロムバンク(注1後記)ベラルーシ支店長だったビクトール・ババリコ氏(56歳)を不正資金流用容疑で逮捕している。...
全部読む
6月19日付
『ロイター通信』:「ベラルーシ大統領、大統領選対立候補を逮捕したのは他国の策謀を防ぐためだったと発表」
アレクサンドル・ルカシェンコ大統領は6月19日、大統領選を8月に控える同国を政情不安に陥れようとした他国の陰謀を阻止したと発表した。
同大統領は前日、同大統領選の有力候補とされる、ガスプロムバンク(注1後記)ベラルーシ支店長だったビクトール・ババリコ氏(56歳)を不正資金流用容疑で逮捕している。
ベラルーシの安全保障担当高官によれば、同氏はロシアの“人形使い”に操られているとし、同大統領は、同氏が同銀行資金を選挙キャンペーンに不正使用していると糾弾している。
同大統領は、目下ベラルーシは“西側からも東側からも狙われて”いて、そのうちの“一部の国”が具体的陰謀を企てていたと言及した。
同大統領は具体的に当該国の国名は明かさなかったが、2014年のクリミア半島併合時と似通った革命を煽る大掛かりな陰謀が計画されていたとし、それを見事に防いだと強調した。
同大統領は、ベラルーシ初代大統領として26年間も同国を統治してきているが、景気低迷と人権問題に加えて、直近の新型コロナウィルス感染問題に対する不十分な対応によって国民の不平・不満が高まっており、(大統領選を控えて)同大統領は初めて苦境に立たされている。
また、長い間同盟関係にあったロシアとの緊張が高まっており、特に同大統領は、ロシア側が最近、同国内を通る天然ガスパイプラインの通行使用料を一方的に値下げしてきたことに大変立腹している。
かかる背景から、同大統領がロシア側手先と目されるババリコ氏を逮捕したものとみられるが、一方で、この措置によって西側諸国との関係改善の道をより険しくしてしまう恐れがある。
何故なら欧州連合は、同氏を至急解放するよう公式に要求してきているからである。
一方、ロシア政府は同氏に関しては無関係だと装っていて、大統領府のドミートリィ・ペスコフ報道官は、“ベラルーシ大統領選に誰も候補は送り込んでいない”とし、“候補者は皆ベラルーシ市民ではないか”と強調している。
6月20日付『BBCニュース』:「ベラルーシの反政府活動家らが逮捕」
ベラルーシ当局は6月19日晩、ルカシェンコ大統領の6選反対を訴えて、首都ミンスクの目抜き通りに集結した数百人に及ぶ活動家やジャーナリストらの一部を拘束した。
活動家らは、同大統領の対立候補を応援するために集まっていたが、警察隊の乱入によって強制的に解散させられた。
現地でライブ報道していた『ラジオ・フリー・ヨーロッパ(米議会出資の短波放送局)』の特派員も逮捕された。
この直前、同大統領が演説で、ベラルーシを政情不安に陥れようとした外国勢力の陰謀を防いだ、と発表していた。
前日の6月18日には、最有力対抗馬と目されるババリコ氏が逮捕されていて、それ以前からも、反政府活動家、ジャーナリストやブロガー(ネット評論家)ら多数が拘束されている。
なお、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長(61歳、ドイツ人政治家)は、“政治的陰謀”の疑いがあるとして、ババリコ氏を即刻解放するよう訴えている。
一方、欧州安全保障協力機構(OSCE、注2後記)の国際選挙監視委員会によれば、ベラルーシにおいては1995年以降一切自由で公平な選挙は実施されていないという。
(注1)ガスプロムバンク:ロシア天然ガス独占企業ガスプロムの子会社として1990年設立。ロシア三大銀行のひとつ。
(注2)OSCE:欧州の国境不可侵と安全保障・経済協力などを約束したヘルシンキ宣言を採択して全欧安全保障協力会議として1972年に発足。冷戦終結後、紛争防止とその解決へ向けた新機構として、1995年に現在の名称に変更。欧州の他、北米、アジアを含め57ヵ国が加盟する、地域的安全保障組織としては世界最大の国際機関。
閉じる
ロシア;都市封鎖徐々に解除も、数十万人の出稼ぎ労働者は仕事も食糧もなく飢餓一歩手前【米・チェコメディア】(2020/06/02)
ロシアでは、新型コロナウィルス(COVID-19)感染者が40万5,843人と世界3位となっているが、ピーク時より新たな感染者が漸減傾向にあるとして、モスクワ初め多くの都市で6月1日以降都市封鎖解除が段階的に進められようとしている。しかし、そうした中にあって、都市封鎖で最も打撃を受けた弱者、特に1,100万人に上る出稼ぎ労働者の多くが、仕事もなければ食糧も底をつく飢餓一歩手前の状態になっていると、国際機関が窮状を訴えている。
5月31日付米
『ABCニュース』:「COVID-19に伴う都市封鎖措置で数十万人のロシア出稼ぎ労働者が食糧危機」
ロシア当局は、COVID-19の新たな感染者が漸減傾向にあるとして、6月1日以降、モスクワ初め主要都市での都市封鎖措置を段階的に緩和すると決定している。
3月中旬以来、2ヵ月半余りの不自由な生活を強いられたロシア市民は、経済活動再開を心待ちにしている。
しかし、そうした中にあって、ロシア市民ではないロシア在住者、特に1,100万人と推定される出稼ぎ労働者の多くは苦難のどん底で喘いでいる。...
全部読む
5月31日付米
『ABCニュース』:「COVID-19に伴う都市封鎖措置で数十万人のロシア出稼ぎ労働者が食糧危機」
ロシア当局は、COVID-19の新たな感染者が漸減傾向にあるとして、6月1日以降、モスクワ初め主要都市での都市封鎖措置を段階的に緩和すると決定している。
3月中旬以来、2ヵ月半余りの不自由な生活を強いられたロシア市民は、経済活動再開を心待ちにしている。
しかし、そうした中にあって、ロシア市民ではないロシア在住者、特に1,100万人と推定される出稼ぎ労働者の多くは苦難のどん底で喘いでいる。
国際移民機関(IOM、注後記)によると、2019年現在、旧ソ連(キルギス、タジキスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタン)の中央アジア諸国から出稼ぎに来ている人が500万人に上るが、3月中旬にロシア及びこれら中央アジア諸国で国境封鎖措置が取られたことから、特に困窮しているという。
すなわち、彼らの仕事は低収入の肉体労働(建設現場、倉庫、スーパーマーケット、レストラン、清掃等)に限られ、3月中旬にロシア全体で都市封鎖措置が取られた途端、失職することになった上、雇い主からは何の補償もなく、貯金もないために、居住するアパート家賃支払いはおろか、その日の食事にも事欠く状況になっている。
ロシアの出稼ぎ労働者支援に当たるNPOトン・ジャホニのバレンティナ・チャピック代表は、“これは悲劇以外の何物でもない”として、ロシア当局から何ら救いの手が差し伸べられない窮状を訴えている。
IOMロシア事務所のアブダサッター・エソーエフ所長によれば、出稼ぎ労働者の約60%が家賃支払いに困窮し、約40%が食糧を買うお金もないという。
そこでIOMは5月、ロシアの出稼ぎ労働者救済のため700万ドル(約7億5千万円)の緊急支援を行うと発表している。
一方、ウラジーミル・プーチン大統領は4月半ば、出稼ぎ労働者が支払わねばならない労働許可料を6月中旬まで適用除外とし、滞在ビザの期限延長も認めるとの大統領令を出した。
しかし、事実上は、多くの雇用主が出稼ぎ労働者から当該許可料を徴収しているという。
また、5月末に発表されたロシア当局データによると、4月の失業率が21%まで急上昇している。
これに伴い、出稼ぎ労働者の拠り所としたほとんどの職種は、都市封鎖解除となっても復活(再雇用)しない可能性が高い。
なお、世界銀行によれば、ロシア含め、世界の主要国に出稼ぎに来ている労働者は、自国に残した家族宛に生活資金を送金しているが、今回のCOVID-19禍によって、今年の送金総額は約20%減少して、1,100億ドル(約11兆7,700億円)になると試算している。
6月1日付チェコ『ラジオ・フリー・ヨーロッパ(米議会出資の短波放送局)』:「ロシアの都市封鎖解除加速」
ロシアでは、5月31日一日の新たな感染者が9,035人、死者は162人と公式発表されていて、依然収束には程遠い内容だが、モスクワ等大都市の一部都市封鎖解除が6月1日より実施されている。
主な内容は以下である。
・航空会社が全席満席での就航許可。5月18日より導入されていた規制では、毎便半分以下での就航義務。これにより、経営危機直前の航空会社にとって救い。
・ショッピングモール、公園、洗濯屋等小規模店の営業再開許可。但し、レストラン、カフェ、映画館等はまだ暫く再開不可で、大人数の集会も6月14日まで禁止。
・市民の買い物、散歩(事前登録制)、許可を受けた不可欠な職種の就業、また、午前5時から9時の間でのジョギングや運動を許可。但し、マスク着用義務。
なお、モスクワ市民は、封鎖一部解除は歓迎しているものの、ソーシャルメディア上で、外出する際の滑稽な規制について嘲笑している。
(注)IOM:世界的な人の移動(移住)の問題を専門に扱う国際機関。本部はスイスのジュネーヴ。100ヵ国以上に活動事務所があり、加盟国は162ヵ国で、国連総会オブザーバー資格を持つ。1951年に主として欧州からラテンアメリカ諸国への移住を支援するため設立された欧州移住政府間委員会が前身。日本は1993年に加盟。
閉じる
その他の最新記事