ジョー・バイデン大統領(78歳)就任前から、対中政策はどうなるのかと種々憶測報道がなされている。その一環で、ある米メディアが、“昨年12月に中国側から、トランプ政権が強行した関税賦課措置をはずすための協議を申し入れた”と報じたが、この程、在米中国大使館が改めて事実無根と否定するコメントを発表した。
1月24日米
『ニューズマックス』(1998年設立の保守系メディア):「中国、バイデン政権高官との協議要請との報道を否定」
在米中国大使館は1月23日、トランプ政権の4年間で起きた米中間の緊張関係を弱めるべく、中国側がバイデン新政権高官との協議を申し入れたとの報道を否定するコメントを発表した。
『ザ・ヒル』(1994年設立の政治専門紙)報道によると、“在米大使館は1月23日付声明で、当該報道は事実無根であり、メディアは、米中関係について、事実に即した報道を心掛けるべきだと表明した”という。
この直前の1月22日、『ウォールストリート・ジャーナル』紙が、中国側は、中国共産党の政策を討議・決定する機関である党中央政治局委員会(計25名)メンバーの楊潔篪(70歳)を米国に派遣し、バイデン新政権高官と協議させたいとの意向を表明したと報じていた。
同紙は更に、崔天凱駐米大使(68歳、ツイ・ティアンカイ)が12月、習近平国家主席(67歳、シー・チンピン)からジョー・バイデン次期大統領に宛てて祝辞が送付されて間もなく、米政府に申し入れたと報じている。
しかし、中国大使館声明で、当該報道を否定した上で、米中双方は多くの不一致事項について“お互いに歩み寄るべきだ”と強調している。
トランプ政権下では、貿易紛争に加えて、南シナ海での領有権問題で緊張が高まっていたが、直近でも、マイク・ポンペオ国務長官(57歳)が、新疆ウィグル自治区においてウィグル族に対して集団虐殺が行われたと宣言したことで、分断が決定的となっていた。
これに対抗して中国は、“嘘をついて騙そうとしている”ポンペオ氏及び他27人の米高官に対して制裁を科すと発表している。
しかし、アントニー・ブリンケン国務長官候補(58歳)は、ポンペオ氏の意見に賛同すると表明している。
なお、バイデン大統領は、中国とはもっとうまくやっていきたいと発言しているものの、トランプ政権が科した制裁関税賦課についてすぐさま撤回する考えはないとしている。
1月23日付中国『チャイナ・デイリィ』紙:「中国大使館、米国高官との協議希望との報道に反論」
米『ウォールストリート・ジャーナル』紙は、崔中国大使が米政権高官宛に、両国高官による協議の場を設けることを提案する書簡を送ったと報道したが、大使館はすぐさま当該記事を全面否定した。
中国大使館声明によると、“報道内容は事実無根で、同大使はそのような書簡を送付したことはない”という。
更に、“メディアは事実に即した報道をすべきである”とした上で、“米中双方は、協力姿勢で臨み、両国間の健全かつ安定した関係構築のため、不一致点についても真摯に協議していくべきだ”と付言している。
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新幹線に代表される高速度鉄道は、かつて日本が世界を牽引していたが、現在ではドイツ・日本の技術を基に独自開発に注力してきた中国が、総走行距離含めて世界をリードしている。そこで日本としては、新世代の超高速磁気浮上鉄道(マグレブ、注後記)で改めて世界に打って出るべく中央新幹線プロジェクトの事業化に注力している。しかし、これに追いつき追い越そうとしているのが、またしても中国である。世界の超高速度鉄道市場をどちらが席捲するのか、激しい鍔迫り合いが続けられている。
11月27日付
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「日本と中国、世界の超高速度鉄道市場の主導権争いで火花」
日本と中国は目下、世界における超高速度鉄道マグレブの市場で激しい主導権争いをしている。
新世代の超高速度鉄道マグレブは、現在短距離かつ試験走行用のプロジェクトが多くの国で進められている。
その中にあって、アジアの二ヵ国は、世界初の長距離でのマグレブ事業化に向けてしのぎを削っている。...
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11月27日付
『ブルームバーグ』オンラインニュース:「日本と中国、世界の超高速度鉄道市場の主導権争いで火花」
日本と中国は目下、世界における超高速度鉄道マグレブの市場で激しい主導権争いをしている。
新世代の超高速度鉄道マグレブは、現在短距離かつ試験走行用のプロジェクトが多くの国で進められている。
その中にあって、アジアの二ヵ国は、世界初の長距離でのマグレブ事業化に向けてしのぎを削っている。
日本のプロジェクトは、東海旅客鉄道(JR東海)が推進する総工費9兆円(860億ドル)のリニア中央新幹線で、東京~大阪間(約440キロメートル)2037年開業を目指している。
一方、中国が進めているのは、上海~寧波(ニンボー、中国東端浙江省、約200キロメートル)を結ぶ総工費1,000億人民元(150億ドル)のプロジェクトで、中断や計画の一時棚上げなどがあったが、現在は2035年完工を目指している。
日本の総工費が巨額なのは、山間部に新たなトンネルを多く通す必要があるからである。
鉄道専門家によれば、世界の超高速度鉄道の新規市場は2兆ドル(約209兆3千億円)余りと見積もられ、予定どおりに事業化が進められた方がその市場を席捲することになろうという。
日本の新幹線に関する著書のある、英国カーディフ大学(1883年設立のウェールズ在国立大学)のクリストファー・フッド教授(73歳)は、“世界のマグレブ市場は巨大であり、日本も中国も、国内で事業化が成功すれば、将来の技術輸出事業に向けて効果的なショールームとすることができる”と解説している。
日本はかつて、世界初の高速度鉄道である新幹線を開業し、世界市場をリードしてきており、安倍晋三氏(66歳)は首相時代、経済復興のため高速度鉄道を含めた新技術インフラ輸出に注力してきた。
しかし、直近十年ほどでの中国の開発促進はすさまじく、日本を凌駕するまでになっている。
奇しくも2015年、インドネシアが進めていた最初の高速度鉄道建設プロジェクトで日本合同事業体が中国企業に敗退している。
ただ、同プロジェクトはその後の計画推進大幅遅延に伴い、インドネシア政府から日本側に再度の参画を要請されてはいる。
中国国営メディア『チャイナ・デイリィ』紙は7月、日本が高速度及び超高速度鉄道事業での”最大のライバル“だとする鉄道事業専門の教授の記事を掲載した。
そして、“厳しい競争”の存在により、中国事業者をしてマグレブ事業開発促進に駆り立て、その結果、中国国内及び世界のマグレブ市場の優位的シェア獲得に結び付くであろうと記載している。
現段階で、将来のマグレブ事業として注目されているのは、JR東海が関与を試みている米東海岸のワシントンDC~ニューヨーク間を結ぶ超高速度鉄道プロジェクトで、第一段階のワシントンDC~ボルチモア(メリーランド州)区間だけで100億ドル(約1兆450億円)と見込まれる。
JR東海によれば、同鉄道が敷設されれば、現行の3時間かかる移動時間が3分の1に短縮され、それは航空便よりも早くなるという。
同社広報担当の赤星有紀氏によれば、同プロジェクトには日本政府が数十億ドル(数千億円)の資金援助を約してくれているが、“本プロジェクトの成功が、日本の超高速度鉄道技術の世界市場への進出にとって重要であること”と捉えているための“全面支援”だとする。
ブルームバーグ・インテリジェンス・アジア(ブルームバーグのアジア部門分析研究部署)インフラ事業専門のデニス・ウォン氏は、マグレブ建設には膨大な電力供給と多くの変電所が必要で、政府からの支援は必要不可欠とする。
しかし、2002年開業の、上海に導入されている浦東(プートン)国際空港~市内を繋ぐ短距離マグレブは、初期段階で毎年10億人民元(約160億円)の赤字を出していた。
また、JR東海のリニア中央新幹線も、折からの新型コロナウィルス感染問題で人の移動が大きく制限される事態から、将来完工してからも十分な採算が取れる程の需要が見込まれるのかという新たな問題が引き起こされている。
そこで、ウォン氏は、“日本か中国かどちらが先に開業するかではなく、巨大な総工費を差し引いても、どちらが収益性のある事業化が達成できるかが最も重要”だと分析している。
(注)マグレブ:磁力による反発力または吸引力を利用して車体を軌道から浮上させて推進する鉄道。世界で開発されている主な磁気浮上式鉄道には、常伝導電磁石を用いる方式のトランスラピッド(ドイツで開発、現行上海で運行)やHSST(愛知県で運行)、そして超伝導電磁石を用いる方式の超電導リニア(中央新幹線)がある。有人試験走行での世界最高速度は2015年4月に日本の超電導リニアL0系が記録した603キロメートル/時。
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