トルコのエルドアン大統領;米国が最新鋭戦闘機を売ってくれないならロシア製に乗り換えると脅し【米・英国メディア】
トルコが今年7月、米国の懸念表明を無視して、ロシア製ミサイル防衛システムS-400を導入した。北大西洋条約機構(NATO)の一員であるトルコが、ロシア製武器導入を強行したことから、米国は機密漏洩等を問題視して、当初決まっていた最新鋭ステルス戦闘機F-35のトルコ向け提供を中止した。これに怒ったレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は今週、米国が約束を守らないならば、ロシアとの軍事提携強化に走るだけだと米国側を脅す発言をした。なお、同大統領は来週、ドナルド・トランプ大統領と首脳会談を持つ予定で、会談前に相手を脅すというトランプ大統領のお株を奪った形となっている。
11月7日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「エルドアン大統領、米国が戦闘機提供を拒むならロシアとの軍事提携を強化するまでと脅し」
レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は11月5日、米国が当初の約束どおり、最新鋭ステルス戦闘機F-35を提供しないなら、トルコとしてはロシアとの軍事提携を強化することになると米国側を脅す発言をした。
同大統領は、ロシア製ミサイル防衛システムS-400導入決定について誰からも許可を求める必要はなく、また仮に(米国製に代わって)ロシア製最新鋭戦闘機Su-35を購入するとしても、トルコ自身の判断で行う、とも言及した。...
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11月7日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「エルドアン大統領、米国が戦闘機提供を拒むならロシアとの軍事提携を強化するまでと脅し」
レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は11月5日、米国が当初の約束どおり、最新鋭ステルス戦闘機F-35を提供しないなら、トルコとしてはロシアとの軍事提携を強化することになると米国側を脅す発言をした。
同大統領は、ロシア製ミサイル防衛システムS-400導入決定について誰からも許可を求める必要はなく、また仮に(米国製に代わって)ロシア製最新鋭戦闘機Su-35を購入するとしても、トルコ自身の判断で行う、とも言及した。
米国は、NATOの一員であるトルコがロシア製S-400を導入することで、NATOの装備システムが危険に曝されることとなるばかりか、F-35の最新技術の(ロシア側への)機密漏洩のリスクも高まるとして、当初の契約(F-35を116機提供)を差し止めている。
政権に近いトルコメディアの『デイリィ・サバ』紙は10月、トルコ政府がロシア製戦闘機を36機購入すべく契約交渉を進めていると報じていた。
しかし、政治評論家は、ロシア側との交渉は進展しておらず、11月5日のエルドアン大統領のコメントは、来週に控えるドナルド・トランプ大統領との首脳会談に向けての交渉戦術の一環だとコメントしている。
なお、トランプ大統領の求めに応じて、エルドアン大統領は11月13日、ワシントン特別区での首脳会談に臨む予定である。
ただ、同大統領としては、米国首脳とシリア問題や、米議会による対トルコ制裁政策について協議したいと希望しているが、トランプ大統領がS-400ミサイル防衛システムの導入問題等に執着するであろうことに辟易している模様である。
11月6日付英国『ミドル・イースト・アイ(中東専門ニュース)』オンラインニュース:「エルドアン大統領、トランプ大統領と電話会談の後、訪米しての首脳会談を応諾」
エルドアン大統領事務所は11月6日、同大統領が訪米してホワイトハウスで11月13日、トランプ大統領と首脳会談を持つことを承諾したと発表した。
トルコ政府高官は当初、米議会がトルコ軍のシリア北東部への侵攻や、ロシア製ミサイル防衛システムS-400の導入を非難して、対トルコ制裁決議を行おうとしていることへの反発から、同大統領の訪米は延期される見込みと表明していた。
しかし、トランプ大統領が11月6日晩、エルドアン大統領と電話会談をして、来週米国で首脳会談を持つことを確認したとツイートしている。
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米・英・ロシア・トルコメディア;ロシアの駐トルコ大使殺害事件
2015年11月に発生した、トルコ軍機によるロシア軍機撃墜事件を機に、ロシアとトルコの国交は断絶したが、2016年6月、エルドアン大統領がプーチン大統領に撃墜事件の謝罪をしたことから、両大統領は二国間関係を正常化することで合意した。そして、今年7月のエルドアン大統領暗殺計画を含むクーデターが、プーチン大統領からの秘密情報提供によって未然に防げたことから、両国は以前の蜜月関係に戻るものと期待されていた。しかし、今度はトルコ警察官によるロシア大使の殺害事件が発生してしまい、またしても両国間関係に影響が出る恐れが取沙汰されている。
12月19日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「在トルコのロシア大使が銃殺」
「●ロシアの駐トルコ大使のアンドレイ・カルロフ氏(62歳)は12月19日、首都アンカラ市街の写真展覧会での演説中に射殺。
●犯人は22歳のトルコ警官のメブルット・メルト・アルティンタスで、警備警官によってその場で射殺。
●目撃者によると、犯人はアレッポやシリアを忘れるな、と叫んでいた由。
●ロシアが後ろ盾となっているアサド政権によって、シリアの主要都市アレッポが、トルコや米国が支援する反体制派が打撃を受けてほぼ全域が制圧されたことによる報復との見方。...
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12月19日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「在トルコのロシア大使が銃殺」
「●ロシアの駐トルコ大使のアンドレイ・カルロフ氏(62歳)は12月19日、首都アンカラ市街の写真展覧会での演説中に射殺。
●犯人は22歳のトルコ警官のメブルット・メルト・アルティンタスで、警備警官によってその場で射殺。
●目撃者によると、犯人はアレッポやシリアを忘れるな、と叫んでいた由。
●ロシアが後ろ盾となっているアサド政権によって、シリアの主要都市アレッポが、トルコや米国が支援する反体制派が打撃を受けてほぼ全域が制圧されたことによる報復との見方。
●ウラジミール・プーチン大統領は、この事件は明らかにテロ行為で、ロシア・トルコ関係やシリア正常化に敵対するものだと激しく非難。
●米国や国連も同様に非難声明。」
12月20日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「ロシア大使の射殺事件でロシア・トルコ関係への影響は?」
「●ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は、ロシアとロシア外交にとって悲劇の日であるとし、カルロフ大使がロシア・トルコ関係のために全力を挙げていたことを称え、ロシアのみならず世界にとっての損失だとコメント。
●米国務省のジョン・ケリー長官も、世界の外交を危うくする卑劣な行為だと非難。
●ロシア政府は、この事件によってロシア・トルコ関係が再び冷え込むことにはならないと発表。
●英国の前駐ロシア大使だったトニー・ブレントン氏は、事件発生後すぐ様、タイイップ・エルドアン大統領がプーチン大統領に事情説明の電話を入れたことや、犯人がイスラム過激派のヌスラ戦線(シリア、レバノンのアル・カイーダ関連の反政府組織)関係者か支援者とみられることから、この事件によって両国関係に大きな打撃を与えることはないだろうとコメント。
●なお、ロシア、トルコ、イランの外相が12月20日、モスクワでシリア問題を協議する予定。」
12月19日付ロシア
『RT(ロシア・トゥデイ)テレビニュース』:「プーチン氏、カルロフ大使を“テロに敢然と立ち向かった”外交官と称賛」
「●カルロフ大使の射殺事件に関し、プーチン大統領は12月19日、同大使を個人的にも良く知っており、優しい人であって、トルコやその他の任地において厳しい外交問題についてしっかり対応してくれた優秀な外交官だったと称賛。
●同大使は、1979~1991年の間、駐北朝鮮のソ連外交官として勤務し、2001~2006年にはロシア特命全権大使として再度北朝鮮に駐在し、そして2013年より駐トルコ大使に就任。」
12月20日付トルコ
『デイリィ・サバ』紙:「プーチン氏、ロシア大使殺害はロシア・トルコ関係を妨害しようとする挑発行為だと非難」
「●エルドアン大統領はトルコテレビにビデオメッセージを寄せて、この事件はロシア・トルコ関係正常化プロセスを妨害しようとする行為であるが、両国政府はこれによって影響を受けることはない旨確認していると表明。
●今回の事件は、12月20日にモスクワで開催予定の、トルコのチャブシオール外相、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相、イランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外相によるシリア問題協議会合の前日に発生したもの。」
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