今年初めに就任したジョー・バイデン大統領(78歳)は、米中関係について“21世紀における民主主義と専制主義の闘い”と定義した上で、前政権と同様、中国の貿易不公正・人権蹂躙問題等々で厳しく対峙している姿勢を示している。ただ、同時に、気候変動対策等米中両大国が協力すべき問題で協調していくと表明している。そうした中、この程国務省No.2を訪中させて、協調的アプローチを試みようとしている。
7月21日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「米国、外交トップをアジアに派遣し中国への協調的アプローチ」
米中間の緊張が高まる中、米外交トップが7月25日、中国で会談することになった。
訪中するのは、国務省No.2のウェンディ・シャーマン国務副長官(72歳、2021年4月就任、オバマ政権下で国務次官)で、中国東端の天津(ティエンチン)において王毅外交部長(ワン・イー、67歳、外相に相当)等と会談する予定である。...
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7月21日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「米国、外交トップをアジアに派遣し中国への協調的アプローチ」
米中間の緊張が高まる中、米外交トップが7月25日、中国で会談することになった。
訪中するのは、国務省No.2のウェンディ・シャーマン国務副長官(72歳、2021年4月就任、オバマ政権下で国務次官)で、中国東端の天津(ティエンチン)において王毅外交部長(ワン・イー、67歳、外相に相当)等と会談する予定である。
国務省のネッド・プライス報道官(38歳)は7月21日の記者会見で、“米中関係は複雑でチャレンジングな事態であるが、両国の高官レベルでのオープンなコミュニケーションを維持することが重要だと考える”とした上で、“中国との競争関係は続くとしても、共産党政権との対話は必要だ”と言及した。
ただ、同副長官の訪中の話が明らかにされる直前の7月19日、バイデン政権は、マイクロソフト・エクスチェンジ・サーバー(MES、注後記)のメール・ソフトウェアに対して中国が大規模ハッキングを行ったとして非難した。
そして、米国の通商機密・技術情報・感染症研究報告等を盗み出そうとした容疑で、中国人4人を起訴している。
なお、同副長官の訪中は、今年3月にアラスカで行われた米中外交トップ間の会談以来の直接対話である。
また、同副長官は、中国の他、日本、韓国、モンゴル及び中東のオマーンも歴訪する。
一方、同じタイミングで、ロイド・オースティン国防長官(67歳)が、バイデン政権閣僚として初めて東南アジアを歴訪する。
同長官は7月21日、出発に先立って、“中国による南シナ海における一方的で根拠のない領有権主張を看過しない”とし、“同海域における航行の自由を確保すべく行動する”と強調した。
なお、同長官の訪問先はシンガポール、ベトナム、フィリピンである。
7月22日付中国『環球時報』:「中国、米国外交トップの訪問を認めるも、内政干渉を止めるよう要求すると表明」
外交部(省に相当)は7月21日晩、米国務省のウェンディ・シャーマン副長官が7月25~26日に天津を訪問することになったと発表した。
同部声明によると、同副長官の訪問は、米国側の要請に基づくもので、同副長官はまず外交部米中関係担当の謝鋒副部長(シー・フェン、57歳)と面談し、後に王毅部長も加わるという。
ある外交問題専門家は、現下の両国の関係悪化の中にあって、かかる外交トップレベルの会談は重要であり、中国政府も米国側との対話継続の必要性を認めているとする。
ただ、米外交トップの訪中の話が明らかになる直前、バイデン政権は新たに、中国によるサイバー攻撃があったと、根拠もなく国際問題化している。
従って、米中両国の高官レベルの会談は重要であるが、今回の会談では大きな成果は期待でいないだろう。
なお、別の専門家は、“もし米国側が再び、新疆ウィグル自治区や香港の問題を提起してくるならば、今春のアラスカで行われた両国外交トップ会談と同様、時間の浪費となろう”とコメントしている。
(注)MES:マイクロソフトの開発したグループウェア・電子メール製品。マイクロソフト製品を採用している企業で広く使われている。主な機能は、電子メール・予定表・連絡先などの共有と携帯機器やウェブからの情報アクセスサポート、さらにデータ格納サポートである。
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中国内陸部の河南省では20日、記録的な豪雨により洪水が発生し、少なくとも12人が死亡した。世界最大のiphone生産拠点として知られる省都でもある鄭州市では、約10万人が避難している。
英
『スカイニュース』によると、鄭州市では20日、1時間で200mm以上の雨を記録した。地下鉄の駅が浸水したり、車が流されたりした。数日前のヨーロッパの洪水では、最も被害の大きかったドイツで、3日間で降った雨量は182mmだった。
鄭州は、人口が1千万人を超え、中国最大の水路のひとつである黄河のほとりに位置している。市内の一部では停電が発生しているという。56歳のレストラン経営者であるWang Guirongさんは、「ずっと鄭州に住んでいますが、今日のような大雨は初めてです。」と語っている。
米『ボイス・オブ・アメリカ』によると、鄭州では、大雨のために地下鉄が閉鎖され、乗客が立ち往生したという。乗客たちは、腰までの高さの泥水の中で救助を待っている様子をSNSに投稿していた。これまでに約300人が救助されたが、まだ一定の人数が閉じ込められたままになっていると推測されている。
約9400万人の人口を抱える河南省では、先週まで激しい雨が続いていた。今後24時間にわたって雨が続く見込みであることから、同地域の気象台は20日、最も高い脅威レベルである赤色警報を発令した。
河南省当局関係者は、今回の多量の降雨は異常であると指摘している。最近では四川省の洪水で数百人の市民が死亡し、数千人が避難を余儀なくされたという。環境保護団体「グリーンピース・インターナショナル」の関係者は、中国では急速な都市化により、気候災害の頻度が高まると警告している。グリーンピースのリウ・ジュンヤン氏は、中国メディアの取材に応じ、「都市部では人口、インフラ、経済活動が高度に集中しているため、気候災害の影響を受けやすく、脆弱性が高い 」と語った。
英『BBC』と露『ロシアトゥデイ』によると、20日夜、洛陽市とその周辺に住む700万人の人々は、黄河の水をせき止めているダムの1つの決壊危機に直面しているという。中国人民解放軍は20日、ダムに「20メートルの割れ目」があることを確認し、ダム全体が「いつ崩壊してもおかしくない」と発表した。中国軍は、ダムを爆破して洪水を迂回させるために部隊を派遣したことを発表した。鄭州で降った3日間の雨量は、通常の1年分の雨量と同じだと報告されている。
なお、中国の内モンゴル自治区ではすでに2つのダムが決壊し、2万ヘクタール以上の土地が浸水し、数十の橋が流され、約1万6千人の住民が被災し、多くの人が避難を余儀なくされている。
米『ブルームバーグ』によると、河南省は中国最大の小麦生産地のひとつであり、大手機械メーカーでもある。鄭州市には台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が所有する最大のiPhone製造工場もある。今回の洪水は、同社が年末に向けてアップル社の最新機器の発売に向けて生産量を増やす準備をしている矢先に発生した。鄭州にある工場は、iPhoneの組み立てに必要な部品を世界および中国国内のサプライヤーから受け取り、完成品を出荷している。鴻海の担当者は、状況を調査中であると述べている。
河南省はまた、中国国内の食料供給地としては第2位、国内の小麦収穫量の約4分の1を占め、冷凍食品生産の一大拠点でもある。また、石炭や金属の重要な活動拠点でもある。中国ではすでに主要な小麦は収穫されているが、先に発生した大雨の影響で、河南省などの地域では品質が低下しているという。北京のコンサルティング会社Bric Agriculture Groupによると、今年の小麦の輸入量は40%増加し、1990年代半ば以来の高水準になると予想されている。中国は今年、米国、カナダ、オーストラリアからの購入を増やしている。
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