トランプ大統領;現住所地のフロリダ州リゾートには市条例で失職後の長期滞在不許可、これも訴訟で覆す?(2)【米メディア】(2020/12/18)
12月4日付GLOBALi「
トランプ大統領;現住所地のフロリダ州リゾートには市条例で失職後の長期滞在不許可、これも訴訟で覆す?」で報じたとおり、同大統領が実業家時代にマー・ア・ラゴ別荘地のあるパームビーチ市と締結した契約書に基づき、大統領職時代の特例は別にして、同リゾートに年通算21日以上の長期滞在は認められない恐れがある。12月14日の大統領選挙人の投票結果、同大統領の敗北がいよいよ決定的になったことから、失職後に同リゾートに定住しようと準備を進めているが、同市条例はもとより、近隣住民からの猛反発もあって、同地を安住の地とすることは困難とみられる。なお、ホワイトハウスは目下のところ、同市との当該契約存在自体を否定している。
12月18日付
『AP通信』:「トランプ氏のフロリダ州リゾートへの定住に近隣住民が反発」
ドナルド・トランプ大統領(74歳)は来年1月、大統領職退任後にフロリダ州のマー・ア・ラゴ別荘地に定住しようと考えているが、これに反発する近隣住民の代理人弁護士は、同大統領が実業家時代の1990年代、同リゾートを会員制ゴルフ・クラブに変更する許可を求めた際にパームビーチ市と締結した契約に基づき、同リゾートに長期滞在することは認められないとする訴えを提起した。...
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12月18日付
『AP通信』:「トランプ氏のフロリダ州リゾートへの定住に近隣住民が反発」
ドナルド・トランプ大統領(74歳)は来年1月、大統領職退任後にフロリダ州のマー・ア・ラゴ別荘地に定住しようと考えているが、これに反発する近隣住民の代理人弁護士は、同大統領が実業家時代の1990年代、同リゾートを会員制ゴルフ・クラブに変更する許可を求めた際にパームビーチ市と締結した契約に基づき、同リゾートに長期滞在することは認められないとする訴えを提起した。
匿名希望の近隣住民を代理するレジナルド・スタンボー弁護士は今週、トランプ家が同リゾート地に定住することを当該住民が望まないとする訴えを同市宛に提起したと明かした。
その主な理由は、同大統領が同リゾートにしばしば滞在することから、シークレットサービスによって警護のために設置したマイクロ波防御壁が発するマイクロ波励起による難聴等の症状に悩まされており、今後トランプ家が定住することによってこの悩みが継続するだけでなく、その他の問題もあって当該リゾート地周辺価格が下落する恐れがあるとしている。
大統領一家は昨年、ニューヨークから同リゾートに現住所を移転している。
しかし、同弁護士によれば、同大統領が1993年に同市と締結した契約によれば、個人所有の別荘地を会員制ゴルフ・クラブに変更する許可取得条件として、同大統領も含めて全ての会員は、同リゾートに年通算21日以上の長期滞在を認められないとされているとする。
同弁護士は同市宛書状の中で、“同市内には他に素晴らしい住宅が売りに出されていることでもあり、トランプ一家がマー・ア・ラゴに定住することによって近隣住民とトラブルとならないよう、同市から前広に同一家に対して、同契約に基づきしかるべき対応をとるようはたらきかけることを望む”とも言及している。
しかし、トランプ政権は12月17日、“トランプ大統領一家がマー・ア・ラゴに定住することを禁ずるような文書も契約書も存在しない”との声明を発した。
一方、目下のところ、パームビーチ市シティ・マネージャー(注後記)のカーク・ブルーイン氏もゲイル・コングリオ市長も、具体的なコメントを発表していない。
なお、トランプ氏がマー・ア・ラゴに関わった経緯は以下である。
1985年:食品メーカーのゼネラル・フーズ(1895年設立)の創業者である故マージョリー・メリウェザー・ポスト(1887~1973年)遺産管理団体から、当該邸宅(126室)を1,000万ドル(約10億5千万円)で買収。数百万ドル(数億円)をかけて改装し、避寒地の別荘として毎年11月~5月の間に短期滞在。
1990年代:ニュージャージー州に所有するカジノ含めて、所有不動産価格が暴落し、トランプ氏経営の不動産会社が経営危機。同別荘の年間維持費300万ドル(約3億1,500万円)負担が困難となり、同不動産を小規模に分けて切り売りすることを考えたが、同市が不許可。
1993年:(1)同市から、同別荘を会員制ゴルフ・クラブリゾート(最多会員数500名、入会金20万ドル、年会費1万4千ドル)とする案の許可取得。その際、同リゾートでカジノ運営を行わないことや、会員の滞在限度を年通算21日以内とする等の条件付け。
(2)当時の『パームビーチ・ポスト』紙報道によると、トランプ氏代理人のポール・ランペル弁護士は、“トランプ氏は同リゾートに定住することはない。ただ、同クラブ会員として、許容範囲内での短期滞在することはあり得る”とコメント。
2000年代:近隣住民から騒音等の苦情が相次ぎ、トランプ氏とパームビーチ市が度々衝突。特に2006年、トランプ氏が無許可で80フィート(24メートル)高の国旗掲揚ポールを建てたことで関係は更に険悪に。
2017年以降:(1)大統領就任以降、クリスマスシーズンでの21日間を超える滞在や、習近平国家主席(シー・チンピン、67歳)、安倍晋三首相(66歳)等の首脳を歓迎するためにしばしば利用。
(2)同大統領が来訪・滞在ごとに起こる、随行員・シークレットサービス等使用の多数の車・ヘリコプターの騒音、また、同リゾート近隣への車両進入禁止措置に対して、近隣住民から頻繁に苦情発生。
12月17日付『ABCニュース』:「マー・ア・ラゴ近隣住民、大統領退任後のトランプ一家の同リゾート定住を歓迎せず」
『ニューヨーク・タイムズ』紙や『シアトル・タイムズ』紙報道によると、マー・ア・ラゴ・リゾート隣接のデモス家代理人弁護士が12月15日、パームビーチ市及びシークレットサービス宛に、1993年にトランプ氏が署名した契約書に基づき、トランプ一家は連続7日以上、年通算21日以上同リゾートに滞在することは許されないと訴える書状を送付したという。
地元『パームビーチ・ポスト』紙も、同契約書によると、同リゾートの会員は、トランプ氏も含めて上記を超える長期滞在は許されないと記載されていると報じている。
(注)シティ・マネージャー(あるいはタウン・マネージャー):地方行政システムの一つで、米国などで採用されている。もう一つのシステムである、市町村長を行政の主体とする市長制と違い、市議会がシティ・マネージャーを任命し行政を任せる。本システムのもとでは、市議会が政策の決定、条例の制定、予算の認定、マネージャーの任命を行い、市長(あるいはそれに相当する責任者)は、非常に儀礼的な仕事や市議会の議長的な行為を行うことが多い。
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中国国営メディア;プロパガンダ喧伝のため米紙に多額の報酬拠出【米メディア】(2020/06/10)
中国国営メディアの一社が、中国プロパガンダ喧伝のため、米紙に対してこれまでに1,900万ドル(約20億5千万円)近くも拠出していたことが判明した。これは、米連邦「外国代理人登録法(FARA、注1後記)」に基づいて、同メディアが米司法省宛に直近で提出した報告書より明らかになったものである。
6月9日付
『ザ・デイリィ・コーラー』保守系オンラインニュース:「中国のプロパガンダ放送局、米紙に総額1,900万ドル拠出」
中国国営メディアの一社が、プロパガンダ喧伝のため、複数の米紙宛に直近4年間で、総額1,900万ドル近くの報酬を支払っていたことが判明した。
中国共産党運営の英字紙『チャイナ・デイリィ』で、FARAに基づいて直近の活動内容を報告するために司法省に提出した報告書で明らかになったものである。...
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6月9日付
『ザ・デイリィ・コーラー』保守系オンラインニュース:「中国のプロパガンダ放送局、米紙に総額1,900万ドル拠出」
中国国営メディアの一社が、プロパガンダ喧伝のため、複数の米紙宛に直近4年間で、総額1,900万ドル近くの報酬を支払っていたことが判明した。
中国共産党運営の英字紙『チャイナ・デイリィ』で、FARAに基づいて直近の活動内容を報告するために司法省に提出した報告書で明らかになったものである。
それによると、2016年11月以降2020年4月までの間、『ワシントン・ポスト』紙に460万ドル(約4億9,700万円)余り、『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙には600万ドル(約6億4,800万円)近くが支払われている。
両紙は、当該報酬の見返りとして、『チャイナ・デイリィ』紙が投稿した“チャイナ・ウォッチ”なる記事を本紙の中に綴じ込み、中国プロパガンダ喧伝に一役買っていた。
例えば、2018年9月から“一帯一路経済圏構想でアフリカ諸国と連携”とのタイトルの記事を挿入し、習近平(シー・チンピン)国家主席が推す同構想を宣伝した。
また、昨年に挿入した“関税賦課で米住宅が割高に”という記事では、米政府が中国産木材に関税を賦課することによって、結局米市民に関税分の追加負担のしわ寄せがいくとアピールした。
更に、他紙には広告掲載料として、『ニューヨーク・タイムズ』紙(5万ドル、約540万円)、『フォリン・ポリシー(ワシントンDC)』紙(24万ドル、約2,590万円)、『デモイン・レジスター(アイオワ州)』紙(3万4,600ドル、約374万円)、『CQロール・コール(ワシントンDC)』紙(7万6千ドル、約820万円)宛にも支払っている。
また、『ロスアンゼルス・タイムズ』紙(65万7,523ドル、約7,100万円)初め、『シアトル・タイムズ』紙、『アトランタ・ジャーナル=コンスティテューション』紙、『シカゴ・トリビューン』紙、『ヒューストン・クロニクル』紙、『ボストン・グローブ』紙にも、記事の掲載や投稿記事印刷費用として、合計760万ドル(約8億2,100万円)の報酬を支払っている。
以上のとおり、当該報告書から分かることは、米紙に対して総額1,860万ドル(約20億900万円)、ツイッターでの宣伝費用26万5,822ドル(約2,870万円)の報酬を支払っていたことである。
今回の報告書提出は、司法省が『チャイナ・デイリィ』紙に対して何年もの間、FARAに基づいて米国における活動報告を半年に一度提出するよう求めてきた結果、この程漸く同紙が6月1日付で提出してきたものである。
なお、米国の民主活動グループはこれまで長い間、中国政府が米メディア網を駆使してプロパガンダを喧伝していると警鐘を鳴らしてきた。
フリーダム・ハウス(注2後記)及びフーバー研究所(注3後記)は特に、『チャイナ・デイリィ』紙投稿の記事によって、米メディアへの影響力駆使に努めていると警戒を強めている。
また、最近でも、『チャイナ・デイリィ』紙初め中国国営メディアが、挙って中国政府擁護に注力している。
すなわち、新型コロナウィルス感染問題で、中国政府が米国や他西側諸国より厳しく責任追及されていることから、政府高官の意を酌んで、批判の芽を逸らさせようと躍起になっている。
(注1)FARA:1938年に可決された米国の法律で、「政治的または準政治的権能を持つ」外国勢力の利益を代表するエージェント(外国のエージェント)が、その外国政府との関係及び活動内容や財政内容に関する情報を開示することを義務付けたもの。目的は、「米国政府と米国民による、外国勢力の発言と活動の評価」を容易にすること。司法省の国家安全保障局のスパイ対策室のFARA登録ユニットによって管理されている。
(注2)フリーダム・ハウス:ワシントンDCに本部を置く国際NGO団体で、1941年にナチス・ドイツに対抗して、自由と民主主義を監視する機関として設立。毎年193の国と地域に関して、「自由度や人権状況」、「報道の自由度調査」、「インターネットの自由度ランキング」のレポート等を公開している。
(注3)フーバー研究所:1919年に、後の大統領でスタンフォード大学(1885年創立、カリフォルニア州私立大学)卒業生のハーバート・フーバー(1874~1964年、第31代大統領)が大学内部に創設した、公共政策シンクタンク。同研究所はスタンフォード大学の敷地内にあるものの、同大学に付属する研究・教育機関ではない。
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