米メディア;菅新首相にとって、安倍前首相の政治遺産”インド太平洋戦略”具現化のためインドネシアとの連携強化が大事と論評(2020/09/23)
9月半ばに就任した菅義偉新首相(71歳)は、基本的に安倍晋三前首相(66歳)の政策を踏襲するとしている。そこで、ある米メディアは、安倍氏が政治遺産とした“自由で開かれたインド太平洋戦略構想(FOIP)”を米国も追随しようとしている以上、場合によって中国と対峙していく上でも肝要となる、東南アジア諸国連合(ASEAN)との関係、その中でも特にインドネシアとの連携強化が大事となると論評している。
9月22日付
『ザ・ディプロマット』オンラインニュース:「安倍首相後任、インドネシアとの連携強化の絶好の機会」
安倍晋三前首相を引き継いで、菅義偉前官房長官が9月17日、後任首相に就任した。
新首相は就任会見で、基本的に安倍氏の政策を継承すると表明している。
すなわち、外交について言えば、アジア諸国との連携強化、日米関係の継承・強化、そして必要に応じて中国と対峙する姿勢である。...
全部読む
9月22日付
『ザ・ディプロマット』オンラインニュース:「安倍首相後任、インドネシアとの連携強化の絶好の機会」
安倍晋三前首相を引き継いで、菅義偉前官房長官が9月17日、後任首相に就任した。
新首相は就任会見で、基本的に安倍氏の政策を継承すると表明している。
すなわち、外交について言えば、アジア諸国との連携強化、日米関係の継承・強化、そして必要に応じて中国と対峙する姿勢である。
そして、具体的施策としては、安倍前首相の政治的遺産と呼ぶべきFOIPの推進である。
これを具現化する上で、インドやベトナム等アジア主要国との戦略すり合わせが必要となるが、その中で最も重要なのはインドネシアとの連携強化である。
日本とインドネシアの、これまで及び今後の関係が如何に重要であるかについて、以下に述べる。
(1) 経済
・インドネシアはかねてより、日本からの投資受け入れに積極的であり、結果、2019年上半期の実績では、直接投資総額(FDI、注後記)がシンガポールに次いで2位となり、中国を上回っている。
・最近になって、インドネシア政府から日本側に対して、5年前に中国企業に発注してしまったジャカルタ・バンドン高速度鉄道建設事業について、再度の参画の検討要請があった。これは、当初の建設工事期間・総工費通りに進められない中国企業との契約を破棄しようとする意思表示に他ならない。
(2) 国防
・2016年に日本・インドネシア海事フォーラム立ち上げに合意し、両国間の海事全般の協力関係を確認している。
・ここ数年、南シナ海における中国の一方的な海洋進出に日本としても公然と異議を申し立てているが、インドネシアも、同海域南端のナトゥナ諸島周辺への中国漁船・海警艇の侵入に業を煮やしており、日本の支援に期待している。
(3) COVID-19
・日本は今年7月、COVID-19対策支援(景気対策含め)の一環で、インドネシアに対し、20億円の供与に加えて500億円を融資することを決定している。
・一方、ジョコ・ウィドド大統領(59歳)も直近で、COVID-19から派生した問題で、中国生産拠点を見直そうとしている日本企業を積極的にインドネシアに誘致するよう指示を出している。
(4) インドネシア通の閣僚留任
・麻生太郎副総理兼財務相(80歳)は2019年12月、二国間貿易・直接投資のための現地通貨決済を促進するための協力枠組みを設立することを目論んだ基本覚書を締結した。この枠組みは2020年8月に設立されており、両国間経済関係が益々活発化することになると期待される。
・茂木敏充外相(64歳)は、COVID-19感染流行深刻化前にインドネシアを訪問し、インフラ、人的資源開発、海事協力、FOIP推進等のための両国間パートナーシップにつき合意した。更に、今年8月下旬、COVID-19問題で中断を余儀なくされていたFOIP推進に関わる協議のため、インドネシアを含めたASEAN主要国を歴訪している。
・梶山弘志経済産業相(64歳)は今年7月、ルフット・パンジャイタン海事・投資担当調整相(72歳)とのテレビ会議を通じて、インドネシアが輸出用自動車生産集約拠点にしようとしているバタン工業団地(ジャワ島中部)への日本企業の参加について積極的に協議した。
以上みてきたとおり、菅新首相がアジア外交を推進していく上で、場合によって中国と対峙することを考えると、ASEANとの連携が重要で、その中でも特にインドネシアとの関係強化が必須であり、かつそれを進めるのに絶好の機会が訪れていると言えよう。
(注)FDI:インドネシア投資協調委員会データによると、1位シンガポール34億ドル(5,348事業)、2位日本24億ドル(3,708事業)、3位中国23億ドル(1,518事業)、4位香港13億ドル(1,068事業)、5位マレーシア10億ドル(1,432事業)・・・、総額282億ドルと前年同期比+9.4%となっている。
閉じる
インドとベトナム;各々国境紛争及び南シナ海領有権問題で対峙する中国に対抗して共同戦線強化【米・ベトナムメディア】(2020/08/28)
既報どおり、インドは6月中旬にヒマラヤ山脈における中国軍との国境衝突以来、対中国強硬路線を突き進みつつある。一方、ベトナムも、南シナ海西沙(パラセル)諸島近海で同国漁船を沈められたり、直近でも同諸島の中国実効支配の島に中国軍が爆撃機を配備したりしてきていることで、中国対峙の機運が高まっている。そうした両国が、大国中国に対抗していくべく共同戦線強化に励んでいる。
8月28日付米
『ディプロマット』オンラインニュース:「インドとベトナム、中国に対抗すべく共同戦線強化」
今週(8月24日の週)初め、インドとベトナムは第17回貿易・経済・科学・先端技術相互協力会議をオンライン形式で開催した。
インド側はスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相(65歳)が、ベトナム側はファム・ビン・ミン副首相兼外相(61歳)が共同議長を務めた。
同会議においてジャイシャンカル外相は、ベトナムが新型コロナウィルス感染流行問題に取り組むに当たり、東南アジア諸国連合(ASEAN)をリードしたことを高く評価した。...
全部読む
8月28日付米
『ディプロマット』オンラインニュース:「インドとベトナム、中国に対抗すべく共同戦線強化」
今週(8月24日の週)初め、インドとベトナムは第17回貿易・経済・科学・先端技術相互協力会議をオンライン形式で開催した。
インド側はスブラマニヤム・ジャイシャンカル外相(65歳)が、ベトナム側はファム・ビン・ミン副首相兼外相(61歳)が共同議長を務めた。
同会議においてジャイシャンカル外相は、ベトナムが新型コロナウィルス感染流行問題に取り組むに当たり、東南アジア諸国連合(ASEAN)をリードしたことを高く評価した。
両国は同会議を通じて、改めて両国間総合戦略的パートナーシップ協定の重要さを評価し、更に原子力発電、宇宙開発、海洋科学、先端技術開発での相互協力を確認した。
また、インドのナレンドラ・モディ首相が2019年11月の東アジアサミットで提唱した“「インド太平洋地域率先開発(IPOI)」、並びにASEANの「インド太平洋地域への注目」に基づき、同地域の安全保障、繁栄及び成長を確かなものにする”べく協同して当たっていくことで合意した。
本会議とは別に、両国間の様々なレベルでの会合が頻繁に行われている。
例えば、在インドのファム・サン・チャウ大使(59歳)は最近、インドのハーシュ・シュリングラ外務省事務次官(58歳)と会談し、中国が西沙諸島内のウッディ島(1974年以来中国が実効支配)にH-6J大型爆撃機を配備して以降、ベトナム・中国間の緊張が高まっていることを報告している。
また、これに先立つ8月4日、在ベトナムのプラナイ・ベルマ大使がベトナムのチャン・クオック・ボン共産党中央委員会常任委員と会談し、両国の緊密な関係構築の重要性について確認した。
ボン常任委員は特に、インドが南シナ海領有権問題でベトナム擁護の立場を取っていることを評価した。
同常任委員は改めて、領有権問題は相互の平和裏の対話及び国連海洋法条約(注後記)を含めた国際法に準拠して解決していくというベトナムの基本姿勢を強調している。
なお、ベトナム側からは、南シナ海のベトナムの排他的経済水域(EEZ)内に賦存する石油・天然ガス資源の探査・開発事業にインドが進出することを希望する旨発言している。
また、国防分野での両国関係相互協力も重要な事項である。
インド側は最近、ベトナムに対して12隻のインド製高速監視船の代金1億ドル(約107億円)の融資供与を決定している。
これは、ムンバイ本社のラーセン&トゥブロ社(1938年設立)が製造・販売する高速船で、今年9月に第1船が供給され、以降5隻がインドで製造、残り6隻がベトナムで製造され、2021年半ばまでに供給が完了する契約である。
更にインドは、インド製武器の購入のため5億ドル(約535億円)の融資枠も設定している。
これは、ベトナム側が興味を示しているとされる、インド製のアカース移動式中距離地対空ミサイル及びドゥルーブ軽量ヘリコプターの供給に充てられるものである。
一方、両国は2021年から、国連安全保障理事会非常任理事国として同時に選出されており、ASEAN等の組織的活動において協調していくことを確認している。
なお、ASEAN加盟国の中には、成長著しいインドネシアがいるが、同国も南シナ海南端のナトゥナ諸島海域での中国漁船侵入問題を抱えており、インド・ベトナム両国の対中国戦略で協調してくる可能性もある。
8月27日付ベトナム『ベトナム通信社』(1945年設立):「ベトナム、西沙諸島における中国軍演習を止めるよう要求」
ベトナム外務省のル・ツィ・トゥ・ハン報道官は8月26日、中国軍が西沙諸島海域で8月24~29日の間に実施している実弾演習を即刻中止するよう要求するとの声明を発表した。
同報道官は、“かかる軍事演習は、南シナ海に関わる中国・ASEAN間行動宣言(DOC、2002年)に反するだけでなく、目下両者で協議が進められている行動規範(COC)にも支障を来し、更には、南シナ海における平和と安定を損なう”と抗議した。
なお、中国は1974年の西沙諸島の戦いでベトナム軍に勝利して以降、同諸島を実効支配してきている。
そして中国は8月初め、ウッディ島に新たに大型爆撃機を配備して、ベトナム等への威嚇行動に出ている。
(注)国連海洋法条約:海洋法に関する包括的・一般的な秩序の確立を目指して1982年4月に第3次国連海洋法会議にて採択され、同年12月に署名開放、1994年11月に発効した条約。国際海洋法において、最も普遍的・包括的な条約であり、基本条約であるため、別名「海の憲法」とも呼ばれる。
閉じる
その他の最新記事