7月30日に行われた10メートルエアピストル競技で、イランのジャバド・フォルギ選手が金メダルを獲得した。しかし、フォルギ選手が、米国がテロ組織とみなすイラン革命防衛隊に所属しているとして、そうした人物のオリンピックへの参加そのものに対する疑問の声が上がっている。
『ヤフー・スポーツ』によると、亡命したイラン人の人権団体「ユナイテッド・フォー・ナビド」は、国際オリンピック委員会(IOC)にフォルギ選手に関する調査を要求した。同団体は、反政府デモに参加したことを理由に、2020年にイラン政権によって処刑されたイランのレスリング選手、ナビド・アフカリ氏にちなんで名づけられた。
「ユナイテッド・フォー・ナビド」は声明で、「テロ組織に所属している人物にオリンピックの金メダルを授与したことは、イランのスポーツ界だけでなく、国際社会、特にIOCの評判にとって大きな失敗であると考える。41歳のフォルギは、長年にわたりそして現在もテロ組織の隊員である」と述べている。そして「イラン革命防衛隊は、イランの国民や反政府デモ参加者だけでなく、シリア、イラク、レバノンの罪のない人々を暴力で殺害してきた歴史を持っている。米国指定のテロ組織である。IOCが直ちに調査を行い、調査が完了するまでメダルの授与を保留することを求める」と述べている。
ワシントン・ポスト紙は1年前の記事で、イランの「最高指導者は革命防衛隊を使ってイラン国民に自分の意志を行使し、国内外からの脅威と思われるものを潰している」と伝えている。革命防衛隊は、武装組織のハマスやヒズボラと提携し、38万人以上の犠牲者を出した内戦中のシリアのアサド大統領による反政府デモ隊への攻撃を支援してきたという。
英『ガーディアン』は、2013年から2015年にかけて革命防衛隊で看護師としてシリアに従軍したと発言しているフォルギ選手は、表彰台で軍人としての敬礼を行ったと伝えている。同種目で、過去4回のオリンピック大会で金メダルを獲得してきた韓国のジン・ジョンオ選手は、「テロリストが1位を獲得するなんて。あまりに馬鹿げていて話にならない」とコメントしている。
ドバイのメディア『アルアラビヤ』によると、イランのメディアはフォルギ選手が勤務先の病院の地下で射撃の練習をしていたと報じているという。フォルギ選手は優勝後、シーア派12人のイマームの一人である「イマーム・マフディと最高指導者に私のメダルを捧げます」と語った。
米国在住のイラン人ジャーナリスト、フェレシュテ・ガジ氏はペルシャ語で「ブラボー、フォルギさん。私たちにはこのような勝利や喜びが本当に必要です。歴史を作ってくれたことを賞賛する」とツイートした。これに対し、イランを拠点とする反体制派の政治家で元政治犯のホセイン・ロナギ氏は、「シリア国民の虐殺に一役買った人物がメダルを獲得しても、それは喜びでも歴史的な出来事でもない。これはイランの恥です。ガジ氏、わたしたちは喜ぶのではなく、恥じるべきなのです」と反論している。
IOCのアダムス報道官は金メダリストがテロ組織の隊員であることの「何か証拠があるのであれば、我々に送ってほしい」と述べている。
なお、イスラエルの『エルサレムポスト』は、「国際オリンピック委員会(IOC)は、1972年のミュンヘン大会でパレスチナ人テロリストに殺害されたイスラエル人選手11名の追悼を、49年間、11大会連続で拒否してきた。」しかし今回、開会式で初めて追悼の黙とうが行われたことに対して「正しいことを選択した日本オリンピック委員会に、私たちは感謝する。」と報じている。一方で、テロ組織の現役隊員にオリンピックへの参加を許し、金メダルを授与したことで、IOCが再びオリンピックの炎を消すのに1日しかかからなかったと伝えている。
イランにとって東京大会での最初で唯一のメダルである。
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5月12日付米
『AP通信』:「IOC、開催反対の声は東京大会開催にとって全く脅威とならないと表明」
IOCは5月12日、日本で取り沙汰されている大会開催反対の世論は問題ないと、これを軽視する声明を発表した。
IOC月例理事会開催後の記者会見で、マーク・アダムス広報部長が表明したもので、“我々は世論の声を気にかけてはいるが、それに左右されることはない”とした上で、“(開催準備やテスト大会の報告を踏まえ)全ての状況を踏まえる限り、東京大会は開催しうる”と断言した。...
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5月12日付米
『AP通信』:「IOC、開催反対の声は東京大会開催にとって全く脅威とならないと表明」
IOCは5月12日、日本で取り沙汰されている大会開催反対の世論は問題ないと、これを軽視する声明を発表した。
IOC月例理事会開催後の記者会見で、マーク・アダムス広報部長が表明したもので、“我々は世論の声を気にかけてはいるが、それに左右されることはない”とした上で、“(開催準備やテスト大会の報告を踏まえ)全ての状況を踏まえる限り、東京大会は開催しうる”と断言した。
同部長は今回、トーマス・バッハ会長に代わって記者会見に臨んだが、同会長は先週、日本における新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行拡大に伴う緊急事態宣言再発出の状況に鑑み、訪日を延期している。
同部長は更に、“2013年に東京が開催場所に選定された際、日本側の開催への支持はとても強いものだったので、開催されれば多くの人が支持することになろう”とも述べた。
4ヵ月の予定で進められている聖火リレーは、一部地域で中止されたり規模縮小されたりと不安定なものとなっているが、IOC報告によると、それでも東京で過日開かれた(大会前の)テスト大会は無事開催され、また、世界各地で行われている代表選考会も順調に進められている、という。
また、同部長によれば、(大会参加の選手団約1万1千人のうち)70%に当たる約7,800人が既に選考されていて、残りの30%のうち、20%にあたるアスリートは世界ランキングで決まり、残りの10%も6月29日までには決定される、とする。
そして同部長は、“多くの選手団が、事前にワクチン接種を済ませた上で訪日することになる”とも付言した。
IOCはこの程、選手団や大会関係者用に、中国製ワクチンを緊急手当てしたり、米ファイザーから大量のワクチンの寄進を受けている。
なお、同部長の記者会見の最後の段階で、『ヤフー・スポーツ』記者が質問しようとしたところ、大会開催反対を主張する暴徒が割り込んで、“ロスアンゼルス(2028年開催地)も、東京もオリンピックはいらない”等と叫んだため、急遽会見は中止されている。
同日付英国『ジ・インディペンデント』紙:「IOC、東京でのCOVID-19感染者急増でも大会開催に自信」
日本政府は今週初め、COVID-19感染拡大に鑑み、東京及び複数の県に対する緊急事態宣言適用を5月一杯まで延長すると決めており、これを受けて、東京大会開催中止を求める世論の声が急増している。
しかし、そうした状況下でもIOCはこの程、“大会開催に向けて、十分な準備を行っていく”と述べた。
IOCのアダムス広報部長が、ローザンヌ(スイス)で開かれたIOC理事会後の記者会見で述べたもので、“万難を排して大会開催すべく、事前準備に注力している”とも言及した。
その上で同部長は、“世界各地で様々なスポーツイベントが開催されており、東京大会はその集大成ともなるもので、世界がひとつになる重要なイベント”だとも強調した。
IOCは当初、大会参加選手に優先してワクチン接種を進める案を出していたが、WHOが今年1月に不平等対応を疑問視する声明を出し、更に、日本では今現在全人口の3%しかワクチン接種が進んでいないこともあって、IOC案を非難する声が上がっていた。
そこでIOCは急遽米ファイザーと交渉し、選手団や大会関係者に日本入国前にワクチン接種が済ませられるよう、ワクチンが確保できるようにしている。
同部長は、“米ファイザーとの契約で、各国の大会参加選手らが、事前にワクチン接種できるよう手配ができた”とした上で、“アスリートのワクチン接種促進で、ワクチン接種に消極的な人々にも勇気を与えることになろう”とも付言した。
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