中国とオーストラリア(豪州)は、新型コロナウィルス(COVID-19)感染に端を発した不信感や関税賦課問題等で対立が深まっている。そうした中、今度は豪州が手を差し伸べてきた南太平洋島嶼国宛のCOVID-19ワクチン提供について、中国が無理やり同国製ワクチンを押し込もうとしてきたことから、場外乱闘の様相を呈している。
7月8日付
『ボイス・オブ・アメリカ』:「中国、パプアニューギニア向けのワクチン提供を豪州が邪魔をしていると非難」
中国国営メディアは、中国が南太平洋島嶼国のパプアニューギニア(1975年豪州から独立した英連邦王国)向けにCOVID-19ワクチンを配布しようとしたところ、豪州がそれを妨害しようとしていると報じた。
同メディアによると、豪州が現地で“政治的操作をし、ひどい仕打ち”をしようとしているという。
これに対して豪州政府は、中国による同国向けワクチン提供を邪魔しようとしているなど全くのデマだと否定している。
パプアニューギニアは目下、豪州が提供した英国アストラゼネカ製ワクチンを接種している。
そして最近、中国が同国向けに20万回分の中国シノファーム製ワクチンを空輸したが、同国保健省は中国製ワクチンを依然認可していない。
この事態を受けて、中国外交部(省に相当)報道官が、“豪州は、中国が太平洋島嶼国との友好関係からワクチン提供をしようとしている努力を妨害するな”と糾弾した。
しかし、豪州のゼッド・セシーリャ太平洋地域担当相(44歳)は豪州『ABCニュース』のインタビューに答えて、如何なる国際協力も歓迎しているとして中国側非難を否定した。
同相は、“同国がワクチン使用を許可するならば、その提供に可能な限り協力を惜しまない”とも付言した。
パプアニューギニアでは現在、感染者1万7千人超、死者は174に上っている。
(編注;7月8日午後11時半現在、感染者1万7,292人・死者177人・致死率1.0%)
同国の人口は約900万人だが、依然5万5千回分のワクチン接種しか済んでいない。
これは、同国民がワクチン接種に消極的なことと、提供ワクチンが不足していることが背景にある。
豪州は同国に対して、毎週1万回分のアストラゼネカ製ワクチンを提供すると約束している。
豪州はまた、他の太平洋島嶼国に対して数万回分のワクチン提供を保証している。
一方中国は、今年初めにソロモン諸島(1978年に英国から独立した英連邦王国)向けに5万回分のシノファーム製ワクチンを提供している。
なお、中国と豪州はこれまで、南シナ海における中国の一方的な海洋進出に対する豪州の非難や、豪州国内問題への中国による干渉等でことごとく対立してきているが、パプアニューギニア向けワクチン提供問題は両国の新たな対立点となっている。
ただ、肝心のパプアニューギニア保健省高官は、両国間の鍔迫り合いに巻き込まれるのは避けたいと考えていて、むしろ、どの国でもよいから同国向けに十分なワクチンを提供してくれることを望んでいる。
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ドイツのアンゲラ・メルケル首相(66歳、2005年11月就任)は、今秋での政界引退を表明している。しかし、依然欧州内でのリーダーシップは強く、ドナルド・トランプ前大統領(74歳)が米国第一主義を掲げて、イラン核合意やパリ協定から勝手に離脱したことで米・ドイツ関係は非常にギクシャクしていた。そうした中、同首相は、欧州との関係修復を標榜しているジョー・バイデン現大統領(78歳)をとても評価している模様で、昨年のトランプ氏の招待は断っていたものの、今年のバイデン政権の招待には応じて、7月中旬に訪米して首脳会談を行うことを決断している。
6月11日付
『UPI通信』(1907年前身設立):「メルケル首相、7月にバイデン大統領の招待に応えて訪米」
ホワイトハウスの発表によると、ドイツのアンゲラ・メルケル首相が7月中旬、ジョー・バイデン大統領の招待に応じて訪米することになったという。
同首相は昨年、ドナルド・トランプ大統領(当時)が議長国として米国で開催される予定であった主要7ヵ国首脳会議(G-7サミット)について、トランプ氏が勝手にロシア等を加えたG-7拡大を主張していること等を理由として、訪米を見送っている(編注;新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題も然ることながら、G-7加盟国の足並みが揃わず、結局開催中止)。...
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6月11日付
『UPI通信』(1907年前身設立):「メルケル首相、7月にバイデン大統領の招待に応えて訪米」
ホワイトハウスの発表によると、ドイツのアンゲラ・メルケル首相が7月中旬、ジョー・バイデン大統領の招待に応じて訪米することになったという。
同首相は昨年、ドナルド・トランプ大統領(当時)が議長国として米国で開催される予定であった主要7ヵ国首脳会議(G-7サミット)について、トランプ氏が勝手にロシア等を加えたG-7拡大を主張していること等を理由として、訪米を見送っている(編注;新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題も然ることながら、G-7加盟国の足並みが揃わず、結局開催中止)。
ホワイトハウスのジェン・サキ報道官(42歳)の声明文によると、“今回のドイツ首脳訪米によって、両国間の親密な協力関係が更に深化する”とする。
その上で、“両首脳は、COVID-19パンデミック収束、気候変動の脅威等に対する両国の協力体制について協議し、民主主義の価値観共有の下で世界経済回復や国際平和の達成に向けて協力していく”という。
米国・ドイツ両国は、中国及びロシアの国際社会での影響力拡大に明確に反対している。
ただ、両首脳は7月の会談で、ロシア・ドイツ・フランス等の国際エネルギー企業が進めているノルド・ストリーム2プロジェクト(注後記)の問題についても協議するとみられる。
同プロジェクトについては、トランプ前政権が、ロシアによる対欧州影響力が高まることを懸念する一方、欧州向けへの米国産のシェールガス供給を目論んで、同プロジェクトに関わる国際企業に対して米国が制裁を科すとしていた。
バイデン新政権は当該制裁の取り下げを決定しているものの、同プロジェクトに伴う欧州情勢への影響を懸念している姿勢に変化はないとみられている。
なお、両首脳は6月11日、英国で開催中のG-7サミットの機会を捉えて、両国首脳会談を開く予定である。
6月12日付『ボイス・オブ・アメリカ』(『ロイター通信』配信):「メルケル首相、7月15日にホワイトハウス訪問の上バイデン大統領と会談」
バイデン大統領はこの程、メルケル首相を招いて7月15日にホワイトハウスで首脳会談を開催することになった。
この公式表明は、英国で開催されるG-7サミットの初日の6月11日にリリースされた。
欧州を代表するドイツと米国との関係は、ドイツがロシア企業と共に進めていたノルド・ストリーム2プロジェクトにトランプ政権が強い抵抗姿勢を示したことから、非常にギクシャクしていた。
そこでバイデン政権は先月、前政権が実施していた同プロジェクト関係企業への制裁措置を解除し、関係修復の態度を示している。
一方、米国と欧州連合(EU)間では、17年間も続く欧州エアバス(1970年設立の仏・独・英・西航空機メーカーの共同事業体)、米ボーイング(1916年設立)それぞれに対する補助金問題(注2後記)について、7月10日を期限として交渉妥結に向けて協議が続けられている。
当該期限を過ぎると、米国及びEUがそれぞれ決定している相手側への報復関税の賦課を一時的に中断する措置が無効になってしまうため、双方の高官は、期限までの合意に大いに期待している。
従って、メルケル首相の訪米は、上記問題の目処がついた後であること、また、同首相は今年9月の総選挙後の政界引退を表明していることから、同首相にとってのお別れ会談になるものと予想されている。
(注1)ノルド・ストリーム2プロジェクト:2005年にドイツ・ロシア両国が合意し、2011年に稼働開始した“ノルド・ストリーム天然ガス・パイプライン事業”(ロシア~バルト海~ドイツをつなぐパイプライン。事業主体は、ロシア国営企業ガスプロム及びドイツ・フランス企業)を増強するプロジェクト。総工費約110億ドル(約1兆2,100億円)。当初、2019年完工予定で2017年に関係者間で合意されたが、欧州内でのロシアのエネルギー戦略への不信感や、ロシアの対欧州影響力拡大を懸念する米国の反対等から工事中断。目下は、2022年完工に向けて工事が再開されている。
(注2後記)補助金問題:2004年、欧州航空機メーカー大手のエアバスへの欧州諸国による補助金支給を不当として、米国が世界貿易機関(WTO、1995年設立)に提訴。これに対してEU側も同年、米国によるボーイングへの補助金が問題だとしてWTOに提訴。WTOは2018年、米国の訴えを認め、また、2019年にはEUの訴えも認め、それぞれ国際協定違反と認定。これを受けて、トランプ政権が2019年、75億ドル(約8,250億円)相当の欧州産品に関税賦課を決定。一方、EUも2020年、40億ドル(約4,400億円)相当の米産品に対して報復関税を賦課。
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