<従軍慰安婦問題>
従軍慰安婦問題に関わる日韓両政府による合意から、1ヵ月余りが経過した。
韓国では、一部の元慰安婦と市民団体が合意に強い反対の声を上げるが、広がりは見えていないようである。韓国世論は概ね冷静で、事あるごとに日本を目の敵にするメディアも、常日頃から政府に批判的なハンギョレ新聞を除いて、いたってまともな論評を展開している。
ただ、合意に含まれる、「最終的かつ不可逆的に解決」という文言と、「少女像の移転問題」については、韓国国民の間にも不満が残るとしている。...
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<従軍慰安婦問題>
従軍慰安婦問題に関わる日韓両政府による合意から、1ヵ月余りが経過した。
韓国では、一部の元慰安婦と市民団体が合意に強い反対の声を上げるが、広がりは見えていないようである。韓国世論は概ね冷静で、事あるごとに日本を目の敵にするメディアも、常日頃から政府に批判的なハンギョレ新聞を除いて、いたってまともな論評を展開している。
ただ、合意に含まれる、「最終的かつ不可逆的に解決」という文言と、「少女像の移転問題」については、韓国国民の間にも不満が残るとしている。
しかし、日本側から言わせてもらえれば、それこそ「ちょっと待った!」である。
第一に、1965年6月に締結された「日韓基本条約」において、日本側から官民合計で8億ドル(当時の韓国の国家予算の2.3倍、現在の貨幣価値で約1兆800億円、注後記)を支援しているが、当時の政権が個人補償をないがしろにして、国の再建のための公共事業等に全て注ぎ込んでしまったのである。
そして、同条約に「韓国の日本に対する一切の請求権の完全かつ最終的な解決」条項が謳われているにも拘らず、今頃になって韓国の行政も司法も、個人宛ての補償は別などと、それこそ両国政府の合意事項を一部“ちゃぶ台返し”のようにひっくり返しているのであり、韓国メディアも事実関係をきっちり調査などせず、とにかく日本叩きに一枚乗っている有様である。
このように国家間の約束を守れない国と合意するためには、「最終的かつ不可逆的に解決」との“ダメ押し”の文言を挿入せねば、とても調印などできないであろうし、韓国側には、相手方をそうせしめたのは自らの責任転嫁の為せる業だということを、謙虚に反省して欲しいところである。
第二に、「少女像の移転問題」にしても、民間が設置したもので、韓国政府として勝手に撤去できないとしていることである。そもそも、日本大使館前の道路にかかる像を設置する“ヤクザ”まがいの脅迫行為を取り締まれず、更に、設置許可のない、言わば違法建造物を強制的にも撤去できない、韓国行政府の腰砕け、あるいは民間の責任にして、(政府)自身はほっかぶりする姿勢が何とも情けないとしか言いようがない。
韓国マスコミも含めて、ベトナム戦争時代に韓国軍兵が犯したベトナム市民虐殺、強姦のおぞましい歴史的事実から目を背け、ただ“従軍慰安婦”という弱者を良いように使って日本攻撃を繰り返す姿は、ただただ民度の低さを露呈する以外の何ものでもない。
日韓合意に異議を唱える一部日本人も含めて、韓国政府、メディア、市民団体は、今こそ本当に手を差し伸べるべき“元従軍慰安婦”の方たちのことを、真摯に思って最善を尽くすべきではないかと考える。
なお、自民党の一部から、元慰安婦支援の団体に10億円拠出するのは、少女像撤去を交換条件とすべきとの声が上がっている。
しかし、これでは約束を守らない相手方と同レベルに貶めることになりかねない。日本側が約束を履行したにも拘らず、それでも少女像が未撤去ならば、韓国はやはり約束を守らない国だと、国際社会が評価を下す絶好の証左となろうから、日本側はしっかり約束を果たすべきだと考える。
なおまた、慰安婦強制連行及び強制的徴用の疑惑問題で、故吉田清治による虚偽の証言だったことを見抜けず、その後、韓国はもとより国際社会に間違った印象を与えたと思われる、一連の朝日新聞の全16本の記事は、三十有余年経った2014年12月、第三者委員会の調査報告書を基に全て訂正されている(朝日新聞では、データベースからは削除せず、虚偽の証言に基づく記事であったと付記して保存)。主要な錯誤記事は次のとおり。
1980年3月7日朝刊見出し「韓国・朝鮮人連行;命令忠実に実行、抵抗すれば木剣」
1982年9月2日朝刊見出し「朝鮮の女性;私も連行、暴行加え無理やり」
1984年1月17日夕刊見出し「朝鮮人強制連行の現在;徴用に新郎奪われて」
1990年6月19日朝刊見出し「(従軍慰安婦の)名簿を私は焼いた、知事の命令で証拠隠滅」
1991年5月22日朝刊見出し「女たちの太平洋戦争;従軍慰安婦、木剣ふるい無理やり動員」
1992年5月24日朝刊見出し「今こそ自ら謝りたい、連行の証言者(吉田清治)、7月訪韓」
1994年1月25日朝刊見出し「政治動かした調査報道」
(注)日本から韓国への支援:「日韓基本条約」時拠出の支援金以降も、1983年特別協力金約1兆円、1997年韓国通貨危機時の支援金約7兆円、2006年ウォン高時の救済金約2兆円、2008年リーマンショック時の支援金約3兆円が日本から拠出されている。
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安倍連立政権が衆院選で圧勝し、安倍首相の再来年までの長期政権が確実になった。今年北京で開催されたAPECでは、2年5か月ぶりに日中首脳会談が行われ、両首脳はホットラインや海上連絡メカニズムの設置で合意し、その後の日中関係にこの会談がどのような影響をもたらすのかが注目されていた。しかしここにきて、中国が尖閣諸島の約300キロ北西にある浙江省の蘭芝島で、最新鋭のレーダーやヘリポートも完備する軍事拠点の整備に着手したことが中国が出した報告書から判明(共同通信)、さらには中国海警2隻が尖閣周辺海域に侵入(今年に入ってから31回目)するなど、日中首脳会談の成果があったとするには疑わしい状況になってきている。加えて来年中国は、ロシアと共同で「世界反ファシズム戦争と中国人民抗日戦争勝利70周年」の記念イベントを開催するなど、日中関係が改善するどころか、「今後中国の日本に対する強硬姿勢が強まるのではないか」との見方も出てきており、日中関係がどのような展開を見せるのかまったく不透明な状況である。各国は今後の日中関係の行方について、以下のように報じた。
12月23日付
『ブルームバーグ通信』(米国)は、「日中の係争中の島付近の島に中国が軍事拠点を構築していることがわかった」と報じ、この拠点について「(島は)釣魚島に圧倒的に近く戦略的にも重要な場所にあり、東シナ海防衛識別圏のサポートも行える。まさに中国の沿岸防衛ラインにとって主要な海軍のポイントであると同時に、中国の既存の軍事的プレゼンスをさらに強化するものだ」との中国海軍研究所の李上級研究員のコメントを紹介した。
12月23日付
『プレスTV』(英国)は、「(尖閣諸島近くに中国が)軍事施設を構築するという中国の報告書は、日中関係の緊張緩和のために、安倍晋三首相と習近平国家主席が会談を行った後に発表された」と報じ、日中首脳会談の成果について疑問視している。
12月23日付
『ハンギョレ』(韓国)は、「中国が日本との領土紛争中の尖閣諸島(釣魚島)に近い中国領海内の島に、軍事施設を拡大していることが中国の報告書から明らかになった」と報じ、「これに対し、日本も尖閣諸島周辺の戦力強化のための措置を行っている」と伝えた。
12月22日付
『中国新聞網』(中国)は、「中国海警が今年に入って釣魚島領海に入ったのは、今回を含めて33回目(昨年は50回)」と報じ、「(衆院選挙の安倍政権圧勝による)日本の右傾化が中日間の海上での対立を深めており、中国周辺で海洋紛争が激化したり、局地的海上衝突につながる危険性がある」と報じた。
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