『ザ・インターセプト』によると、特定の単語の検閲は、「シャウトアウツ」と呼ばれる投稿で、社員を表彰する社内アプリを構築する取り組みの一環として2021年11月に提案された。アマゾンのワールドワイド・コンシューマービジネスの責任者であるデイブ・クラーク氏は、このプログラムの主な目的は、従業員の幸福度を高め、生産性を向上させることによって、従業員の疲弊を抑えることであると述べている。社内文書には、シャウトアウツは、「直接的なビジネス価値を付加する」活動に対して、従業員に仮想の星やバッジを与える、ゲーム化された報酬システムの一部であると記されている。
一方、同社の幹部たちは「ソーシャルメディアの暗黒面」と呼ばれるものに警告を発し、「肯定的なコミュニティ」を確保するため、積極的に投稿を監視することを決定した。幹部による会議では、「自動悪口監視システム」が考案され、下品な言葉や不適切な単語を含むメッセージの送信を自動的に遮断するための禁止用語集が作成された。しかし、冒涜的な言葉だけでなく、「組合」「苦情」「昇給」「報酬」など、組合労働者に関連する言葉も多く含まれている。その他、「倫理」「不公平」「奴隷」「主人」「自由」「多様性」「不公平」「公正」などの単語や「これが気になる」といった表現も使用禁止のリストに含められた。
プログラムをまとめた文書には、「自由記述では、見る側や受け取り手に否定的な感情を抱かせるような意見を書かれる危険性がある。我々は社員が肯定的ではない体験をすることを防ぐために、投稿できるコンテンツに制限を設ける方向に持っていきたい」と記載されている。さらに文書は、自動検閲システムに加えて、上司も、不適切と思われる投稿にフラグを立てたり、削除したりする権限を持つようになると書かれている。このプログラムは4月末に、試験的に導入される予定だという。
しかし、米アマゾン広報担当者のバーバラ・アグレイト氏は英『ガーディアン』紙に対し、「私たちのチームは、従業員がお互いの関わり合うのを助けるために常に新しい方法を考えています。このプログラムはまだ承認されておらず、大幅に変更される可能性がありますし、まったく起動しないこともありえます」と述べた。さらに、「もしこの先、ある時点で正式に導入されるとしても、提案された単語の多くは禁止される予定はありません。禁止される可能性があるのは、攻撃的な言葉や嫌がらせのような言葉の種類だけで、これは社員を保護するためのものです。」と説明した。
米『エンガジェット』は、もしこのプログラムと関連アプリが開始されれば、緊迫した時期に導入されることになる、と報じている。ニューヨークのスタテン島にあるアマゾン倉庫労働者は組合結成を可決したばかりで、アラバマ州ベッセマーの物流施設で働く労働者たちは、一度否決された組合結成の投票にアマゾン側が干渉したとして再投票を行ったばかりである。『エンガジェット』は、アプリは組合結成の妨げにはならないものの、アマゾンが従業員に言及してほしくない労働問題を強調することになりかねない、と指摘している。
『ザ・インターセプト』によると4月2日、ニューヨーク市・スタテン島にあるフルフィルメントセンターで働くアマゾン労働者が、米国内初の組合結成に成功したことは、全米を驚かせたという。既存の組合に属さない独立した組合が、わずかな予算で組合結成を実現し、多くの人に衝撃を与えた。アマゾン労働組合は12万ドル(約1480万円)の予算で、2021年だけで組合結成を阻止するためのコンサルティングサービスに430万ドル(約5億円)を費やしたアマゾン経営陣を打ち負かした。
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