ロシアによるウクライナ軍事侵攻以降、西側陣営による対ロシア制裁のため、日米欧の有名ブランドが次々にロシアから撤収している。しかし、撤退した際に残された大量在庫はもとより、対ロ制裁に加わっていない友好国経由での供給等によって、商品自体は依然ロシア国内で多く取引されていることが判明している。
2月23日付
『ロイター通信』は、「世界トップ・ブランドがロシアから撤退するも、商品自体は依然ロシア国内で流通」と題して、世界トップ・ブランドの商品自体が制裁対象となっていないことから、並行輸入(注後記)や、対ロシア制裁に加わっていない友好国経由で当該有名ブランド商品が、依然と余り変わりなくロシア国内で流通していると報じている。
ウクライナ軍事侵攻に伴う対ロシア制裁の煽りを受けて、欧州・北米・日本企業の世界トップ・ブランドの多くがロシアからの撤退を余儀なくされた。
しかし、それら有名ブランドの商品自体は、依然ロシア国内で流通している。
すなわち、清涼飲料大手のコカ・コーラ(1889年設立、本社米ジョージア州)の商品を積載したトラックがロシア国境で列を作り、世界最大の家具量販のIKEA(1943年設立、本社スウェーデン)の家具はロシアのオンラインショップで容易に手に入っているからである。
何故なら、トップ・ブランドが撤収しても、これらの商品自体は対ロシア制裁の対象となっていないため、並行輸入や、対ロシア制裁に加わっていない“友好国”経由での供給等によって、少々コストが割高となっていても依然ロシア国内で商取引が可能となっているからである。
あるロシア人女性(32歳)は『ロイター通信』のインタビューに答えて、昨夏に空のスーツケースを携行してミンスク(ベラルーシ首都)を訪れ、アパレル世界最大手のインディテックス(1985年設立、本社スペイン)が手掛けるザラ、ベルシュカ、マッシモ・ドゥッティ商品3万3千ルーブル(442ドル、約6万円)分を、自身及び友人用に大量に買い付けて即日帰国したという。
西側諸国の対ロシア制裁を契機に、多くのトップ・ブランドがロシア及びベラルーシから撤退したが、インディテックスはベラルーシから引き上げなかったからである。
彼女によると、パリやドバイ(アラブ首長国連邦首都)でも同様に衣料品を買い付けているだけでなく、オンラインショップも利用しているという。
更に、“複数の女性が、欧州、イスタンブール(トルコ)やドバイに移住して、様々な商品を買い付けて、インスタグラム(米SNS、旧フェイスブック傘下、2010年開始)やテレグラム(ロシア版SNS、2013年開始)上で商取引を行っている”とし、“彼女らは15~30%のコミッションを享受している”とする。
国際宅配業者CDEK(2000年設立、ロシア本拠、200ヵ国以上展開)のダイナラ・イスマイロワ市場担当取締役は『ロイター通信』のインタビューに答えて、電子商取引で発注された商品をトルコからロシアに配送する業務が7倍増となっている、と語った。
同取締役は、“トップ・ブランドがロシア撤退を発表するや否や、当該商品の発注が急増した”と付言した。
同社によると、小口で個人ベースの取引が多くを占めるが、昨年の売り上げが2倍となっていて、そのうち衣料品取り扱いが80%を占めるという。
ロシアでは、供給網が崩壊したことから、トップ・ブランドの正規代理店を経ない並行輸入が合法化されて、多くの小売業者がオンライン取引で受注し、当該ブランド品を様々な手段で輸入するようになっている。
ロシア最大のオンライン取引所のワイルドベリー(2004年設立)では、ザラ・ブランドの商品約1万7千点が取引されているが、インディテックス関係者によると、同社がロシア撤退するときに在庫整理された商品が主であるという。
西側のトップ・ブランドで世界中至る所にある商品のひとつであるコカ・コーラは、ワイルドベリーもその同業者であるオゾン(1998年設立)及びヤンデックス・マーケット(2000年設立)も多く取り扱っている。
コカ・コーラ自体は昨年ロシアでの生産を中止しているが、欧州やカザフスタン、ウズベキスタン、更には中国のラベルが付けられたコカ・コーラが売られている。
同じくオンライン取引所を運営しているパブリカンのラム・ベン・チォン最高経営責任者(CEO)は、“並行輸入が確立され、様々なルートでトップ・ブランド取引が発展し、今後更に全ての商品が取り扱われることになる”としながらも、多くの搬送トラックが国境で数珠繋ぎとなったり、新規事業者がどんどん入っていることが懸念される、とコメントしている。
なお、対ロシア制裁に加わっていない“友好国”で並行輸入等でロシア向け取引を大きく伸ばしているのは、中国、トルコ、カザフスタン等である。
中国は昨年、ロシア向け取引高が12兆8千億人民元(1,860億ドル、約25兆1,100億円)と史上最高となり、トルコは輸出高が93億4千億ドル(約1兆2,610億円)と前年比+61.8%も急増し、また、カザフスタンも87億8千億ドル(約1兆1,850億円)と+25.1%も伸ばしている。
(注)並行輸入:総代理店が独占的に輸入している外国商品を、別の輸入業者や個人が第三国の総代理店から輸入するなどの方法により行う輸入。高い価格の商品を安く輸入するために行われることが多い。
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カンボジア首相は先週、当国で開催された東アジアサミット(東南アジア諸国連合ASEAN10ヵ国+日米中ロ等8ヵ国)において各国首脳と直接会談していた。その首相が今週初め、新型コロナウィルス(COVID-19)の陽性が認められたため、インドネシアで開催中の主要20ヵ国(G-20)サミットを途中退席した。そこで懸念されるのは、同首相と握手したり会議・晩餐会を共にした各国首脳が感染していないかどうかである。
11月15日付
『AP通信』は、「カンボジア首相、COVID-19陽性でG-20サミットを途中退席」と題して、先週自国で東アジアサミットを主催したカンボジア首相が、G-20サミットが開催されるインドネシア到着時にCOVID-19感染が認められたため、途中退席を余儀なくされたと報じている。
カンボジアのフン・セン首相(71歳、1998年就任)は11月15日、自身のCOVID-19陽性が認められたのでバリ島(インドネシア)で開催中のG-20サミットを途中退席すると表明した。
同首相は先週、首都プノンペンでホストを務めた東アジアサミットにおいて、ジョー・バイデン大統領(まもなく80歳、2021年就任)他各国首脳と面談していた。
同首相は『フェイスブック』に投稿して、インドネシアに到着した11月14日晩、検査で陽性が認められ、更にインドネシア医師も11月15日朝に陽性であることを確認したと言及した。
その上で同首相は、G-20サミットを途中退席するだけでなく、11月18・19日にタイで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC、1989年設立)も欠席すると付言している。
ホワイトハウス発表によると、バイデン大統領は11月15日朝の検査で陰性であったとし、また、米疾病予防管理センター(CDC、1992年設立)基準による濃厚接触者にはなっていないという。
カンボジアは先月、COVID-19に伴う観光客入国制限を緩和していたが、ASEANサミット及び東アジアサミット出席の各国首脳に感染防止基準を守るよう要請していた。
しかし、サミット開催中、ほとんどの首脳や代理出席者はマスクを着用しておらず、また、長時間の会議中も間隔を空けずに着席していた。
同首相は、インドネシア到着が11月14日晩となり、フランスのエマニュエル・マクロン大統領(44歳、2017年就任)他首脳との晩餐会に出席できなかったことは幸いだったと表明した。
ただ、同首相は、11月13日に終了した東アジアサミットを主催するに当たって、来訪したバイデン大統領の他、岸田文雄首相(65歳、2021年就任)、カナダのジャスティン・トルドー首相(50歳、2015年就任)、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相(72歳、2004年就任)、中国の李克強首相(リー・クーチアン、67歳、2013年就任)等と握手したり個別会談を持ったりしていた。
また、同首相は11月13日、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相(42歳、2017年就任)、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相(59歳、2022年就任)他とも二ヵ国会談を持っていた。
アーダーン首相側近は、11月15日の検査で同首相は陰性だったと発表している。
更に、フン・セン首相は11月13日、G-20サミットを主催するだけでなく、2023年のASEANサミットの議長国となるジョコ・ウィドド大統領(61歳、2014年就任)と引継ぎをかねて会合を持っていた。
なお、G-20開催のインドネシアでは、来訪する代表団やメディア全てに陰性証明の提出及び毎日の検査を求めているとされているが、首脳陣にも同様の要請がなされているのかは不詳である。
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