フィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、就任以来の懸案事項のひとつである、南部ミンダナオ島に巣食うイスラム過激派“アブ・サヤフ”掃討について、5月から一斉に開始した政府軍による作戦の成功をみた。しかし、同大統領にとって、もうひとつ頭の痛い問題として、毛沢東主義(注後記)を標榜する共産党過激派組織対策が残っているが、5月に和平交渉の中断以降何ら進展をみないまま、この程正式に和平交渉決裂宣言を出すに至った。
11月24日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』(
『ロイター通信』配信):「フィリピンのドゥテルテ大統領、毛沢東主義の反政府グループとの和平交渉打ち切り」
フィリピン大統領府のハリー・ローク報道官は11月24日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が、毛沢東主義を標榜する反政府グループとの和平交渉を打ち切ることを決定したと発表した。
同大統領が11月23日に宣言書に署名したものだが、理由として、反政府グループが依然ゲリラ闘争等を主張し、和平交渉に真剣に向き合おうとしないことを上げている。...
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11月24日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』(
『ロイター通信』配信):「フィリピンのドゥテルテ大統領、毛沢東主義の反政府グループとの和平交渉打ち切り」
フィリピン大統領府のハリー・ローク報道官は11月24日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領が、毛沢東主義を標榜する反政府グループとの和平交渉を打ち切ることを決定したと発表した。
同大統領が11月23日に宣言書に署名したものだが、理由として、反政府グループが依然ゲリラ闘争等を主張し、和平交渉に真剣に向き合おうとしないことを上げている。
ほぼ半世紀近くも続く同グループとの衝突で4万人以上が犠牲になっており、昨年6月に就任した同大統領にとって、同グループとの和平交渉が優先課題のひとつとなっていた。
直近の和平交渉は、ノルウェーの仲介の下で進められていたが、同グループがゲリラ闘争を更に過激化すると表明したことから、今年5月以降中断していた。
なお、政府による和平交渉打ち切り宣言を受けて、同グループ内のフィリピン民族民主戦線(NDFP、フィリピン共産党(CPP)のフロント組織で1973年設立)のホセ・マリア・シソン筆頭政治顧問は、農村部でのゲリラ闘争を増大させて戦い抜く他残された道はないと表明した。
11月25日付フィリピン
『テンポ・オンライン』:「ドゥテルテ大統領、反政府グループとの和平交渉を正式に打ち切り」
ドゥテルテ大統領は11月23日午後に署名した宣言書第360号で、CPP-NPA(新人民軍)-NDFPのグループをテロ画策の犯罪者グループだと指定し、同グループ関係者を可及的速やかに逮捕するよう命令を下すとしている。
ローク大統領府報道官によれば、政府側はこれまで真摯に和平交渉に臨んでいたが、反政府グループはテロや暴力行為をエスカレートするばかりであったことから、大統領はこれ以上の交渉は無理と判断したものという。
更に同報道官は、ドゥテルテ大統領が、11月10日にブキドノン州(ミンダナオ島中央部)のタラカグ市で発生した、反政府グループによる反抗で4ヵ月の赤ん坊と警察官が犠牲になった事件を重く捉えて、これ以上同グループと和平交渉を行うつもりはないと語っていたことを明かした。
なお、同グループは今年2月、ブキドノン州で3人の兵士を攻撃・殺害しており、この頃からドゥテルテ大統領は、同グループとの和平交渉に消極的になっていた。
11月24日付中国
『新華社通信』:「フィリピンのドゥテルテ大統領、過激派組織との交渉を正式に断念」
11月24日夜の声明でローク大統領府報道官は、政府側交渉団は和平合意に向けて最善を尽くす考えであったが、共産主義過激派組織(CPP-NPA-NDFP、編注;中国メディアゆえ、毛沢東主義グループとは呼称せず)が暴力や過激な抵抗を更に強めてきたため、これ以上の交渉は無理と判断したものと表明した。
CPP-NPA-NDFPの組織・活動は1969年に始まり、ピーク時の1987年には武装ゲリラ部隊は2万6千人にもなっていたが、現在は4千人程度まで縮小している。
フィリピン政府は、1986年より同グループとの和平交渉に取り掛かってきたが、結局何ら進展もないまま現在に至っている。
(注)毛沢東主義:文化大革命期(1966~1976年)の毛沢東思想を指す。この時期の毛沢東思想の主要概念には、人民戦争理論、暴力革命・武装闘争肯定と平和革命否定、階級闘争絶対化、3つの世界論などがある。
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4月19日、ニュージーランド政府は、高度な技術を持つ外国人労働者を対象とする査証(ビザ)の審査を厳格化すると発表した。内容は、ビザ発給を認める条件である最低賃金を引上げ、帯同する家族のビザ取得を厳しくするというものである。
具体的には、ビザ取得には少なくとも年間49000NZドル(日本円で374万円)の給与が必要となる。
また、4月18日、オーストラリア政府は外国企業の駐在員等に適用する長期就労ビザを廃止し、発給条件を厳しくしたビザを導入すると発表した。
廃止されるビザは、「457」と呼ばれるもので、最長期間4年間のビザで、オーストラリアの子会社などへの企業派遣者や日本での実績によりオーストラリアに進出する企業の駐在員等を対象としている。...
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具体的には、ビザ取得には少なくとも年間49000NZドル(日本円で374万円)の給与が必要となる。
また、4月18日、オーストラリア政府は外国企業の駐在員等に適用する長期就労ビザを廃止し、発給条件を厳しくしたビザを導入すると発表した。
廃止されるビザは、「457」と呼ばれるもので、最長期間4年間のビザで、オーストラリアの子会社などへの企業派遣者や日本での実績によりオーストラリアに進出する企業の駐在員等を対象としている。
今回、「457」に代えて期間2年と4年の2種類のテンポラリー・スキル・ショーテッジ・ビザ(一時的な技能者不足ビザ)を新設し、英語力や職歴などの審査基準を引き上げた。
また、ビザ申請企業は、オーストラリアで人材募集をした上で、適切な応募者がいないことを条件にどうしても外国人を雇用しなければならないということを証明しなければならない。
要するに、ニュージーランド、オーストラリアとも、トランプ米大統領に習って自国の雇用を優先する自国主義を実践することにほかならないものと考える。
オーストラリア移民・国境警備相は、「現在の就労ビザは、永住権申請への道が開かれており多くの場合、移民の流入につながっている。今回の改正で永住権を申請することを不可能にする」と述べており、最大の狙いは、自国でのポピュリズムの高まり等を意識し、移民の流入を極力防ぎたいとの思惑もあるものと考える。
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