陸上自衛隊トップは12月11日、米太平洋陸軍及びフィリピン陸軍トップと共同で会見を行い、インド太平洋地域の安定に向け3ヵ国での連携を強めていく考えを示した。そうした中、フィリピン側では、米軍及び豪州軍と締結している「訪問軍地位協定(VFA、注後記)」と同様の協定を日本側とも締結することで、自衛隊がフィリピンにおける軍事演習に正規に参加できるような法的枠組みを整備しようと検討している。同国としては、南シナ海における領有権問題で対立する中国を念頭に、安全保障協力を強めたい狙いがあるとみられる。
12月11日付
『ユーラシア・レビュー』オンラインニュース(2009年設立)は、「フィリピン、日本側との“VFA”締結検討」と題して、フィリピンとしては、特に南シナ海での軍事的影響力が強大化している中国を懸念して、同海域での安全保障協力を強化していきたい意向があると報じた。
フィリピン議会の元老院(上院に相当)議員らは、日本とVFAを締結するべきだと声高に主張してきている。
日本は、かつて第二次大戦中に武力でフィリピンを支配していた国であるが、現在VFAを締結している米国及び豪州と同様、VFA締約国となることで、フィリピンにとって安全保障面での強化が図れるという理由である。...
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12月11日付
『ユーラシア・レビュー』オンラインニュース(2009年設立)は、「フィリピン、日本側との“VFA”締結検討」と題して、フィリピンとしては、特に南シナ海での軍事的影響力が強大化している中国を懸念して、同海域での安全保障協力を強化していきたい意向があると報じた。
フィリピン議会の元老院(上院に相当)議員らは、日本とVFAを締結するべきだと声高に主張してきている。
日本は、かつて第二次大戦中に武力でフィリピンを支配していた国であるが、現在VFAを締結している米国及び豪州と同様、VFA締約国となることで、フィリピンにとって安全保障面での強化が図れるという理由である。
特に、インド太平洋地域における共同軍事演習の活発化はもとより、日本が長けている災害救助活動における支援に期待しているとみられる。
日比VFA協定案は、2015年に初めて公式の話題となった。
リベラル系のベニグノ・アキノ3世大統領(1960~2021年、2010~2016年在任)時代、ボルテル・ガズミン防衛相(77歳、2010~2016年在任)が発言したもので、南シナ海における中国の影響力拡大を懸念し、同海域における安全保障強化の一環で日本とVFAを締結することが望ましいと言及していた。
フィリピン憲法の下では、法的枠組みがなければ、如何なる国の軍隊の入国も認められないからである。
かかる背景もあって、2015年にまず、防衛協力・交流覚書が締結され、2016年2月には、日本の防衛装備品のフィリピン国軍(AFP、1935年設立)向け提供を可能とする協定が締結さている。
更に、直近では2022年9月、陸上自衛隊がフィリピン陸軍(PA)及びフィリピン海兵隊と防衛協力強化協定を締結し、今年12月に実施された陸上自衛隊・米陸軍の共同訓練「ヤマサクラ2022」にPAがオブザーバー参加するに至っている。
(注)VFA:軍事演習や有事の際にフィリピンを出入りする数千人の協定締約国軍の兵士の滞在と活動に関する法的枠組みを定めた協定。未締結の国の軍は、人道支援・災害救援の演習を除いて、フィリピンで行われる軍事演習にオブザーバーとしてしか参加が認められない。
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米国は2019年、トルコがロシア製S-400超長距離地対空ミサイル防衛システム導入を決めたことから、安全保障上の理由によって同国所望のF-35Aステルス戦闘機100機の提供を反故にした。そしてこの程、長らく緊密な関係にあったタイからの4機のF-35購入要請に対しても、ここ数年で同国が中国からフリゲート艦・潜水艦・戦車等を購入していることから、最新鋭戦闘機の機密情報漏洩等を懸念して、同様に難色を示している。
2月17日付
『ユーラシア・レビュー』オンラインニュースは、「米国、タイからのF-35ステルス戦闘機の提供要請に難色」と題して、長らく緊密な関係にあったタイからの要請に対して、同国が直近で中国から多くの軍用兵器を購入していることを懸念して、逡巡していると報じている。
隔年開催のシンガポール・エアショー(2008年初回開催の航空ショー)が現在開催されている(2月15~20日)。
出品された中で最も注目されているのは、米国ロッキードマーティン社製の最新鋭F-35ステルス戦闘機(出品はF-35A及びF-35Bの2機)である。
同型機は、既に多くの同盟国向けに提供済みである;
・豪州:72機のF-35A購入を決定していて、うち44機は2021年後半に配備済み。2023年までに残り全機受け入れ予定の他、追加手当ても検討中。
・日本:2018年12月、既に導入済みの42機のF-35Aに加えて63機のF-35A及び42機のF-35B、合計105機の追加購入を決定。
・韓国:2014年に40機のF-35Aを購入していて追加手当も決定済み。また、F-35Bの購入も検討中。
・シンガポール:2020年1月、米国務省が同国からのF-35B 12機提供要請を受諾。2026年に配備予定。
(編注)F-35A:最も安価。F-35B:短距離離着陸が可能。F-35C:空母搭載用、1月下旬に南シナ海上での訓練中、空母着艦に失敗して海中に墜落したのと同型機。
そうした中、米国と長らく緊密な関係にあったタイが今年1月半ば、4機のF-35を138億バーツ(4億1,500万ドル、約477億円)で2023年に配備する条件で買い付けたいと発表した。
ロッキードマーティン社国際営業担当のティム・ケーヒル上級副社長は『ロイター通信』のインタビューに答えて、シンガポール・エアショーの機会を捉えて、タイ側から買い付けの打診があったことを認めたものの、“最終決定は米政府の方針次第”だとコメントしている。
シンガポール在のISEASユソフ・イサーク研究所(1968年設立の東南アジア問題研究専門の国営シンクタンク)のイアン・ストーリー上級研究員によれば、“米国はタイと長い間緊密な関係にあったが、軍事政権下のタイでは最近中国寄りの政策が取られていることから、最新鋭のF-35の機密情報等が中国側に流れることを懸念している”という。
また、シンガポール南洋理工大(1981年設立の国立大学)傘下R.ラジャラトナム国際研究学院(2007年設立)のリチャード・ビッチンガー客員上級研究員は、“タイは、既に中国からフリゲート艦、潜水艦、戦車を買い付ける程接近していることから、米国としてはF-35機密情報の取り扱いに関して、タイ政府を信頼するとは考えられない”と分析している。
同氏によれば、“米国は2019年、トルコがロシアからS-400超長距離地対空ミサイル防衛システムを導入することを決めたことから、最新鋭ステルス戦闘機の機密情報の取り扱いを懸念して、トルコと同意していたF-35A 100機の契約をキャンセルした”という。
当時、ホワイトハウスは声明で、“F-35の最新鋭技術は、ロシア側の機密情報収集の基礎となるシステムと共存できないものだ”と説明していた。
更に、中国空軍研究専門家のアンドレアス・ルップレチット氏も、“タイはここ何年も中国寄りの方針を示してきていたことから、米国製戦闘機に興味を示したことに驚いている”、とコメントしている。
同氏は、“タイは直近でも、タイ・中国両空軍共同訓練を実施していることでもあり、中国製J-10C戦闘機に傾注しているはずだと考えていたからだ”と付言した。
なお、J-10Cは中国空軍の多機能戦闘機で、最近パキスタンに25機納入することが決まっている。
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