イスラエルは海底天然ガスの生産を増やしており、欧州にとってのロシアに代わる新しい供給先になろうとしている。今後数カ月以内に欧州と供給契約を結ぶことを目指している。
イスラエルのニュースサイト
『Ynet』によると、業界関係者たちは、イスラエルが今後数年間で、既存プロジェクトの拡張と新規油田の稼働により、生産量を約200億立方メートル(bcm)から約400億立方メートルに倍増させる勢いであることを明らかにした。イスラエルは現在、自国の市場に供給しているほか、国内のパイプライン網を通じて隣国のエジプトやヨルダンに輸出しており、今後追加で生産するガスの多くはヨーロッパ向けになる予定だ。
イスラエルエネルギー省のリオル・シラット長官は、今年後半に稼働予定のイスラエル沖合約90キロのガス田を訪れた際、「比較的早い作業プロセスを作り、夏までに枠組み合意に至ることを望んでいる」と述べた。そのガス田の所有者であるロンドンのエナジアン社は、最近、近くに別の鉱区を発見した。「最初は少量で、徐々に生産と配送の能力が上がれば、数量は増えていくだろう」とシラット長官は語った。この種の合意は、まず政府間で行われ、その後、民間で最終的な合意が交わされるため、現実的には、2024年をめどにヨーロッパへの輸出が開始すると見られている。
供給ルートの選定は、地域の政治を考慮する必要が求められている。エジプトの液化プラントで欧州に輸出し、まだ計画段階にあるパイプラインを使用してヨーロッパに運ぶ方法が検討されている。また、浮体式液化天然ガス(FLNG)施設も候補に挙がっており、この方法であればイスラエルから直接ヨーロッパに出荷することが可能になる。このほか、ガス田とヨーロッパ大陸を結ぶ東地中海(Eastmed)パイプラインプロジェクトや、トルコまでの短いパイプラインも検討されている。
天然ガス市場のコンサルタント兼アナリストのジーナ・コーエン氏は、イスラエルの外務省と欧州議会に提出した報告書で、エジプトはヨーロッパへの最短ルートであり、浮体式液化天然ガスを選べば、どの通過国からも独立した形で輸送できると述べている。一方、直接輸送できるパイプラインは消費者にとって最も低価格となる反面、建設に時間がかかる、と述べている。同氏は、「ヨーロッパへの主要なガス供給国になるための時間的窓口は限られているため、イスラエルはできるだけ早く行動しなければならない」と指摘している。
中東のニュースを扱うアメリカの通信社『ザ・メディアライン』によると、元イスラエルエネルギー大臣上級顧問のドロール・コーエン氏は、イスラエルと欧州のエネルギー供給協定はほぼ不可避だとしている。「何もそれを止められないと信じているが、ここは中東だから、何もそれを妨げないことを祈っている」とも述べている。「エジプトやキプロスのような地域の友好国と一緒に輸出すれば、地元で使えるガスが増え、地域全体の経済が豊かになる」と指摘している。
仏経済紙『レゼコー』は、東地中海、特にエジプト、イスラエル、キプロス沖で最近発見されたガスは、中東の地政学的な風景を変えつつあり、おそらく近いうちに地中海盆地全体の風景を変えることになるだろう、と報じている。東地中海でのガスの発見は、地域に新たな富をもたらし、イスラエルはそれを利用して近隣諸国との平和協定を強化していくことが考えられると伝えている。
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