既報どおり、習近平(シー・チンピン)国家主席は、米中貿易摩擦問題では、ドナルド・トランプ大統領のペースで一方的に押し切られそうになっていて、苦境に立たされているとみられる。それが証拠に、先週、7年振りに日本の首相として訪中した安倍晋三首相を熱烈歓迎し、これまでの安倍批判を引込めて、経済連携で日中急接近を演じて米国を牽制しようと躍起になっている。しかし、南シナ海領有権については、かつて同主席が“領土問題は1ミリたりとも妥協しない”と宣言したとおり、米軍艦による度重なる挑発行為(中国主権の島嶼や人工島への無許可異常接近)に対して、戦争も辞さない覚悟で臨むよう軍関係者に指示している。
10月30日付
『Foxニュース』:「習近平国家主席、南シナ海管轄の軍事顧問に対して“戦争に備える”よう指示」
『ニュージーランド・ヘラルド』紙は10月26日、習近平国家主席が10月25日に中国人民解放軍(PLA)南部戦区(STC、注後記)を訪問した際、南シナ海はもとより台湾についても、領土死守のために戦争も辞さない覚悟で臨むよう訓示したという。
中国国営『中央テレビ』によると、習国家主席は、任務の強化を図る必要があり、あらゆる場合を想定して有事に備えるよう指示したとされる。...
全部読む
10月30日付
『Foxニュース』:「習近平国家主席、南シナ海管轄の軍事顧問に対して“戦争に備える”よう指示」
『ニュージーランド・ヘラルド』紙は10月26日、習近平国家主席が10月25日に中国人民解放軍(PLA)南部戦区(STC、注後記)を訪問した際、南シナ海はもとより台湾についても、領土死守のために戦争も辞さない覚悟で臨むよう訓示したという。
中国国営『中央テレビ』によると、習国家主席は、任務の強化を図る必要があり、あらゆる場合を想定して有事に備えるよう指示したとされる。
習氏の発言の前日、魏鳳和(ウェイ・フォンホー)国防部長(国防相に相当)が、領土については“1片たりとも”譲歩しないし、台湾独立の動きは全く容認できないと宣言していた。
一方、米海軍のジョン・リチャードソン司令官は10月29日、領有権問題のある海域には今後も監視航行を続けるとし、“違法な海洋進出”は決して許さないことを誇示していくと語った。
更に同司令官は、米国の立場を示すため“航行の自由作戦(FONO)”を世界各地で十数回実施しているが、南シナ海においても同様にFONOを継続するとも付言した。
なお、同司令官のコメントは、直前に米軍艦が南シナ海人工島周辺海域をFONOに基づく航海をしていた際、中国海軍の駆逐艦が異常接近するという事態が発生したことから、敢えて表明されたものとみられる。
同日付ロシア『RT(ロシア・トゥデイ)ニュース』:「習国家主席、米海軍の脅威が激しくなる以上、戦闘準備を怠らないよう訓示」
習国家主席は広東省のSTCを訪問した際、米海軍の軍艦による主権を脅かす行為がエスカレートしてきている以上、実戦準備等に心掛けるよう訓示した。
習氏のSTC訪問は10月25日であったが、中国メディアが同氏の発言を報じたのは10月26日になってからであった。
なお、STCの管轄区域は、南シナ海及び台湾周辺である。
(注)STC:2016年2月、中国人民解放軍戦区成立大会において発足した五つの大戦区のひとつで、旧広州軍区及び香港・マカオ特別行政区を管轄。他に東部(旧南京軍区)・西部(旧成都+蘭州軍区)・北部(旧瀋陽軍区+内モンゴル自治区+山東省)・中部(旧北京+済南軍区がある。習主席は、五つの戦区の司令官らに軍旗を授与する際、「各戦区には平和を維持し、戦争に勝つ使命がある」と訓示。STCの任務は、南シナ海やシーレーン(有事の際に確保すべき海上交通路)の安全確保に備えることとなっている。
閉じる
既報どおり、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相(38歳、労働党々首)は今年6月、在任中の首相として世界で初めて6週間の産休を取得した。元々、同国では二十年程前に2代続いて女性首相が誕生していたが、アーダーン首相は同国政治史150年間において最年少の37歳3ヵ月で首相に就任しており、初めから“女性の活躍”を体現してきていた。そしてこの程同首相は、国連73年の歴史上初めて、生後3ヵ月の赤ちゃんを連れて国連総会に出席している。
9月25日付米
『Foxニュース』(
『AP通信』配信):「ニュージーランドの“ファースト・ベイビー”国連史上初めて総会デビュー」
9月24日にニューヨークの国連本部で開催された第73回国連総会において、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相(2017年10月就任の第40代首相)の女児である生後3ヵ月の“ファースト・ベイビー(ファースト・レイディに引っ掛けたもの)”が、国連史上最年少の出席者としてデビューした。
国連総会の“ネルソン・マンデラ平和サミット(注1後記)”に同首相とともに出席したもので、同首相が登壇している間、同首相のパートナーで同女児の父親であるクラーク・ゲイフォード氏に抱かれて、母親の演説に聞き入っていた。
同女児の名前は、ニーブ・テアロハ・アーダーン・ゲイフォード(ニーブは輝く、テアロハは愛の意)で、ゲイフォード氏はツイッター上に、ニーブ・テアロハちゃん用の国連発行許可証(写真入り)を掲載した。
アーダーン首相は、同国史上最年少の首相で、また、首相在任中に世界で初めて6週間の産休を取得している。
同首相は『ニュージーランド・ヘラルド』紙のインタビューに答えて、女児への授乳が必要なため、ニューヨーク訪問はもとより、国連総会にも帯同せねばならなかったと説明している。
国連のステファン・デュジャリック報道官は『ロイター通信』の取材に対して、世界中で女性首脳は僅か5%でしかないので、女性リーダーがもっと増えるよう、同首相の行動を称賛したいと語った。
また、米国の前国連大使のサマンサ・パワー氏も、デュジャリック報道官のコメントをツイッターで支持を表明した。
なお、アーダーン首相就任の最初の1年間で、最低賃金の引き上げ、低所得層への支援、外国人によるニュージーランド国内住居購入禁止、2050年までに“カーボン・ニュートラル(注2後記)”達成による気候変動対策実施等、重要政策を実行している。
そして、この1年間のニュージーランドの経済成長率は2.7%と、依然好調を維持している。
同日付英『ジ・インディペンデント』紙:「ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相、世界で初めて赤ちゃんを国連総会に帯同」
アーダーン首相のパートナーでニーブ・テアロハちゃんの父親でもあるゲイフォード氏は、ツイッターのフォロワーから女児の国連入館パスが見たいというのでツイッターに掲載したとつぶやいた。
更に同氏は、会議場に入ってきた日本代表団の人たちを驚かせたかったとし、そして、(自身の女児の国連総会出席は)21世紀の偉大な出来事に違いない、とツイートした。
一方、9月26日付ニュージーランド『スタッフ・ウェブサイトニュース』:「アーダーン首相、トランプ大統領のスピーチに対する失笑には加わらなかったと発言」
国連総会における一般演説で、ドナルド・トランプ大統領が、“米国第一主義”を含めた自身の推し進める政策は、米国のどの大統領よりも素晴らしい成果をもたらしていると、自画自賛するスピーチを行った。
これに対して、各国代表団の中には失笑を漏らす人たちがいたが、アーダーン首相は、失笑に加わることはしなかったと語った。
同首相は、同大統領の演説内容は就任以来繰り返してきたこと、また、ニュージーランドが拠り所としてきた、多国間主義を基本とする国連の方針と明らかに異なる同大統領の政策について、相容れないものだとコメントした。
(注1)ネルソン・マンデラ平和サミット:南アフリカの故ネルソン・マンデラ大統領の平和貢献を尊重し、昨年12月開催の国連総会で命名された、国連全加盟国が出席しての世界平和協議の総会。
(注2)カーボン・ニュートラル:ライフサイクルの中で、二酸化炭素の排出と吸収がプラスマイナスゼロのこと。例えば、化石燃料の代わりにバイオマスエネルギーを利用することで、二酸化炭素の発生と固定を平衡し、地球上の二酸化炭素を一定量に保つことができるとする考え方。また、二酸化炭素排出量を削減するための植林や自然エネルギーの導入などは、人間活動による二酸化炭素の排出量を相殺できることもカーボン・ニュートラルと呼ぶことがある。
閉じる