対ロシア制裁の首都モスクワの市民生活への影響(2022/03/04)
ウクライナ侵攻に対する欧米の制裁はもちろん、ロシアの対抗措置によって市民の生活が苦しくなっている。国外退避を計画している市民も出てきている。
仏誌
『レゼコー』によると、欧米の制裁発動でシェル、BP、エクソンを筆頭に外国企業がロシアから撤退する中、ロシア当局はルーブル下落を抑えるための金利急騰、物価下落を止めるためのモスクワ証券取引所の閉鎖、1万ドル以上のロシア出国禁止など、資金流出を止めようとしている。ペスコフ報道官は「ロシアは立ち直る」と断言したものの、ロシア経済が「深刻な打撃」を受けていることを認めた。
ロシアで暮らす市民はどうとらえているのか。...
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仏誌
『レゼコー』によると、欧米の制裁発動でシェル、BP、エクソンを筆頭に外国企業がロシアから撤退する中、ロシア当局はルーブル下落を抑えるための金利急騰、物価下落を止めるためのモスクワ証券取引所の閉鎖、1万ドル以上のロシア出国禁止など、資金流出を止めようとしている。ペスコフ報道官は「ロシアは立ち直る」と断言したものの、ロシア経済が「深刻な打撃」を受けていることを認めた。
ロシアで暮らす市民はどうとらえているのか。首都モスクワの銀行の前に並ぶドミトリさんは、「欧米の制裁とロシアの対抗措置は、私たちが懲罰的な措置に囲まれて暮らしていることを意味する」と嘆いている。ドミトリさんは、40歳の民間企業の重役であり、家族を養う父親でもある。貯金を取り崩し、金利上昇後、ローンの再交渉を行ったという。「このような連鎖は、私たちを貧しくしてしまう恐れがある。」と述べ、「航空封鎖で、国外に出られなくなった。封鎖は、文化やメディアにも及んでいる。外国の音楽家や芸術家がモスクワに来ることはもうないだろう。最後の独立系ニュースサイトが閉鎖されたことで、私たちの、(国営)ニュースに対する批判的な目が弱まるだろう。」と指摘している。
このように、内向きになる国に対して、モスクワのリベラル層の間では、移住願望が高まっている。プーチンとは正反対のリベラルなロシアを代表するようなアンドレイさんは、モスクワの欧州系企業で働いており、「当局やテレビ局は私たちを欺いている。」と述べている。アンドレイさんは、「今こそ国を出る時」だと考えているが、ビザがないため、ヨーロッパではなくグルジアへ退避することを願っている。モスクワの駐在員社会でも、同様に出国する動きが活発化している。
ただし、大統領に批判的な、亡命する覚悟のある国民の割合は、少数派だという。「この新たな経済危機が政権の政治的安定に与える影響はまだ不透明だ」とモスクワに住む欧州の専門家は述べている。「ソ連の過去を見ると、指導者が問題であることを理解したとき、その国のエリートたちは問題を解決することができた」とコメントしている。
米『ナショナル・パブリック・ラジオ』は、欧州連合と米国による制裁措置が相次ぎ、外国企業や投資家が国外に流出したことで、ロシアは更なる孤立と経済的制限に直面している、と伝えている。数日前から、ロシア各地のATM付近には、電子バンキングの崩壊を懸念して、外貨とルーブルの現金を引き出そうとする人々が長い列を作っている。28日のモスクワ証券取引所の暴落で、多くの人の貯蓄が目減りし、ルーブルの価値は1セント以下という記録的な低さまで急落した。主要金利は2倍以上の20%に引き上げられ、モスクワの銀行やATMではユーロやドルの払い出しが停止している。ロシア政府は、すべてのロシア人が海外に外貨を送金することを禁止し、輸出業者に対して外貨収入の80%をルーブルに交換するよう命じた。ロシアで外国企業に勤める多くの人が給与を受け取れるかどうか不安に思っており、同様の不安は、ロシア国内から支払いを受けるロシア国外の人々にも広がっているという。
ロシア当局は、政府がウクライナ侵攻を「特別作戦」と呼び続けることへの反対表明も取り締まっているという。ウクライナ危機に関する報道で「戦争」という言葉を使ったロシアの報道機関は、罰金や封鎖の可能性に直面しており、反戦デモでは7000人近くが逮捕されている。
ソーシャルメディア上では、電子機器や家電製品など、一部の製品の値上げが注目されている。過去の制裁を経て、食料を中心に国内生産を拡大してきたものの、技術や薬などは依然として輸入品に頼っているためだ。将来の物価が不透明なため、人々は買いだめに走っており、ある電気店の店員は、「ここ数日、私たちにとってはクリスマスのようなものだ」と語っている。ロシア国営通信社タスによると、ロシア最大のスーパーマーケットチェーン数社は、乳製品、パン、砂糖、一部の野菜について、値上げ幅を5%以内に抑えることに合意したという。
なお、ほぼすべてのヨーロッパ諸国とカナダがロシア便の飛行を禁止したため、何万人ものロシア人観光客が海外に取り残されている。ロシアの旅行会社によると、国外にいる観光客の数は15万人以上になる可能性があり、そのうち約2万7000人は航空便の運航禁止で直接影響を受けた地域にいるという。
こうした中、公式の世論調査によると、プーチンの人気は高まる一方で、1週間で信頼度は60%から71%に上昇した。
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東京オリンピック、反対していたはずの日本人が熱中し始めていると欧米メディア報道(2021/08/03)
1年遅れで開催された夏季オリンピック。開催前は、日本の世論調査では圧倒的に開催反対が多かった。海外から何万人もの人々がオリンピックに参加することで、コロナ感染者が急増し、死亡者が増えることへの恐れが主な理由であった。今でも時折、小規模な抗議活動が行われている。しかし、オリンピックが始まり、日本チームが活躍している今、日本の人々は再びオリンピックを受け入れ始めていると欧米メディアが報じている。
米
『ナショナル・パブリック・ラジオ』は、東京の人々は新型コロナウィルスの感染拡大に警戒しつつも、オリンピックに夢中になり始めていると伝えている。
渋谷交差点の道行く人々にインタビューを行うと、若者の多くが感染防止のための規制で直接観戦することができないにもかかわらず、日本選手の活躍に興奮していると語るという。
ある大学生は、家族と一緒にテレビ観戦を楽しんでいる反面、サッカー決勝戦のチケットを持っていたため、生で観戦したかったと語っている。...
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米
『ナショナル・パブリック・ラジオ』は、東京の人々は新型コロナウィルスの感染拡大に警戒しつつも、オリンピックに夢中になり始めていると伝えている。
渋谷交差点の道行く人々にインタビューを行うと、若者の多くが感染防止のための規制で直接観戦することができないにもかかわらず、日本選手の活躍に興奮していると語るという。
ある大学生は、家族と一緒にテレビ観戦を楽しんでいる反面、サッカー決勝戦のチケットを持っていたため、生で観戦したかったと語っている。また、多くの日本人アスリートがメダルを獲得したことで、日本人がこの大会に対する見方が変わってきたと述べている。
仏『BFMTV』は、レストランでの観戦を楽しんでいる若い数名の男女のグループを紹介している。彼らは、オリンピック開催前は東京大会の開催に真っ向から反対していたものの、オリンピックが始まり、日本のアスリート達の活躍ぶりを見るうちに、心が変わったと話している。今ではオリンピックに夢中になっており、一人は、様々な競技を毎日2時間から多い時は6時間観戦していると語った。
東京オリンピックオフィシャルショップでも、閑散としていた7月とは対照的に、開催直後から連日多くの人が訪れるようになったという。品薄または完売したグッズも出てきている状態で、一番人気は日本の公式ユニフォームだという。
最新の世論調査では、依然として37%が「オリンピックに反対」と答えているものの、この数字は1週間前より半減している。
米『USAトゥデイ』は、日本の国民が反対する中スタートした東京大会だが、開催後の柔道をはじめとした日本人アスリート達のメダルラッシュのおかげで、国民の受け止め方が一気に変わったと伝えている。
国際オリンピック委員会(IOC)マーク・アダムス報道官は、7月29日、「日本のツイッターでは、ポジティブな話題がネガティブな話題を上回っている。これはあまり科学的な判断方法ではないと思うが、明らかに日本が15個の金メダルを獲得したことは大きな効果があると思う」と語った。アダムス氏は、「通常のオリンピックでは、大会が進むにつれて、特に今回のように開催国が好調になると、必ず支持が持ち直してくる。今回は効果がさらに大きかったのだと思う」と述べている。
オリンピック開催前の世論調査では、日本国民の80%が東京大会の開催に反対していた。
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