ドゥテルテ比大統領;南シナ海でフィリピン漁船が中国船に沈められた事件を“小さな海上事故”だとして中国側に配慮【米・フィリピンメディア】(2019/06/19)
ロドリゴ・ドゥテルテ比大統領は、2016年の就任以来、従来方針を大転換して親中政策を推し進めている。それは、欧米が対中批判を繰り広げる、南シナ海領有権問題も同様で、今月初めに南シナ海で発生した、中国船によるフィリピン漁船沈没事件について、“小さな海上事故”だとして、中国側を擁護する発言をした。当然のことながら、反ドゥテルテ派や野党からは、中国に対して弱腰過ぎると猛烈な非難の声が上がっている。
6月17日付米
『AP通信』:「ドゥテルテ大統領、中国船による漁船沈没事故に関し抑制するよう表明」
ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は6月17日、今月初めに南シナ海で発生した、中国船によるフィリピン漁船沈没事故に関し、“小さな海上事故”であるから大騒ぎをするべきではないと表明した。
6月9日早朝、南シナ海南沙(スプラトリー)諸島東方のリード礁に停泊していたフィリピン漁船が、中国船に衝突されて沈没する事件が発生していた。...
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6月17日付米
『AP通信』:「ドゥテルテ大統領、中国船による漁船沈没事故に関し抑制するよう表明」
ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は6月17日、今月初めに南シナ海で発生した、中国船によるフィリピン漁船沈没事故に関し、“小さな海上事故”であるから大騒ぎをするべきではないと表明した。
6月9日早朝、南シナ海南沙(スプラトリー)諸島東方のリード礁に停泊していたフィリピン漁船が、中国船に衝突されて沈没する事件が発生していた。
幸い、同船の乗組員22人は、近くを航行中のベトナム漁船に救助された。
ドゥテルテ大統領は、原因を調査するよう指示してはいるが、あくまで事態を穏便に済まそうとしており、同政権の閣僚とは大きな隔たりがみられる。
すなわち、デルフィン・ローレンザーナ国防相は、フィリピン漁船員を救助することなく立ち去った中国船の行為を厳しく非難し、また、外務省も外交ルートを通じて中国側に抗議している。
これに対して、在フィリピン中国大使館は6月14日、中国船がフィリピン漁船員を救助しようとしたが、多くのフィリピン船に囲まれてしまったので危険を回避せざるを得なかったと釈明した。
しかし、フィリピン漁船員は中国側言い分を否定した上で、万一ベトナム船に救助されなければ、沈没船の22人の乗組員は助からなかったと付言した。
なお、ドゥテルテ大統領は日頃から、頭にすぐ血が上り、暴言を吐くことで知られている
が、今回の中国側擁護発言に対して、民族主義者から反ドゥテルテ派にいたるまで、猛烈に非難している。
一方、6月18日付フィリピン『ザ・マニラ・ブルティン』紙:「ドゥテルテ大統領、長い沈黙を破って、漁船沈没は“小さな海上事故”だと発言」
ドゥテルテ大統領は6月17日晩、漁船沈没事故から8日間も沈黙していたが、当該事故は“小さな海上事故”だと発言して物議を醸している。
マニラ南西部のカビテ州で行われた、フィリピン海軍創立121年記念式典に出席して発言したのもので、同大統領は、中国船の暴挙に抗議するため海軍を出動させるべきとの要請を却下した上で、大ごとにしないように意図してそのように発言したものとみられる。
同大統領としては、大国の中国に対抗しても、力のないフィリピンが打ち負かされるのは必然であるとして、無用な衝突は避けるべきだと考えている。
ただ、弱腰批判に備えて、事態の原因究明を指示し、その上で次の対応策を検討するとも付言している。
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ドゥテルテ比大統領他十数名の首脳来日も、新天皇謁見できるのはトランプ大統領のみ【米・フィリピンメディア】(2019/05/29)
安倍晋三首相が仕掛けた、ドナルド・トランプ大統領訪問による狂想曲は終わった。同大統領が帰国後、“日本は素晴らしい”とツイートしたことから、新天皇皇后両陛下の謁見含めて、ひとまず“成果”があったものとみられる。しかし、同大統領と入れ替わるように来日した、ロドリゴ・ドゥテルテ比大統領他十数名の首脳は、新天皇謁見はできない。大手新聞社主催の国際会議出席のための来日であって、同大統領のように“国賓”待遇ではなかったことから、駐日フィリピン大使も、日本の“プロトコール(注1後記)”上の扱いに理解を示している。
5月28日付米
『ブライトバート』オンラインニュース:「ドゥテルテ比大統領、日本側と南シナ海問題につき協議」
駐日フィリピン大使のホセ・ラウレル5世氏は5月28日、当日の晩に来日するロドリゴ・ドゥテルテ大統領が、新天皇・皇后陛下に謁見できないことを了解していると表明した。
同大統領は、日本経済新聞社が主催する「第25回国際交流会議/アジアの未来(注2後記)」に出席するため来日する。...
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5月28日付米
『ブライトバート』オンラインニュース:「ドゥテルテ比大統領、日本側と南シナ海問題につき協議」
駐日フィリピン大使のホセ・ラウレル5世氏は5月28日、当日の晩に来日するロドリゴ・ドゥテルテ大統領が、新天皇・皇后陛下に謁見できないことを了解していると表明した。
同大統領は、日本経済新聞社が主催する「第25回国際交流会議/アジアの未来(注2後記)」に出席するため来日する。
同会議には、マレーシア、バングラデシュ、カンボジア、ラオス等12ヵ国の首脳や高官が出席するが、ドゥテルテ大統領同様、新天皇謁見はできない。
同大使は、日本が伝統を重んじる国で、今回は米国大統領のみに新天皇謁見を認める“プロトコール”としたことについて理解を示している。
一方、同大使は、ドゥテルテ大統領が安倍晋三首相と会談するとして、日本側が関心の深い南シナ海問題について協議することになると言及した。要旨は以下のとおり;
①貿易立国である日本は、諸外国との交易のため、多くの貿易船を就航させる必要があり、特に南シナ海は、アジア、中東、アフリカ、更に欧州ルート上重要な海域となっている。
②従って、日本側としては、ドゥテルテ政権になって、これまでの親米政策から親中政策に転換していることを非常に懸念していることから、同大統領との協力関係強化が必須と考えているとみられる。
③なお、日本側にとって、国際社会から種々批評のあるドゥテルテ大統領は、“物議を醸すリーダー”というより、むしろ“特異、かつ、関心のあるリーダー”とみている。何故なら、同大統領の国内支持率は依然堅調で、5月の総選挙でも大勝利を収めているからである。
しかし、同大使と違って、ある評論家らは、ドゥテルテ大統領が、過日の選挙戦勝利を契機に、これまで以上に脱日米、親中政策に拍車を掛けるのではないかと懸念している。
5月29日付フィリピン『ザ・マニラ・ブルティン』紙:「ドゥテルテ大統領、4日間滞在予定の日本に到着」
ドゥテルテ大統領は5月28日晩、羽田国際空港に到着し、日本側関係者の歓迎を受けた。
2016年の就任以来3度目の訪日となるが、同大統領の主目的は、5月31日の「第25回国際交流会議/アジアの未来」で基調講演を行うこと、更に、安倍首相と首脳会談を行うことである。
前者において、同大統領は、アジアの将来におけるフィリピンの役割等に言及し、また、後者においては、両国間の安全保障、貿易、インフラ投資等のみならず、北朝鮮の非核化、更には南シナ海領有権問題について協議する予定である。
(注1)プロトコール:国家間の儀礼上のルールであり、外交を推進するための潤滑油。また、国際的・公式な場で主催者側が示すルールを指すこともある。この精神は、国の大小に関係なくすべて平等に扱うことや、誰もが納得するルールに従うことで、無用の誤解を避け、真の理解を促進するための環境作りである。
(注2)国際交流会議/アジアの未来:アジア大洋州地域の各界のリーダーらが、域内のさまざまな問題や世界の中でのアジアの役割などについて率直に意見を交換し合う国際会議。日本経済新聞主催で1995年から毎年開催。今回は25回目で、5月30・31日に開かれる。
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