中国が歴史教科書を修正:「香港はイギリスの植民地ではなかった」
2019年の香港での民主化デモをきっかけに、中国当局は香港の公共科目である市民権思想教育を批判。公共の新たな教科書は、中国の愛国的教育に重点を置くものとなっているという。
6月16日付米
『ニューヨーク・タイムズ』:「”香港はイギリスの植民地ではなかった”と教科書に記載」:
世界の多くの学校では、香港はかつてイギリス帝国の植民地だったと教えられてきたが、香港の学生は今後、違った歴史授業を教わることとなるという。
香港の民主化運動弾圧や、イギリスから中国へ返還されるより遥か以前から、中国は一貫した歴史観を主張してきた。現在、香港は1997年7月1日の中国返還25周年を迎えようとしている。...
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6月16日付米
『ニューヨーク・タイムズ』:「”香港はイギリスの植民地ではなかった”と教科書に記載」:
世界の多くの学校では、香港はかつてイギリス帝国の植民地だったと教えられてきたが、香港の学生は今後、違った歴史授業を教わることとなるという。
香港の民主化運動弾圧や、イギリスから中国へ返還されるより遥か以前から、中国は一貫した歴史観を主張してきた。現在、香港は1997年7月1日の中国返還25周年を迎えようとしている。この流れから、香港の高校で秋から使用される4つの新規教科書で、香港がイギリスの植民地だった事実が否定されているというのだ。
この教科書は学校関係者や教育庁の専門家により精査が行われ、使用許可が下りるものとみられている。今週地元のネットニュースでは、検定済みの一部抜粋が報じられた。教科書には、中国の習主席が、愛国的国民や「香港の学生のマインドを守る」との大義が掲げられ、「次世代に、香港は中国の一部で自治権をもたないと植え付け、中国政府を支持するよう仕向け、香港を改変しようとする」政府方針が垣間見れるという。
1997年の返還条件で、中国は、香港の社会経済システムを50年間変革させないとの条件を飲んだが、これが揺らぎ2014年デモが勃発。弾圧を強化する中国共産党に対抗した2019年の民主化デモを機に、中国は反対派を処罰し、言論の自由を制限、独立系ニュース機関や民主指導者を弾圧し始めた。
教科書編集者の一人である専門家は、中国は以前からイギリス支配に疑問を持っていたと指摘する。1997年の人民日報には、「イギリスは香港を典型的な植民支配下においたが、これは香港が植民地ということを意味していない。通常、植民地というのは、外国に自治権を奪われた国を指していう。香港は中国領土の一部であるため、植民という概念は当てはまらない」とある。
中国は香港の支配権を手放していない、1997年は香港への支配権を取り戻したと認識し、イギリスの「植民的支配」があった点だけ認めている。教科書でも勿論、中国の立場を反映したものとなる。
昨年市民と社会発展と名を改めた新科目は、香港の中国返還を学習計画の一部に組み込むもので、愛国心や「揺るぎない中国の統治管轄権」や国家安全法により重点を置く内容となっている。その教師向けテキストの抜粋では、香港での共産党の立場が強調されており、「イギリスの支配は、国際法に違反するもので、香港への統治権は合法的とは言えない」、「香港は植民地ではなく、自治決定権も持たない」とある。
同付英『BBC』:「香港:新板教科書で香港はイギリスの植民地ではなかったとの記載」:
新たな改定教科書では、中国に自治権があったとの主張を強調し、香港はイギリスの植民地ではなく、「植民的支配を実施したにすぎない」と記載されている。
中国は、香港の支配権を手放したと認めず、イギリスへの割譲は1800年代の不平等なアヘン戦争条約によるものだと主張、1842年からイギリスの支配下にあっただけで、中国の自治領だとの認識を持っている。一方、イギリスは150年の支配の後に1997年、香港を中国へ返還。イギリスは香港について、その支配下にあり、植民地でもあり独立自治領でもある港町香港は、世界有数の金融中心地となったと認めている。
最近の動きは、香港は一貫して中国の一部だったが、イギリスの支配が及んだ時期もあるとの認識で、
中国のアイデンティティを香港の学生に植え付けようとするもの。
地元メディアの報道によると、教科書では、「植民地と植民的支配の違い」の説明として、「国が外地の領土を植民地と呼ぶには、統治体制に加え、統治主権も持ち合わせていなければならない」と記載されているという。香港の場合、イギリスは「植民的支配を実施していたにすぎず、香港はイギリスの植民地ではない」とされている。
この新教科書は香港の「市民思想や法と愛国心」を中心とした講義向けの教科書で、クリティカルシンキングや市民権思想などの教養科目に置き換わる教科だという。中国当局は、2019年の民主化デモの際、このような教育が若者を過激化させ、間違った思考を植え付けたとし、直接この教科を批判していた。中国当局の承認待ちとされるこの新たな教科書では、民主化デモは治安維持への脅威だとする中国側の解釈を反映したものとなっているという。
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トランプ前大統領元側近の暴露本;トランプ自身からの非難で売り上げ落ち込み【米メディア】
米社会に分断をもたらしたトランプ前大統領は、元側近の中でも各々発刊する「回想録」の中で賛否が分かれている。そしてこの程、2016年大統領選時に選挙対策本部長を務め、大統領顧問であった元側近の「回想録」が、最初のうちはそこそこ売り上げられていたものの、記載内容が気に入らないトランプからの攻撃を受けて俄かに売り上げを落としている。
6月5日付
『ザ・ラップ』オンラインニュース(2009年設立)は、「トランプ前大統領元側近のケリーアン・コンウェイ発刊の回想録、トランプから非難を浴びて売り上げ落ち込み」と題して、2016年大統領選時の選挙対策本部長を務めたコンウェイ氏が発刊した回想録「それで決まり」が、記載内容についてトランプから非難されたことから、売り上げを落としていると報じている。
ケリーアン・コンウェイ氏(55歳)は、2016年大統領選時のトランプの選挙対策本部長で、後に大統領顧問も務めた人物である。...
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6月5日付
『ザ・ラップ』オンラインニュース(2009年設立)は、「トランプ前大統領元側近のケリーアン・コンウェイ発刊の回想録、トランプから非難を浴びて売り上げ落ち込み」と題して、2016年大統領選時の選挙対策本部長を務めたコンウェイ氏が発刊した回想録「それで決まり」が、記載内容についてトランプから非難されたことから、売り上げを落としていると報じている。
ケリーアン・コンウェイ氏(55歳)は、2016年大統領選時のトランプの選挙対策本部長で、後に大統領顧問も務めた人物である。
彼女が5月24日に発刊した回想録「それで決まり」は、『ニューヨーク・タイムズ』紙が当初ベストセラー本一覧に掲載する程で、これまでに2万5千部売れている。
しかし、他のトランプ元側近等の暴露本に比べて、大した数字ではない。
『ジ・インテリジェンサー』紙(1804年創刊のペンシルベニア州地方紙)報道どおり、トランプ前大統領の姪に当たるメアリー・トランプ氏(57歳)が暴露本「過大で全く不十分(副題;世界で最も危険な男)」を2020年7月に発刊した際には、1日で95万部も売り上げた。
また、卓越したジャーナリストのボブ・ウッドワード氏(79歳、『ワシントン・ポスト』紙名誉編集委員、ウォーター事件報道でピューリッツァー賞受賞)が2020年に著した『憤怒』は、発売1週間で60万部を突破している。
しかし、コンウェイ氏の著書には、2016年大統領選時にトランプが投票数週間前に撤退を考えたとの逸話が掲載されていることから、トランプ自身から猛烈に非難された。
彼女は、発刊前の抜粋の中で、悪名高い「アクセス・ハリウッド・テープ」(注後記)報道がなされた際、選挙から撤退しようとしたトランプを説得したと言及していた。
これに対して、トランプの報道官リズ・ハリントン氏が『デイリィ・ビースト』オンラインニュース(2008年設立のリベラル系メディア)のインタビューに答えて、“コンウェイの回想録は「全くのでたらめ」”とコメントした。
また、トランプ自身も5月24日、彼が立ち上げたソーシャルメディア・プラットフォーム『トゥルース・ソーシャル』(2021年設立)に、“コンウェイは、自分が選挙に負けると思った等一切発言したことはなかった”とした上で、“もしそうだったとしたら、とっくに彼女を馘首していた”と投稿した。
更にトランプは、“彼女のクレイジーな夫と同様、ばかげている”として非難した。
コンウェイ氏の夫はジョージ・コンウェイ三世氏(58歳、弁護士・保守系政治活動家)で、トランプ再選阻止運動「リンカーン・プロジェクト」の共同創設者となっている。
なお、コンウェイ氏の回想録は、トランプの元側近クリス・クリスティ氏(59歳、元ニュージャージー州知事)の著作物(発刊1週間で3千部以下)や、メーガン・マケイン氏(37歳、作家・政治評論家、故ジョン・マケイン上院議員の長女)の著書「不快な共和党員」(発刊数日で僅か244部)より遥かに売れてはいる。
(注)アクセス・ハリウッド・テープ:米国大統領選挙の1ヵ月前の2016年10月、『ワシントン・ポスト』紙が報道した、当時の大統領候補ドナルド・トランプとテレビ司会者のビリー・ブッシュが2005年に「女性に関する非常にみだらな会話」をしたことについての証拠ビデオに関わる記事。
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