1月26日付米
『CBSニュース』:「米、ロシア支援のワグネルグループを国際犯罪組織に指定し追加制裁」:
米国は26日、ロシアが支援する軍事会社「ワグナー・グループ」を国際犯罪組織に指定、新たな制裁対象に加え、そのウクライナや世界での残虐行為を批判している。
米財務省によると、8個人16企業が制裁対象で、その多くはワグネルグループとの関係をもつ。過去に米国の制裁を受けていたプーチン大統領の側近であるエフゲニー・プリゴジン氏が経営する民間軍事請負業者。イエレン財務長官は声明で、「ワグネルに対する今回の追加制裁措置により、プーチン氏の戦争遂行能力が一段と妨げられる」と述べている。
ホワイトハウスによると、ワグネルは刑務所から募集した4万人を含む約5万人の戦闘員をウクライナの東部戦線へ派遣し、今週にはソレダルからウクライナ軍を撤退させており、また「(アフリカ等)広範囲に及び人権侵害や自然資源の搾取」を、中央アフリカ共和国やマリで「大量処刑、強姦、誘拐、身体的虐待」を行っていると批判している。
衛星画像や航空画像を提供するロシアと中国を拠点に持つ2つの企業、ロシア軍と関係性のある航空会社や技術系企業や、昨年秋、ウクライナのロシア支配下で住民投票の調整をしたプーチン政権の2人の高官も制裁対象となった。米国内の資産を凍結し、米国人との取引は禁止される。通常、ロシアのウクライナ侵攻ではこのような制裁が取られている。
米国家安全保障会議(NSC)のカービー報道官は、プーチン氏によるワグネルの戦闘員への依存度が増し、「ワグネルとロシア国防総省との緊張が高まっている兆候がみられた」としている。ワグネルは、ロシア軍や政府機関と対抗関係になりつつあり、プリゴジン氏や戦闘員らは公に、戦場での能力において、ロシア将校や国防高官を批判しているという。
プリゴジン氏はウクライナでの利益を優先し、ワグネルの軍事決定は、大概において、プリゴジン氏中心となっているという。米国は今後もワグネルの支援者を特定し、阻止を続けるとしている。
同日付露『ザ・モスクワ・タイムズ』:「米、ロシアのワグネル・グループを”国際犯罪組織”とみなす」:
26日発表の声明によると米財務省は、ロシアのワグネルを「国際犯罪組織」と宣言、新たに複数の政治家や企業を制裁対象としている。
ワグネルは実業界の大物プリゴジン氏が創設し、長年アフリカや中東の紛争に戦闘員を派遣してきた。ここ1年は減刑を条件に派兵に同意した囚人をウクライナの最前線に送るなど、ロシア軍への戦力供給で注目されている。
ワグネルや(同じく制裁対象であったとされる)プーチン大統領の側近プリゴジン氏と関係があるとされる6個人、12企業、他には、国営武器産業「アルマズ・アンテイ」、中央アフリカ共和国でワグネルの代行業をしているとされる「セワ・セキュリティサービス」が制裁対象となっている。
米国がワグネルを最初に制裁対象としたのは2017年で、昨年12月には、ウクライナでの軍事活動への関与により制裁が強化されていた。
制裁リストには、ワグネルと関連性のないロシアの政治家や実業家も含まれ、デニス・マントゥーロフ副首相兼通商産業大臣、タタールスタン共和国のミニハノフ大統領、通信業界の実業家セルゲイ・アドニエフ氏がいる。
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ロシアの反体制派ロックバンドがこの程、“ナチス政権打倒”と根拠のない理由で一方的なウクライナ軍事侵攻を続けるウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)を徹底的に糾弾する目的で、“ノー・ナチス(注1後記)・イン・ウクライナ”という新曲を発表している。
12月24日付ロシア
『ザ・モスクワ・タイムズ(MT)』オンラインニュース(1992年設立の独立系メディア)は、「プッシー・ライオット、ウクライナに“ナチスはいない”と歌う新曲を発表」と題して、ロシア反体制派ロックバンドが、ウクライナ軍事侵攻10ヵ月目を契機に、ウラジーミル・プーチン大統領の根拠のない侵攻を糾弾する新曲を披露したと報じている。
反体制派フェミニスト活動家グループのプッシー・ライオット(PR、注2後記)は12月24日、ロシアによるウクライナ軍事侵攻から10ヵ月が経過した日に、この行為を猛批判するミュージック・ビデオを公開した。
PRメンバーのオルガ・ボリソワ氏は12月21日、『MT』のインタビューに答えて、“我々はこの戦争について大声を張り上げる”とし、“皆、戦争に背を向けるのではなく、戦争を止めさせなければならない”と訴えた。
今回公開されたビデオは、“ママ、ロシアのTVを見てはだめだ”という題名の新曲で、ロシアにおける軍事的検閲や弾圧に反対するとともに、ウラジーミル・プーチン大統領及び軍高官等をウクライナ人大量殺戮の罪で国際刑事組織に訴えろ、と歌っている。
PRは、同大統領が“特別軍事作戦”と勝手に呼んでウクライナに軍事侵攻し始めた2月24日以降、これを非難するコンサートを欧州各地で開催してきている。
同グループはコンサートを通じて、ウクライナ最大のオフマディト小児科病院(首都キーフ在)含めウクライナの人々の支援のための寄金を呼びかけている。
過日カタールで開催されたサッカーワールドカップの競技場でも、PRメンバーがピッチに乱入して戦争反対等を訴えようとしたが、直前に警察隊に阻止され逮捕されている。
なお、ウクライナ戦争後複数のPRメンバーがロシアを脱出していて、マリア・アリョーヒナ氏(34歳)、ルーシー・シュタイン氏はロシア当局から指名手配されている。
同日付英国『ザ・ガーディアン』(1821年設立)紙は、「PRの新曲、ウクライナ戦争反対及びプーチン告訴をアピール」と詳報している。
PRは新曲の中で、ウクライナ戦争やロシアの検閲に反対するとともに、西側諸国が依然ロシアから原油や天然ガスを購入することでこれを“支援している”と非難している。
声明の中で彼らは、プーチン政権は“テロリスト集団”だとし、プーチン政権、及びその側近や軍高官らを“戦争犯罪人”だと糾弾している。
今回の新曲は「ママ、ロシアのTVを見てはだめだ」という題名で、“我々の音楽は、恐ろしい戦争で犠牲になったウクライナ人の骨を燃やして喜ぶような、地獄にどっぷり浸かった真の人食い人種と呼ぶべきモンスターのプーチンに率いられた政権に対する怒り、憤慨、不和、そして恨めしくかつ必死の嘆きを表している”という。
PRの主要メンバーであるマリア・アリョーヒナ氏、オルガ・ボリソワ氏、ダイアナ・ブルコット氏(37歳)及びタソ・プレトナー氏は、捕縛されたロシア人徴集兵が、“ママ、ウクライナにはナチスなんていないよ、だから、(嘘をまき散らすロシアの)TVを見てはだめだ”と実母に訴えたことを基にして作詞された歌だと説明している。
彼らは声明の中で、“ロシアのプロパガンダ放送は人々の心を蝕んでいる”とした上で、“彼らが制定した外国エージェントを取り締まる法律を駆使して、反体制活動家やジャーナリストの口を塞ぎ、最後に残っていた独立系の人権擁護団体の活動まで停止させている”と訴えた。
更に彼らは、ソ連時代にラボXという毒薬研究所があり、反政府活動家らを黙らせて来ていたが、現在でも似たような場所が存在し、“プーチンに逆らう者は皆投獄されたり、軍事転用の毒を盛られたりして殺されている”と言及した。
“プーチンやロシア連邦保安庁(FSB、1995年設立の旧ソ連国家保安委員会・KGBの後身組織)の連中は、この「伝統的な」研究所を重宝していて、反政府運動の代表的人物に対して次々に危害を加えていった”とした。
その上で、“アレクサンドル・リトビネンコ(1962~2006年、元FSB職員)、セルゲイ・スクリパリ(71歳、元ロシア及び英国の二重スパイ、2018年毒殺未遂被害、現在英国に亡命中)、ウラジーミル・カラ=ムルザ(41歳、政治ジャーナリスト、2015・2017年に毒殺未遂被害、現在軍事関連”虚偽情報流布“等の容疑で裁判中)、ピョートル・ベルジロフ(35歳、PRメンバーで2018年ワールドカップロシア大会の競技場に乱入して逮捕、同年毒殺未遂被害)、アレクセイ・ナワルニー(46歳、野党勢力代表、2020年毒殺未遂被害、現在投獄中)は明らかに当局の犠牲者だ”と付言した。
(注1)ナチス:ドイツの政党、国家社会主義ドイツ労働者党の略称、また、その党員。1920年ドイツ労働者党を改称して成立。翌年以降ヒトラーを党首とし、1933年に政権を掌握。反民主・反共産・反ユダヤ主義を標榜して、全体主義的独裁政治を推進。また、ベルサイユ体制(対ドイツ制裁等を含む第一次大戦後の国際秩序)の打破をめざして再軍備を強行、第二次大戦を引き起こし、1945年に敗戦とともに崩壊。
(注2)PR:2011年活動開始のロシアのフェミニスト・パンク・ロック集団、抗議活動家グループ。ロシアにおける政治的抑圧や性差別・LGBTQ弾圧・家父長制・受刑者への人権侵害に対し、無許可でのパフォーマンスや音楽活動などを通じて抗議を続けている。メンバーは、寒さの厳しい天候のときも、演奏中も、またインタビューに応じるときも鮮やかな色のドレスとタイツの衣装に目出し帽で顔を隠しており、インタビューには常に偽名で応じている。この集団は10人ほどで演奏を行なうが、これとは別に15人ほどが技術面の裏方や、インターネットに投稿されるビデオの撮影・編集などを行なっている。
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