米民主党大統領候補指名選、2州でサンダース候補が圧勝(2016/03/28)
米国の民主党大統領候補者の指名争いで26日、バーニー・サンダース候補がワシントン、アラスカ両州でヒラリー・クリントン候補に大差で勝利した。これまでの選挙戦で劣勢に立たされてきたサンダース氏が驚異的な巻き返しで一矢を報いた形であるが、依然としてクリントン氏の優位は変わらないと見られている。一方で、若者やリベラル層のクリントン離れの動きが勢いを増しており、今後の民主党予備選ばかりでなく、11月の本選挙の行方にも少なからぬ影響を与える可能性がある。
26日の
『CBSニュース』は、サンダース候補が民主党大統領候補指名選挙でアラスカ州とワシントン州で勝利したが、指名を得るためには他の州でも圧勝する必要があると報じている。
クリントン候補は獲得代議員数でサンダース候補を約300人上回っており、この両州は“勝者総取り”ではないのでクリントン陣営に大きな打撃となったわけではない。サンダース候補は、今後も各州で圧倒的な勝利を続けなければならない。...
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26日の
『CBSニュース』は、サンダース候補が民主党大統領候補指名選挙でアラスカ州とワシントン州で勝利したが、指名を得るためには他の州でも圧勝する必要があると報じている。
クリントン候補は獲得代議員数でサンダース候補を約300人上回っており、この両州は“勝者総取り”ではないのでクリントン陣営に大きな打撃となったわけではない。サンダース候補は、今後も各州で圧倒的な勝利を続けなければならない。
サンダース氏が土曜日に2州で圧勝したのは、大物からの支持が得られたことや、キャンペーンに多額の資金を投入したからで驚くには当たらない。各州の代議員数は、アラスカ州16人、ハワイ州24人、ワシントン州101人であるが、どの州もサンダース氏が得意とする代議員を選出する党員総会を開催する方式をとっている。また、ワシントン・アラスカ両州は白人が多い地方州でありもともとサンダース候補が強い地域である。
クリントン氏は先週末までに1229人の代議員を獲得しサンダース氏の952人を上回っているうえ、428人のスーパー代議員が支持を表明している。指名獲得に必要な代議員数は2383人である。
今後の日程を考えると、サンダース氏にとって最後の大勝利になる可能性が大きい。次はニューヨーク、ペンシルバニア、メリーランドの3州で531人の代議員を争うスケジュールであるが、クリントン氏が優勢と予想されている。
26日付
『ザ・ニューヨークタイムズ』紙は、ワシントン、アラスカ両州でサンダース候補が勝利し、同氏劣勢の中で民主党大統領指名獲得選挙は未だ決着していないと報じている。
サンダース氏はアイダホ州の勝利に続き、リベラルな白人が多く住むワシントン州やアラスカ州でもクリントン候補を破り、最良の結果を手にすることができた。これまで、サンダース氏は南部州で大敗し、オハイオ、フロリダ、ノースカロライナ各州でも敗北し窮地に立たされていたため、代議員101人のワシントン州での勝利は極めて重要である。
サンダース氏は両州の勝利でクリントン候補との差を僅かながら縮めたが、獲得代議員数は土曜日夕刻時点でクリントン氏が約280人上回っている上、440人以上のスーパー代議員が同氏支持を表明している。
しかしその一方で、両州の結果は、クリントン氏がサンダース氏になびいた若いリベラル層や、選挙資金集めやそら演説に懸念を示す有権者を取り込むことに苦戦していることを物語っている。クリントン氏は11月の本選挙を意識した発言に焦点を移していたが、サンダース氏のリベラル層への影響力を目の当たりにして、国内・外交政策への発言に気を遣うようになっている。サンダース氏が所得格差問題やクリントン氏の金融界との癒着に的を絞っているのに対し、クリントン氏は労働者層の取り込みに力を入れている。
クリントン氏は、選挙戦が同氏の地盤であるニューヨーク州(4月19日予定)に移れば勢いを取り戻すチャンスがある。
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苦悩する欧州、内なるISとの闘い(2016/03/25)
3月22日、フランスに続きベルギーでもイスラム過激派による大規模なテロ攻撃により多くの死傷者が発生した。テロの背景には、欧州で生まれたイスラム移民の子弟が欧州社会への不満を抱き、中東に渡航しイスラミックステート(IS)の軍事訓練を受けた後に帰国してテロ化活動に参加するケースが増えていることや、イスラム教難民の大量流入によりテロリストの動きが探知しにくくなったなど問題がある。欧州の治安当局は、イスラム教徒居住地区の取締りを強化するなどテロ再発防止に懸命の努力をおこなっているが、決め手となる対策は無く、次のテロがいつ起きてもおかしくない状況である。
23日付
『ザ・ニューヨークタイムズ』紙は、「欧州の苦悩:内なるISとの闘い」との見出しで欧州内でのテロ攻撃への対処の難しさを報じている。
欧州の指導者らは、域内で起きた大規模なテロ攻撃についてISとの戦争であると認識しているが、問題はもっと複雑である。敵の隠れ家はパリやブリュッセルだけでなく欧州各都市のスラム街にもあり、そこはさながらミニ破綻国家を形成している。
フランスとベルギーはISが支配するシリアのラッカやその他の都市への米国の空爆に参加したが、ISの台頭を扇動した自国民にどう対処するかというより困難な問題に直面している。...
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23日付
『ザ・ニューヨークタイムズ』紙は、「欧州の苦悩:内なるISとの闘い」との見出しで欧州内でのテロ攻撃への対処の難しさを報じている。
欧州の指導者らは、域内で起きた大規模なテロ攻撃についてISとの戦争であると認識しているが、問題はもっと複雑である。敵の隠れ家はパリやブリュッセルだけでなく欧州各都市のスラム街にもあり、そこはさながらミニ破綻国家を形成している。
フランスとベルギーはISが支配するシリアのラッカやその他の都市への米国の空爆に参加したが、ISの台頭を扇動した自国民にどう対処するかというより困難な問題に直面している。彼らのほとんどはイスラム教徒移民の第3世代で、国民文化の埒外に放置された貧しい社会の中で過激思想に染まった者たちである。これらの社会は、ISによるパリ乱射テロ攻撃やブリュッセルでの爆弾テロの温床になっている。
専門家は、単に情報活動を強化し、シリアから帰国する過激活動家や戦闘員であると疑われる者のリストを共有するだけでは問題の解決にはならないと指摘する。欧州各国は、治安確保と監視や人権などへの懸念というジレンマを抱えながら、国内の脅威(人種差別や過激思想などの深刻な社会問題)に対処する戦略を作る必要がある。
政治学者らの見解によれば、イスラム教は過激派を生み出す原因ではないが、一部の若いイスラム教徒の過激な怒りの「運び役」としての役割を果たしている。ISがテロや難民を利用して脅威を与えようとしている状況では、簡単なテロの対策はない。イスラム過激派を研究するフランス人社会学者のギレス・ケペル氏は、ISは「内なる敵」の恐怖を煽って欧州イスラム教徒に対する拒否反応を強めさせ、それによって更にイスラム教徒を過激に追い込み、国内でイスラム教徒対国の内戦を引き起こそうと企んでいると指摘している。
イスラム教徒に対する国籍の否定、市民権の抑圧、際限のない非常事態宣言などでテロを取り締まろうとすれば、ISの思うつぼでヨーロッパ社会が内戦に陥る状況をつくり出すことになりかねない。
23日の
『CNNニュース』は、欧州で今後更にテロ攻撃が発生すると警告している。ベルギー治安当局は、国際空港と地下鉄での爆弾テロを受けて再度、過激派が潜んでいると思われるブリュッセル近郊の一斉取締りや家宅捜査をおこなっている。
テロ攻撃の後、何故ブリュッセルがイスラム過激派の温床になったのか、どれくらいの数の過激派が活動しているのかなどが問題視されているが、それは全く視野が狭い見方である。欧州のテロ問題は、ベルギーやフランスでのテロ事件よりも大きく、それは始まりであって終わりではない。ISの能力と意図を知れば知るほど、ISのテロ攻撃は両国の国境を越えて拡大するであろう。
ISが欧州へテロリストを送り込み、イスラム教徒の若者が大量に流入するという2つのファクターを考慮すると、大規模なテロ攻撃が近い将来必ず起きる。こうした動きは、フランスとベルギーを除けば、大量難民を抱えるドイツと米国の盟友である英国が最もリスクが高い。
困ったことに、欧州でのテロ攻撃に対抗する有効な対策は無いのが実情である。残酷で意志が強い敵が既に域内に入り込み、民衆を隠れ蓑にして、治安当局の監視の目をかいくぐって活動しているのは周知の事実である。こうしたことを考えると、次のテロ攻撃は可能性の問題ではなくいつ起きるかが問題である。欧州では現在の治安維持という難題が、近い将来、自由社会の存在自体を賭けた戦いに変わっていく可能性がある。
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