ヨーロッパ、夏に向けて観光客呼び込み合戦開始(2021/05/12)
ヨーロッパ各国で新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が進む中、観光依存度の高い国々は、この夏に向けて旅行者を呼び戻すために全力を尽くしている。ギリシャの「コロナフリー」の島から、マルタの200ユーロ(約26000円)の支給まで、それぞれが独自の戦略を展開している。
仏日刊紙
『Sud Ouest』によると、観光に特に依存している南ヨーロッパの国々は昨年の夏、感染や国境の閉鎖を心配する旅行者から敬遠され、莫大な経済的損失を被った。今年のバカンスシーズンを見逃すわけにはいかず、各国が、値下げキャンペーン、ワクチン接種の加速、より柔軟な感染予防対策の許可など、旅行者を惹きつけるためのあらゆる手段を講じている。
非常事態宣言が9日に解除されたスペインは、観光業がGDPの12.3%を占める。...
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仏日刊紙
『Sud Ouest』によると、観光に特に依存している南ヨーロッパの国々は昨年の夏、感染や国境の閉鎖を心配する旅行者から敬遠され、莫大な経済的損失を被った。今年のバカンスシーズンを見逃すわけにはいかず、各国が、値下げキャンペーン、ワクチン接種の加速、より柔軟な感染予防対策の許可など、旅行者を惹きつけるためのあらゆる手段を講じている。
非常事態宣言が9日に解除されたスペインは、観光業がGDPの12.3%を占める。しかし、2020年7月から9月の期間には、2019年に比べて79%も観光客が減少した。今年は、夏までに感染者数を減らすために、最も観光客の多い地域で非常に厳しい制限措置が取られた。バレアレス諸島やカナリア諸島では、スペイン人旅行者にもPCR検査を課している。観光事業者は、検疫などの制限措置を避け、旅行者数を増やすために、欧州のグリーン・パスポート導入に力を入れるよう政府に要請している。欧州連合(EU)加盟国27カ国で採択されたこのパスは、6月末に導入される。旅行者が予防接種を受けていること、PCRや迅速抗原検査を受けていること、あるいは抗体を持っていることを証明するパスポートとなる。
ポルトガルでは、新型コロナウイルスの流行がかなり安心できる数字で推移しており、おさまりつつある。4月19日からカフェやレストランが営業を再開しており、すべてのスポーツ活動が許可されている。ポルトガル政府は今年の夏までに人口の70%にワクチンを接種したいと考えており、ホテルでは、観光客を迎えるために厳しい衛生基準の遵守を保証する「クリーン&セーフ」ラベルが導入されている。スペイン同様に、グリーン・パスポートの導入が予定されている。なお、マデイラ諸島では、ワクチン接種証明書または新型コロナウイルスの回復証明書を持つ人には、制限なしの観光が認められる。
観光業がGDPの20%を占めるギリシャは、ここ数年の経済危機の影響で、2年連続観光客のいないバカンスシーズンを何としても避けたい状況にある。感染状況が徐々に改善している同国では、ホテルやレストランのスタッフは毎週のようにセルフ検査を受けなければならず、厳しい感染防止対策措置も取られている。現在、予約はまだまばらだが、業界関係者は、少なくとも2019年の35%から40%の数字に達することを期待している。また、ギリシャは「コロナフリー」の島々を売り物にしている。政府は、エーゲ海のいくつかの島々の住民や専門家に優先的にワクチンを接種し、集団免疫の出来ている「観光地域」に観光客を誘致しようとしている。
『フランス24』によると、イタリアでは、外国人観光客を呼び戻すために、欧州委員会が発表したグリーン・パスポートの導入に先立ち、5月後半から独自のワクチンパスポートを導入する。このパスポートは、すべての地域への旅行を可能にし、ヨーロッパのパスポートと同じ条件で発行される。ワクチンを接種しているか、抗体を持っているか、または陰性であることが条件となる。このイタリアのパスポートはEU圏外の観光客にも提供される。世界観光機関(UNWTO)によると、イタリアは2019年に6450万人の旅行者を受け入れており、一人当たりの消費額が高いアメリカ人とイギリス人観光客が30%以上を占めている。
なお、2019年に280万人の観光客を迎えたマルタ島では、星付きホテルに3泊以上宿泊すると、1人当たり最大200ユーロ(約26000円)分の無料サービス券がもらえる。この券は現地利用に限られるが、ゴゾ島に滞在する場合はさらに10%増となる。本特典は、先着予約38,000人に提供される。ただし、観光客は出国した国の感染状況に応じて、またEUが公表している感染状況マップに基づいて、ワクチン接種済みであることや72時間以内のPCR検査の陰性証明が必要となる場合がある。
世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)によると、2020年の欧州の旅行業界における損失は9,370億ユーロ(約124兆円)にのぼり、360万人の雇用が失われた。
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欧州、ワクチン接種した米国人観光客の受け入れ再開(2021/04/27)
欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで、ワクチンを接種したアメリカ人に今後数ヶ月のうちに「無条件」で開放することを発表した。観光産業への依存が高い欧州のいくつかの国では、国境閉鎖により壊滅的な打撃を受けており、観光シーズンに向けて受け入れ再開を急いでいる。
仏金融紙
『ラトリビューヌ』によると、欧州委員会委員長は、ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで、米国でのワクチン接種が大きく進展していることを指摘し、米国で使用されている3つのワクチンは欧州医薬品庁(EMA)が承認しているものでもあることから、「27の欧州加盟国は、EMAが承認したワクチンを接種したすべての人を無条件に受け入れる」と断言した。米国では、モデルナ(米)、ファイザー(米)とビヨンテック(独)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(米)が開発した3つのワクチンが承認されており、6月中旬までに、成人人口の70%がワクチン接種を受ける予定だ。...
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仏金融紙
『ラトリビューヌ』によると、欧州委員会委員長は、ニューヨーク・タイムズ紙のインタビューで、米国でのワクチン接種が大きく進展していることを指摘し、米国で使用されている3つのワクチンは欧州医薬品庁(EMA)が承認しているものでもあることから、「27の欧州加盟国は、EMAが承認したワクチンを接種したすべての人を無条件に受け入れる」と断言した。米国では、モデルナ(米)、ファイザー(米)とビヨンテック(独)、ジョンソン・エンド・ジョンソン(米)が開発した3つのワクチンが承認されており、6月中旬までに、成人人口の70%がワクチン接種を受ける予定だ。
欧州委員会委員長は、受け入れ再開の具体的なスケジュールを明らかにしなかったが、ニューヨーク・タイムズ紙は、世界中でワクチン接種が盛んになる今年の夏には新しいルールが導入される可能性が高いと報じている。
同委員長は、渡航の再開については「疫学的な状況によるが、米国では状況が改善しつつあり、EUでもそうなることを期待している」と述べた。
観光産業により大きく依存している欧州のいくつかの国では、パンデミックのために観光客に対し国境が閉鎖されたことで、壊滅的な打撃を受けている。仏金融紙『レゼコー』によると、欧州委員会は3月中旬、観光業の急速な復興を目指す南欧諸国からの要請を受けて、「デジタル・グリーン証明書」を7月から運用開始することを発表している。証明書は、ヨーロッパに住んでいる人や旅行者がワクチンを接種したこと、または陰性反応であったこと、あるいは新型コロナウイルスの抗体を持っていることを証明するためのもので、欧州内で自由な移動を促進することを目的としている。
仏ニュース専門放送局『フランス24』によると、欧州諸国の中でも特にギリシャは、観光業に大きく依存しており、新型コロナウイルスの新規感染者が増加しているにもかかわらず、国境を徐々に開放することを決定した。2020年には活動が80%減少した国の重要な産業である観光を救うための戦略的な選択だと言える。ギリシャでは今、観光シーズンが訪れる前に、最も観光客に人気の高い小さな島々に住む住民へのワクチン接種を優先的に進めているという。
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