既報どおり、中国においても、高齢化及び出生率低下が進み、近い将来での大幅人口減少に転じる恐れがある。中央政府としては、地方政府に積極的な奨励策を講じて欲しいと望んでいるものの、ゼロコロナ政策による経済活動疲弊のため十分な原資が捻出できない状況である。そうした中、中国北東部の省都が全国に先駆けて3人目を生む家族に補助金を支給するとぶち上げている。
2月20日付米
『ブライトバート』オンラインニュースは、「中国の省都、3人目を持つ家族に月73ドルの補助金支給」と題して、中国東北部遼寧省(リャオニン)省都が、市内在住の家族に対して、3人目を持つ場合に補助金を支給する政策を導入すると発表したと報じている。
中国国営メディア『環球時報』報道によると、中国北東部遼寧省の省都の瀋陽市(シェンヤン)がこの程、市内在住の家族に対して3人目を生むと月500人民元(72.96ドル、約9,850円)の支援金を支給することになるという。
当該支援金は、対象乳幼児が3歳になるまで適用されるという。
今回の同市政策発表の直前、中国国家衛生健康委員会(NHC、1949年前身設立)高官が、将来の大幅人口減少危機を避けるため、各地方省庁に対して、子供を持つに当たっての費用削減のための“大胆な施策”が必要だと訴えていた。
中国共産党政権では、人口爆発を抑えるために1980~2015年の間、“一人っ子政策”を導入し、違反者を厳しく罰していた。
この結果、家族の原点を家父長制とする中国では、跡取りとならない女の赤ん坊は堕胎させられたりしており、当局データによると4億人に上るという。
ところが、独裁者習近平国家主席(シー・チンピン、69歳、2012年就任)が2016年、人口減少危機を懸念して2人までの子供を容認する決定をし、2021年には更に“三人っ子政策”まで導入することにしている。
しかし、規制緩和に踏み切っても、出生率は下がり続けるばかりであった。
何故なら、長く続いた“一人っ子政策”の下で、非常に多くの女の赤ん坊が生を受けることがなかったため、子供を産む適齢期の女性が非常に少ない事態となっているからである。
NHCの人口監視・家族開発部門の楊文章(ヤン・ウェンチュアン)部門長は、人口減少の原因を、子供を産む女性らが、“金銭的な問題や自身のキャリア維持について大いに懸念しているだけでなく、第一に子供を持ち育てる費用が高すぎることに嫌気している”ためだとコメントしている。
当局統計データによると、中国の人口は少なくとも2020年に減少に転じていた。
共産党政府自身も今年1月、人口増加の減退ではなく総人口が減少していることを正式に認めている。
今年1月公表のデータによると、2022年の総人口は85万人減っていて、出生率も最低値を記録している。
この人口減少は、約60年前に毛沢東主席(マオ・ツォートン、1893~1976年)主導で行われた大躍進政策の失敗で4,500万人もの餓死者を出して以来の事態である。
政権寄りのシンクタンク育媧人口研究所(北京本拠)が2月17日にリリースした報告書によると、出生率向上のために様々な支援策を講じれば、2030年までには年1千万人の人口増まで復活できると期待されるという。
同研究所は、提言政策として、現金支給、優遇税制、住宅補助、保育援助、産休期間延長、教育改革等十項目を掲げている。
同研究所に所属する北京大学(1898年設立の国立大)梁建章経済学部教授(リャン・チアンチャン、53歳)は、もしかかる政策が奏功すれば、2050年までに総人口12億9千万人が維持できると試算している。
なお、瀋陽市以外の地方政府の政策をみると、北東部の天津市(ティエンチン)、南東部の安徽省(アンホイ)及び江西省(チアンシー)が、若者の婚姻支援の一環で結婚休暇期間延長施策を導入している。
同日付中国『環球時報』は、「瀋陽市政府、3人目の子供を持つ家族に3歳まで月72.9ドルの補助金支給」と詳報している。
瀋陽市政府が発表した、人口増啓発政策には、3人目の子供を持つ夫婦への月500人民元(72.9ドル)の補助金に加えて、育児・教育支援、更には住宅補助までが含まれており、出生率向上を後押ししようとするものである。
この施策によって、妊婦や乳幼児の健康が確保され、子供を産み育て、かつ教育していく費用の削減に繋がる。
同市の施策は2035年まで続ける方針となっており、これによって、長期的にバランスの取れた人口維持が可能となり、適度な出生率を保って人口構成の改善を達成することができるとしている。
当該施策の詳細は以下となっている。
・産休期間を98日から158日に延長。同時に、父親の育休も20日取得可能。
・3歳以下の複数の子供を持つ夫婦に年10日間の有給休暇。
・2人目、もしくは3人目の子供を持つ家族に住宅補助等の支援。
・3歳以下の複数の子供を持つ夫婦への保育園・幼稚園入園支援。
瀋陽市以外の省・市政府の施策は以下のとおり。
西南部の雲南省(ユィンナン):2人目の子供を持つ夫婦に2千人民元(約4万円)、3人目には3千人民元(約6万円)の一時金を支給。対象期間は2023年1月~2025年12月。
更に、2人目、もしくは3人目を持つ夫婦に、子供が3歳になるまで年800人民元(約1万6千円)を支給。
成都市(チェンドゥ、四川省都)及び内モンゴル自治区:出生率向上のため、幼稚園・保育園の増設。
天津市、安徽省及び江西省:結婚休暇期間の延長。
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既報どおり、ドナルド・トランプ前大統領(76歳)は、自身が議事堂襲撃事件扇動容疑や機密文書の無許可持ち出し等で訴追の恐れがあるだけでなく、オーナー企業に対して脱税に伴う罰金刑が科される等、窮地に追い込まれている。しかし、米共和党員は、多少悪でも強いカリスマを求めているのか、直近で行われた世論調査の結果、依然トランプが他候補を圧倒し2024年大統領選の共和党候補筆頭となっている。
1月18日付米
『ブライトバート』オンラインニュース(2005年設立の保守系メディア)は、「ドナルド・トランプ、2024年大統領選共和党候補予備選で2桁以上のリード」と題して、様々なスキャンダルに見舞われているものの、依然共和党有権者からの支持率が他を圧倒して最も高いと報じている。
直近で共和党有権者に対して行われた世論調査の結果、ドナルド・トランプ前大統領が半分近くの48%の支持を集め、依然2024年大統領選共和党予備選候補の筆頭となっている。
データ収集・分析会社の『モーニング・コンサルト』(2014年設立)が1月14~16日の間、共和党有権者3,763人から得たアンケートの結果、次のように、2位となったロン・デサンティス氏(44歳、フロリダ州知事、2019年初当選)を17%も引き離している。
●ドナルド・トランプ:48%
●ロン・デサンティス:31%
●マイク・ペンス:8%(63歳、前副大統領、2017~2021年在任)
●リズ・チェイニー:3%(56歳、ワイオミング州選出下院議員、2017年初当選、反トランプ急先鋒)
●ニッキー・ヘイリー:2%(50歳、元国連大使、2017~2018年在任)
●テッド・クルーズ:2%(52歳、テキサス州選出上院議員、2013年初当選)
●グレッグ・アボット:1%(65歳、テキサス州知事、2015年初当選)
●クリスティ・ノウム:1%(51歳、サウスダコタ州知事、2019年初当選)
●マイク・ポンペオ:1%(59歳、元国務長官、2018~2021年在任)
●ティム・スコット:1%(55歳、サウスカロライナ州選出上院議員、2013年初当選)
●グレン・ヤンキン:0%(56歳、バージニア州知事、2022年初当選)
上記調査結果は、昨年12月18日時点のものと大差なく、トランプは48%を維持したが、むしろ2位のデサンティスが前回の33%より若干下げている。
ただ、今回トランプを支持した有権者のうち44%は、2番手候補としてデサンティスを支持しており、また、デサンティス支持者のうち37%がトランプを次点としている。
なお、上記のうち、2024年大統領選への出馬を表明しているのはトランプだけで、デサンティスは何も具体的なことを言っていないが、トランプはデサンティスを目の敵にして集中砲火を浴びせている。
すなわち、デサンティスが2019年にフロリダ州知事選で対立する民主党候補に僅か3万3千票差で当選できたのは、トランプ自身が推薦したお陰であって、これなくば敗退していた等々と訴え、“もしデサンティスが自身の対抗馬として大統領選に打って出るというなら、それ相応の覚悟で対応する(叩き潰すというニュアンスの表現)”とコメントしている。
一方、デサンティスは、“(共和党員同士の)内戦”を全否定しただけでなく、同前大統領を批判することも拒んでいる。
1月17日付英国『ザ・テレグラフ』紙(1855年創刊)は、「デサンティスからペンスまで、2024年米大統領選共和党候補の顔ぶれ」として、各々の立候補予定者について詳報している。
ドナルド・トランプ前大統領は昨年11月、他の誰よりも先に2024年大統領選への出馬を正式表明し、他候補の立候補を思い止まらせる作戦に出た。
しかし、正式表明は未だなれど、共和党の著名政治家の多くが立候補するとみられている。
ひとつには、トランプが立候補した場合、2024年時点で78歳の高齢となることから、共和党にとって不利と見る向きがある。
更に、2022年秋の中間選挙で、共和党が上院を牛耳られなかっただけでなく、下院でも辛勝となったことから、多くの一般有権者がトランプに反発した結果だと評価されているからである。
そこで、トランプの対立候補をみていくと、まずフロリダ州知事のロン・デサンティスが最有力候補に挙げられよう。
デサンティスが依然44歳と若く、また、同州知事選挙で競合相手の民主党候補に大差をつけて勝利していることから、特に若い有権者からは、間違いなくトランプより多くの支持を得られると見込まれている。
また、デサンティスが、ヒスパニック(メキシコ系、ラテンアメリカ系米国人)やかつて民主党員だった人からの支持を新たに取り付けていることも大きい。
いくつかの世論調査の結果では、2024年大統領選共和党候補予備選が最初に実施されるアイオワ州及びニューハンプシャー州では、デサンティスがトランプをリードしている。
次に、マイク・ペンス前副大統領。
彼の場合、2021年1月6日の議会で2022年大統領選の結果を承認する手続きの際、トランプの命令に反して任務を全うしたことから、穏健派から称賛されていることが大きい。
特に彼の回想録の中で、議事堂に乱入した急進的なトランプ支持者らから追われた際、何とか逃げおおせた経緯を述べているが、当該蛮行を止めようとしなかったトランプを“無謀”だと非難している。
ペンス自身、大統領選で共和党候補を有利に導くのはトランプよりも自分だと述べているが、一方で、トランプ時代の副大統領であったことから、一般有権者からの支持は高くない。
次は、かつてのトランプ派を任じていたニッキー・ヘイリー元国連大使。
彼女は元サウスカロライナ州知事(2011~2017年在任)であったが、トランプから国連大使に任命されてからは、国連の舞台で一貫してトランプの“MEGA(米国を再び偉大に)”政策を認知させるべく奮闘してきた。
ただ、2021年1月6日の議事堂乱入事件発生以降は公にトランプを非難するようになっていて、(自身の立候補は別にして)共和党は“トランプ方針に従うべきではない”と主張していた。
しかし、間もなく前言を翻し、“共和党にはトランプが必要だ”と言い出しており、大統領選立候補の可能性を含めて、彼女の話には一貫性がない。
次はテッド・クルーズ上院議員(テキサス州選出)。
共和党の重鎮のひとりであるクルーズは、党内穏健派から強い支持を受けている。
ただ、2024年選挙時には、上院議員の改選時期に重なるため、まだ態度を決めかねている。
同氏は、上院議員3期目を狙うと表明しているものの、大統領選共和党予備選に打って出る可能性を否定していない。
同氏はトランプの出馬表明について、“予備選を実施しないで本選に臨もうとしているが、対立候補は出てくる”としながらも、“時期尚早で、まだ様々なことを議論する必要がある”とコメントしている。
次にマイク・ポンペオ元国務長官。
トランプの忠実な部下だったこともあり、トランプから目の敵にされることはないとみられる。
長官退任後、体重を大幅に落としてイメージ戦略を展開し、直近では、新刊を持ってメディア回りをして大統領選共和党予備選への出馬を仄めかしている。
なお、同氏は今春までに出馬するかどうか態度を鮮明にするとしている。
次はラリー・ホーガン前メリーランド州知事(66歳、2014~2022年在任)。
ホーガンは、立候補を取り沙汰されている他の候補者と違って、遠慮なくトランプを強硬に批判している。
そこで、反トランプ運動を展開していく上でも、2024年の予備選に打って出ることを前向きに検討していると公言している。
同氏は、昨秋の中間選挙での共和党苦戦結果を受けて、“自身がこれまでメリーランド州で勝ち取ってきたように、共和党はもっと幅広い人たちに支持を訴えていく必要がある”と『CNN』のインタビューに答えている。
最後に、ブライアン・ケンプ現ジョージア州知事(59歳、2019年初当選)。
ケンプは2020年、トランプから大統領選の同州選挙結果を覆すよう命令されたことに従わなかったことで名を挙げた。
ただ、トランプから敵視され、昨秋の中間選挙では、トランプ推薦候補として送り込まれた刺客と同州知事選共和党予備選を戦う必要に迫られたが、見事勝利し、その勢いを駆って本選でも民主党候補に勝って再選を果たしている。
ケンプの場合、新型コロナウィルス対策や、他州に先駆けての行動制限解除等の政策について、多くのジョージア市民から支持を得ていたことが勝因と言える。
特に、昨今の二党対立が顕著の中、民主党員からも支持を取り付けていたことが大きい。
そこでケンプは、“(反トランプ風が吹き荒れる中)もしタフな知事選で勝利できなかったならば、2024年大統領選での共和党候補勝利の可能性が断たれただろう”とし、“しかし、勝利できたことから、2024年への道は続いている”と公言している。
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