北朝鮮の金与正党第一副部長が13日に、連絡事務所の破壊や韓国に対する軍事行動を示唆する発言をしていることに対し、韓国では14日に国家安全保障会議が開催され、北朝鮮に対する警戒レベルを引き上げた。
北朝鮮の今回の強硬な態度に対し、その真意は何処にあるのか、あるいはこの状態が続くことへの影響については様々な見解がある。
韓国の『ハンギョレ新聞』は、南北関係は益々難しい局面となっており、もしも北朝鮮がこの状況を変えなければ、国際社会の北朝鮮に対する与論は悪化し、米国の大統領選挙後の米朝対話にもマイナスの影響が出るだろうと見ている。また香港の『サウス・チャイナ・ポスト』紙は韓国の前議員の朴智元の「韓国は直ちに平壌に大統領特使を派遣するべきだ」との意見を掲載している。さらに同紙は、韓国の政界の意見として、「北朝鮮は南北の境界線付近で、軍事行動をとる“可能性は大変高い”」との見解と、ある大学教授の「北朝鮮は境界線付近の陸地あるいは海上で火蓋を切る可能性がある」との見解を紹介している。
VOAは「北朝鮮がこのような準備をしているのは、韓国に対し、経済あるいはその他の面での譲歩を引き出そうとしているからではないか」との専門家の意見を紹介している。さらにドイツでは、北朝鮮の本当の目的は米国に圧力をかけて、米国の対朝制裁を緩和させようとしているのではないかとの見解もある。
米国の『NBC』は、ホワイトハウスは北朝鮮の最近の行動に対するコメントなどはだしていないとし、さらにCIAの元担当者の「北朝鮮は秋に何らかの挑発行為を行い、大統領選挙期間中にトランプ大統領に懲罰を与えようとしているのではないか」との見方を紹介している。
専門家の意見も様々であるが、北朝鮮の次の一手はどのようなものになるだろうか。
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東京電力(TEPCO)福島第一原発の処理済み汚染水の処分方法が、海洋放出、大気放出、及び両者の併用の3ケースに絞られた。監督官庁の経済産業省の小委員会が纏めた検討案を同省が公表した。前例に倣った処分方法とされているが、地元の漁業・農業関係者らからは、風評被害や健康への影響を懸念して強い反対の声が上がっている。海外メディアも一斉に報じている。
12月24日付米
『ワシントン・ポスト』紙(
『ブルームバーグ』配信):「日本が汚染水を海洋放出することになるかも知れない理由」
TEPCOは、福島第一原発に保管している約100万立法メーター(オリンピック用プール400個分)の処理済み汚染水を太平洋に放出する計画であることが判明した。
同社は、処理済み汚染水を貯蔵するタンクを1,000基有するが、依然毎日100立法メーターの汚染水が発生していることから、2022年半ばには満杯となると予想するため、それまでに汚染水の処分方法を纏める必要が出ていた。
溶け落ちた核燃料を冷やす注水で生じる汚染水は、多核種除去設備(ALPS)で処理しても、放射性物質のトリチウム(三重水素)が取り切れずに残るが、放射性セシウム等に比べて放射線が弱く、国内外の原子力施設では、濃度等を管理して流している。
今回明らかになったのは、経済産業省が12月23日に発表した、同省の技術小委員会が検討した処理方法の纏め報告であり、それによると、海洋放出、大気放出、及び両者の併用の3ケースが最終案として挙げられた。
1.トリチウムの安全性
カナダ原子力安全委員会(2000年5月発足のカナダ連邦政府の独立組織)によると、数十億ベクレル(放射性物質が1秒間に崩壊する原子の個数(放射能)を表す単位)のトリチウムを摂取しない限り、人体に影響は出ないとする。
TEPCOがリリースした今年3月31日時点の資料によれば、処理済み汚染水のトリチウムは1リットル当たり250万ベクレルだという。
因みに、1本のバナナには15ベクレルのトリチウムが含まれ、1キログラム(2.2ポンド)のウラニウムは2,500万ベクレルのトリチウムがある。
2.トリチウムの処理方法
原子力専門家によれば、ほとんどの原発が少量のトリチウム等を河川や大洋に放出しているという。
米原子力規制委員会は、米国において、“安全が確認できた処理方法”に基づき“承認された量”のトリチウム等が放出されているが、データは全て公開されているとする。
世界的に放射線量の規制の基となっている、国際放射線防護委員会(前身が1924年に設立された、専門家の立場から放射線防護に関する勧告を行う民間の国際学術組織)の提言によれば、人体が浴びる放射線量は1年当り1ミリシーベルト(人が受ける被ばく線量の単位)以下に留めるべきだとされている。
世界原子力協会(2001年設立の、原子力発電を推進し、原子力産業を支援する世界的な業界団体)の説明では、自然環境下で人は1年当り2.4ミリシーベルトの放射線を浴びているという。
因みに、CTスキャン(コンピューター断層撮影)で浴びる放射線量は10ミリシーベルトである。
3.保管タンク追加設置の可能性
TEPCOは、隣接する鳥類保護区ぎりぎりまでの500平方メーター(5,400平方フィート)の木々を切り倒し、1000基余りの保管タンクを設置したが、これ以上土地を確保することは困難であるとしている。
4.海洋放出への反対の声
福島県の漁業関係者は、風評被害を恐れて真っ向から反対している。今現在でも、同地域の魚介類・農産物について、20余りの国が輸入禁止措置を取っており、問題が更に深刻化することを懸念している。
なお、韓国が海洋放出に懸念を表明しているが、海流の関係で福島において放出された処理水が朝鮮半島まで流れていくことは考えられない。
一方、TEPCOの川村隆会長及び原子力規制委員会前委員長の田中俊一氏は、海洋放出について理解を求めたいと強調している。
5.最終処理方法の決定
経済産業省の同小委員会から正式検討結果報告が、2020年の初めに安倍晋三政権に提出されることになるが、以降地元などの関係者の意見を聴いた上で、最終処分方法を決定することになる。
なお、国際原子力機関(IAEA、1957年設立の、原子力の平和的利用の促進及び原子力の軍事利用(核兵器開発)の防止を目的とする、国連の保護下にある自治機関)は今年9月、全ての関係者を引き込んだ上で、早急な処理方法の決定を行う必要があると主張している。
同日付フランス『AFP通信』:「日本、福島原発の汚染水を大海か大気に放出する意向」
資源エネルギー庁の高官は12月24日、『AFP通信』のインタビューに答えて、汚染水(編注;AFP通信は、“処理済み”という修飾語を付記していない)を長期間保管する案は全く不可能である旨コメントした。
また、小委員会における処理方法取り纏め会議において、3ケースについて反対する声は上がらなかったとも付言した。
IAEAは、適切に放射線量を除去するフィルターリングができれば、環境に影響を与えることなく希釈処理水を海洋放出することは可能だと表明している。
ただ、海洋放出や大気放出するとなれば、地元の漁業・農業関係者のみならず、近隣諸国から反対の声が上がることは必至である。
同日付韓国『ハンギョレ』紙:「日本、汚染水を海洋放出か大気放出する意向」
日本政府は、福島第一原発で保管されている汚染水(編注;韓国紙は“処理済み汚染水”という表現は使っていない)を、海洋放出するか大気放出するかの二つの方法に絞り込みつつある。
経済産業省傘下の専門家による小委員会が検討結果を公表したものだが、その際には海洋放出とする確率が高いというニュアンスで説明された。
同小委員会は2016年から汚染水の処理方法につき検討を重ねてきたが、地下埋設等の方法は不採用とし、世界で前例がある海洋放出か大気放出の方法を選択した。
同小委員会では、放出にどの位の期間がかかるのか明言されていないが、貯蔵された汚染水の量から判断して、少なくとも10年はかかるものとみられる。
ただ、日本国内でも海洋放出に対する反対の声は大きく、『讀賣新聞』によると、福島県のいわき市漁業協同組合長は、“海洋放出との結論は拙速すぎる”とし、“漁業の将来に大きな負担を強いる”とコメントしている。
なお、日本政府は、ALPSによって汚染水からトリチウムを除く62種類の放射線物質を除去することが可能で、放射線含有量が基準値以下に引き下げられるとして、”処理済み“との表現を用いている。
しかし、ALPSによる処理が始まった2018年9月以降のデータをみると、75万トン、汚染水全体の80%以上が依然基準値以上の放射線含有量となっている。
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