イギリスの諜報機関GCHQ(政府通信本部)は12日、子供たちに楽しいクリスマスシーズンを楽しんでもらうだけでなく、問題解決に興味を持ってもらうために、難易度別の7つのなぞなぞ問題を公開した。
英
『テレグラフ』は、GCHQは英国の若者に、クリスマスカードに含まれる難解な問題を解読して、「自分の中の諜報員を発見してください」と呼びかけている、と報じている。
謎解き問題を含んだクリスマスカードは、世界中の諜報機関やパートナーに送られるのが恒例となっている。しかし今年は、STEM(科学、技術、工学、数学の総称)分野に関心のある若者を対象に、学年に合わせた難易度別の謎解きクイズが用意された。諜報機関は、全国の中高生や大学生がクリスマスのチャレンジに参加することで、より多くの若者がSTEM分野に興味を持ち、将来的に諜報機関で働くことを検討してくれることを期待しているという。
GCHQのジェレミー・フレミング長官は、「エニグマ暗号から人工知能まで、GCHQの歴史は、国の最も複雑な課題に取り組む才能ある人々であふれています。私たちが国の安全を守るためには、問題解決能力とチームワークが絶対に欠かせません。だからこそ、今年のクリスマス・パズルは若い人たちを対象にしているのです。人と違った考え方をすることは才能だということを若い人たちに伝えたいのです。GCHQで行っているように、不可能と思われる問題を解決するには、様々な考え方が適切に交わることが必要なのです」と述べている。
また、GCHQは近年、Stemettesという組織と提携して、特に若い女性の間でSTEM科目の履修を促進するための活動も行っている。
英『ザ・タイムズ』によると、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツが軍事メッセージを暗号化するために使用した暗号機「エニグマ」を解読したことで有名なこの機関は、より高い給料を提供できるハイテク企業と競合しながら、最も優秀な若者を採用しなければならないと伝えている。
同機関は2018年にも、優秀な若者を採用するための活動を行っている。将来サイバー攻撃から国を守るために採用される可能性のあるコンピューターハッキングを得意とする10代の若者を対象に、一連の訓練プログラムの設立に協力した。プログラム参加者として選ばれた若者たちは、犯罪者になるか、あるいは国の安全保障にとって重要な資産になるかの岐路に立っている若者たちで、警察によって選ばれたという。
今年のクリスマスカードのなぞなぞは、11歳から18歳までの年齢層を対象としており、7問の答えを組み合わせると、秘密のメッセージを解読することできるようになっている。GCHQは、答えを見つけるためには「既成概念にとらわれず、互いに協力する」ことを呼び掛けている。
なお、2016年に出された大人向けのクリスマスカードは、課題が非常に難しく、GCHQの暗号担当者8人が2カ月かけて作成したものであった。挑戦した60万人のうち、あと少しで制覇できたのはわずか3人だった。3人は、その努力の報いとして諜報機関から文鎮を受け取りとったという。
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8月3日付欧米
『ロイター通信』:「台湾チームのメダル獲得で、“チャイニーズタイペイ”の名の下でのオリンピック参加に物議」
東京大会のバドミントン男子ダブルス競技において、台湾チームが決勝で中国チームを破って金メダルを初めて獲得した。
そして王斉麟選手(ワン・チーリン、26歳)が試合当日の7月31日の晩、フェイスブック上で、優勝の喜びと共に“自分は台湾出身だ”と書き込んだ。
しかし、この書き込みによって、長く燻っている“ひとつの中国”問題論争が勃発している。
台湾チームは目下、金メダル2個の他8つの銀・銅メダルを獲得する程大躍進していることから、台湾の政治家から有名人まで、“チーム台湾”、“台湾は台湾”との大合唱が起こっている。
そして、王選手のフェイスブックの書き込みを100万人以上が称賛していて、SNS著名人の林佳瑩氏(リン・チアユン)も、“もう「チャイニーズタイペイ」の呼称は使わず、「台湾」名でオリンピックに参加し、かつ、世界にも訴えていこう”と言及している。
しかし、中国政府の台湾政策は不動で、あくまでも“ひとつの中国”と見做しており、必要に応じて将来的に武力で統一する可能性も示唆する程である。
現実問題、中国は国際機関や民間事業会社に対して、台湾が中国の一部であると宣言しており、これに抗って台湾を独立国として認めているのは、世界で僅か15ヵ国、それも小国ばかりである。
中国の国務院台湾事務弁公室(1988年設立)は『ロイター通信』のインタビューに答えて、“「チャイニーズタイペイ」名でのオリンピック参加は、「ひとつの中国」原則の下での取り扱いであり、国際スポーツ機関・連盟も了解してのことだ”とし、“スポーツイベント上の扱いで以て、「台湾独立」を求めることなど全くあり得ない話だ”と一蹴している。
そもそも「チャイニーズタイペイ」という呼称は、1970年代後半に台湾オリンピック委員会とIOC間の妥協で決められた。
IOCは条件として、参加に当たって台湾国旗や国歌は使用しないこととしたが、同様の措置が他の国際スポーツイベントでも踏襲されている。
しかし、今回の東京オリンピックに当たり、開会式で『NHK』が、「チャイニーズタイペイ」というプラカードを掲げて入場した同チームを“台湾”と呼んだことで改めて注目を集めた。
これには、台湾の政治家もまた多くの著名人も称賛した。
ただ、肝心の台湾民衆は少々異なるようで、2018年に実施された住民投票では、「チャイニーズタイペイ」ではなく「台湾」名での参加を認めるようIOCと協議するとの提案が否決されている。
当時の市民は、悪戯に中国を刺激して、台湾をオリンピックから締め出す行動を起こされることを懸念したとみられる。
しかし、与党・民主進歩党の羅致政書記長(ロー・チーチェン、56歳)は、チャイニーズタイペイという呼称の使用は、“力づくで吞まされた受け入れがたい措置だ”と非難の声を上げている。
同日付台湾『フォーカス台湾』(1924年設立の国営台湾中央通信社):「バドミントン決勝で使用された“ホークアイ・チャレンジ(ビデオ判定)”画像ネタに注目」
7月31日に行われた、バドミントン男子ダブルス競技の決勝戦で、台湾チームの打った羽根が中国チームのエリア内に落ちて、台湾チームが勝利した。
しかし、中国チームが“ホークアイ(注後記)・チャレンジ”を要求したため、ホークアイ画像で確認されることになったが、結果は“イン”であって、台湾チームの勝利に変更はなかった。
オリンピックの当該競技で、台湾チームが金メダルを獲得するのは史上初であり、当日夜から、“台湾”、“台湾イン”、“T-aiwan”、更には、“Tに羽根”という画像がSNS上で拡散した。
台湾の人たちにとって、中国側の“チャレンジ”にも拘らず、結果として“台湾が勝利”したことが、現在の台湾の置かれた状況についての不満及び反発を表す格好の材料となったとみられる。
バドミントンチームのスポンサーでもある台湾土地銀行(1946年設立)も8月2日、“T”や “T-aiwan”をイメージしたクレジットカードを作成・発行すべく準備していると発表する程である。
ただ、現実は、台湾チームの表彰式において、掲揚されたのは台湾国旗ではなくオリンピック旗であり、また、国歌演奏は許されず、旗を掲揚する際に使われる台湾の古い歌が使用されている。
この背景は、1981年に台湾オリンピック委員会とIOCが合意した、台湾のオリンピック参加を認めるための条件に基づくものある。
すなわち、中国が当時、台湾が“中華民国”の名の下でオリンピックに参加することを強硬に反対したため、台湾側として止む無く妥協した産物である。
(注)ホークアイ:ソニーが2011年3月に買収した、ホーク・アイ・イノベーションズが開発を進める審判補助システム(ゴールライン・テクノロジー)。球技において、試合中にボールの位置や軌道を分析し、それらをコンピューターグラフィックスで再現することにより、審判が下す判定の補助を行うコンピューター映像処理システム。またボールの位置や軌道の統計を作成し画面に表示する。クリケットの試合やテニスのウィンブルドン選手権等の国際大会で採用されており、他の球技にも応用可能とされる。
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