香港、オミクロン株による第5波開始で大量の市民が海外に脱出(2022/03/11)
新型コロナウイルスの第5波に直面している香港は、2月に入ってから、オミクロン株による感染症が爆発的に増えた。わずか1カ月余りで発症率は360倍、3月頭には連日5万人以上の新規感染者が報告され、死亡率も世界一になった。こうした中、香港当局の厳しい感染予防政策を避けようと住民の海外脱出が急増している。
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『レゼコー』によると、現在香港では、コロナワクチンをほとんど接種していない高齢者の間で特に感染が拡大しているという。高齢者のうちワクチンを接種した人は半分以下にとどまり、特に感染が拡がっている老人ホームでは接種率は15%程度と低い。
香港当局は2月下旬、感染力が強いオミクロン株の流れを食い止めようと、住民3740万人全員を対象とした大規模な検診を実施し、陽性者には厳しい隔離を課すと発表した。...
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『レゼコー』によると、現在香港では、コロナワクチンをほとんど接種していない高齢者の間で特に感染が拡大しているという。高齢者のうちワクチンを接種した人は半分以下にとどまり、特に感染が拡がっている老人ホームでは接種率は15%程度と低い。
香港当局は2月下旬、感染力が強いオミクロン株の流れを食い止めようと、住民3740万人全員を対象とした大規模な検診を実施し、陽性者には厳しい隔離を課すと発表した。この発表を受けて、ホテルやプレハブのキャンプに隔離され、家族から強制的に引き離されることを予想した住民の多くが海外に逃れようとしているという。香港が厳重なロックダウンに見舞われるという懸念も脱出を後押ししている。2月には7万人以上が香港を離れ、直近1週間ではさらに2万3千人が海外に飛び立った。これは、2021年全体の出国者数に相当する。
香港の欧州系市民の10%以上がすでに街から脱出しており、駐在員の間で亡命先として最も人気が高いのはシンガポールだという。特に金融界の海外脱出が顕著となっており、シティグループやJPモルガンなどの主要な国際機関の年配従業員が海外に避難している。
米『エポックタイムズ』によると、駐在員家族の間では、夫婦の片方が仕事のために香港に残り、もう片方は子供を連れて実家に帰国するなど、家族がバラバラに暮らしているケースが多くなっているという。駐在員家庭は、感染したり濃厚接触者となった場合に強制的に子供と引き離されたり、検疫所に入れられるのを恐れている人が多いという。
夫が仕事のために残り、子どもを連れてオーストラリアに発った2児の母親は、「感染することよりも、隔離が恐かった。検疫施設は、まるでホラー映画に出てくるようなところだ」と述べている。
香港のコンサルタント会社オデッセイの福祉関連の専門家、ジュディ・ブレイン博士は、例えば、香港政府が感染した子どもはどんなに幼くても隔離しなければならないと主張していたことなど、「物理的な安全を確保しようとするあまり」、香港当局は「人間性を見失ってしまったようだ。こうした対策には、根底に恐怖心がある」と述べている。
香港当局による厳格なコロナ対策は、特に家事手伝いや出稼ぎ労働者、低所得者など、社会的に最も弱い立場の人々により重くのしかかっているという。香港の慈善団体「ピープルサービスセンター」の調査によると、低所得者層の5世帯のうち4世帯が、過去1カ月間にコロナ関連の大きなストレスに直面したと回答している。
学校が閉鎖されたため、90万人以上の生徒が再び家で過ごしている。遊び場やほとんどの会場も閉鎖されたため、親は自宅で仕事をするのに一苦労だ。また、2月には野菜不足により食品価格が高騰し、ロックダウンの懸念から住民が買いだめしているため、スーパーの棚は10日以上空っぽの状態が続いている。
地元のNGOは、家事手伝いの仕事をしている人の中には、感染して雇い主の家から追い出された人もいれば、感染後、親戚にうつさないように屋上や階段で寝ている住民もいると、述べている。特に、「パンデミックは1日や2日ではなく、2年も続いており、政府からの物資や支援が不足しているため、誰もがパニックになっている」という。
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アストラゼネカ製の新型コロナワクチン、世界のワクチンニーズを満たすのに貢献(2022/01/07)
アストラゼネカ社とオックスフォード大学が共同開発した新型コロナウイルスのワクチンは、血栓の発生リスクが他社ワクチンよりもわずかに高いことから、世界の主要な国々から敬遠されてきた。その一方で、現在、世界で最も広く、特にワクチンを供給できていない低所得国で配布されているワクチンの一つになっている。
仏メディア
『BFMTV』は、1月末までに、世界の78億人のうち少なくとも半数の人、約40億人が、新型コロナウイルスのワクチンを2回以上接種していることになるだろうと伝えている。しかし世界各地では、特にアフリカで、政治的な意思の欠如、医療資源の不足、あるいは単にワクチン不足のため、ワクチン接種に苦労している国がまだ多くあるのが現状である。こうした中、欧米や日本で敬遠されていたアストラゼネカ製の新型コロナワクチンが、世界におけるワクチン接種の要になっている。...
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仏メディア
『BFMTV』は、1月末までに、世界の78億人のうち少なくとも半数の人、約40億人が、新型コロナウイルスのワクチンを2回以上接種していることになるだろうと伝えている。しかし世界各地では、特にアフリカで、政治的な意思の欠如、医療資源の不足、あるいは単にワクチン不足のため、ワクチン接種に苦労している国がまだ多くあるのが現状である。こうした中、欧米や日本で敬遠されていたアストラゼネカ製の新型コロナワクチンが、世界におけるワクチン接種の要になっている。
アストラゼネカ社は2021年に、アメリカのファイザー社や中国のシノバック社と同じ割合で、25億回分の投与量を供給している。そして1月上旬、低・中所得国には約36億回分の投与が行われた。このうち、ほぼ半数がアストラゼネカ社製のワクチンだという。
-70℃で保存することが求められるファイザー社やモデルナ社のメッセンジャーRNAのワクチンに比べて、保存が容易なアストラゼネカ製のワクチンは、特に最貧国には原価で販売され、使わなくなった国からも寄贈されるなど、批判はあるものの、世界各国に幅広くワクチンを提供するという目的を完璧に果たしていると言える。欧州連合(EU)などは、アストラゼネカとの契約により、昨年注文された医薬品を今後数カ月間にわたり受け取り続け、ワクチンを待っている国々に再配送することになっている。
なお、インドのニュースサイト『レパブリックワールド』によると、日本も先月末に、アストラゼネカ製ワクチン70万回分をイランに追加送付することを発表している。林外務大臣は記者会見で、COVAXを通じてワクチンを届けると発表した。この追加供与で日本からイランへのワクチン供与は3600万回分となった。その大半がアストラゼネカ製のものである。さらに、林外務大臣は、日本はこれまでに世界23カ国にコロナワクチンを届けてきたとも明らかにした。
米紙『ウォールストリート・ジャーナル』電子版によると、医薬品へのアクセスを推進している健康や人権団体のコンソーシアム「ピープルズ・ワクチン・アライアンス」に助言する世界保健政策の専門家、モガ・カマルヤンニ氏は「アストラゼネカのワクチンは救世主だった」と述べている。
アストラゼネカ社は当初から、世界中の製造パートナーシップを通じて、自社のワクチンへの公平なアクセスを約束していた。当初は、今年中に30億回分を供給し、パンデミックが続く限り、利益なしで販売することを目標としていた。アストラゼネカの最高経営責任者であるパスカル・ソリオ氏は昨年11月、「私たちがもたらした影響について会社全体で非常に誇りに思っている」と語っている。
アストラゼネカは昨年、ファイザーやモデルナと比べれば微々たるものではあるものの、新型コロナウイルスのワクチンでは、第3四半期に初めて利益を上げたと発表した。昨年9月までにこのワクチンで22億ドルの収益を計上した同社は、一部の購入者には利益を生み出す価格で販売し始めているが、低所得国にはまだ原価で販売している。
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