中国は、新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題に伴うサプライチェーン(注1後記)の混乱や「ゼロ-コロナ政策」によって経済成長率の大幅後退に喘いでいる。そこで、常に我が道をいくことが許されると思っていることからか、急速な景気回復を実現させるためには「パリ協定(注2後記)」の約束などお構いなしに、反クリーンエネルギー戦略を実践している。
2月24日付欧米
『ロイター通信』は、「中国、2016年以来最大規模となる33ギガワットの石炭火力発電所建設に着手」と題して、COVID-19禍からの景気回復のためには「パリ協定」で定めた目標などお構いなしに、反クリーンエネルギー戦略を実践していると、環境NGOの調査報告を引用して報じている。
フィンランドのNGOエネルギー・クリーンエア―研究センター(CREA)及び米国のシンクタンク国際エネルギー監視(GEM)が2月24日に公表した調査報告によると、中国は2021年に、2016年以来最大規模となる33ギガワット(3,300万キロワット、編注;日本全体の発電容量の約13%)の石炭火力発電所建設に着手したという。
これは、全世界の石炭火力発電所総発電容量の3倍にも匹敵する規模のものである。
更に中国は昨年、石炭使用に準拠した鉄鋼生産について7,400万トン規模の施設建設を許可しているが、これは全世界の生産規模を上回るものである。
CREAとGEMは共同声明で、“「パリ協定」で定められた枠組みに全く反するもので、これによって(反クリーンエネルギーの)不毛な資産が900億ドル(約10兆3,500億円)増えて1,300億ドル(約14兆9,500億円)にも膨れ上がる”と非難している。
背景には、COVID-19禍に伴うサプライチェーンの混乱や「ゼロ-コロナ政策」によって大幅に減退した景気を回復させるため、環境問題などには構わず独自の政策を進めようとしている中国政府の姿勢がある。
CREAのローリー・マイリビルタ筆頭研究者は、“不動産業界の減退に加えて、COVID-19禍やその防止政策に伴う景気落ち込みに遭ったことから、形振り構わず、最も典型的な炭素集約型の産業や建設業界を盛り立てようとしている”と糾弾した。
一方、習近平国家主席(シー・チンピン、68歳)は先月、二酸化炭素削減政策は、エネルギーや食糧の安定供給、更には国民の“日常生活”を犠牲にしてまで追及するものではない、と宣言している。
かかる背景もあって、中国生態環境部(省に相当、1998年前身設立)の孫寿凉総務部主任(ソン・ショーリアン)は2月23日、中国はまず“安定を第一に”据える必要があり、また、“(環境対策の)目標を余りに高く設定するべきではない”と表明した。
なお、中国国家電網(2002年設立の送電企業)の研究員によると、中国は2026年から石炭使用料削減に着手するとしているが、それまでにまだ150ギガワット(編注;日本の総発電容量の約58%)規模の石炭火力発電所建設計画があるという。
同日付香港『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』紙は、「中国、景気回復のために石炭火力発電も製鉄産業も必要」と題して、国際環境NGOの研究レポートの詳細について触れている。
それによると、中国は、「パリ協定」に基づき、2060年までにカーボンニュートラル(注3後記)を達成するとの目標を立てているが、それと逆行するように、33ギガワット規模の石炭火力発電所の建設に着手し、また、7,400万トンの石炭使用準拠の製鉄増設を許可しているという。
前者は、世界全体の石炭火力発電所の3倍、また、後者も同様に他国の5倍の規模になるとする。
環境NGOのCREAのマイリビルタ筆頭研究員は、2060年までにカーボンニュートラルを達成するためには、中国は石炭火力発電所及び製鉄生産規模を2050年までに約8割削減する必要があるが、上記の動きはこれに全く逆行するものだと非難している。
なお、中国は2021年末現在で、石炭火力発電所2,380ギガワット(編注;日本の総発電容量の約9倍)及び石炭使用準拠の製鉄所2,933万トンを擁している。
(注1)サプライチェーン:商品が消費者に届くまでの、「原料調達」に始まり「製造」「在庫管理」「物流」「販売」等を通じて、消費者の手元に届くまでの一連の流れのこと。供給を鎖に見立て、ひと続きの連続した流れとして捉える考え方。
(注2)パリ協定:第21回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)が開催されたフランスのパリにて2015年12月に採択された、気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定。1997年に採択された京都議定書以来18年ぶりとなる気候変動に関する国際的枠組みであり、気候変動枠組条約に加盟する196カ国全てが参加する枠組みとしては史上初。排出量削減目標の策定義務化や進捗の調査など一部は法的拘束力があるものの罰則規定はない。2020年以降の地球温暖化対策を定めている。
(注3)カーボンニュートラル:環境化学の用語の一つ、または製造業における環境問題に対する活動の用語の一つ。カーボンオフセット、排出量実質ゼロという言葉も、同様の意味で用いられる。何かを生産したり、一連の人為的活動を行った際に、排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量にする、という考え。
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1月23日付
『ロイター通信』:「中国:オリンピック直前の感染者増で更なるコロナ対策を導入」:
冬季五輪の開催が二週間後に迫る中、首都北京では日々感染者が報告されており、中国政府は23日新たなコロナ対策に乗り出した。
国家健康委員会によると22日の北京市の感染者は9人でうち6人は北京市の豊台区だったため、同地区の全住人を対象としたコロナ核酸試験が行われるという。また近郊も含め「リスクのある地域」の住民に対して、北京市外への渡航や大人数の集会も避けるよう当局は呼び掛けている。
北京市は、コロナの自覚症状がある場合や、海外からの郵便物を受け取ってから2週間以内は自主的に検査を受けるよう勧告している。
豊台区の保育園の保護者は、保育園から子どもがワクチン未接種の場合には登園を禁止するとの連絡があったという。これが政府の規制によるものか確認できていないが、保護者側は登園停止の強要だとして、当局に取り消しを求めているという。
国家健康委員会によると、22日の新規感染者は前日の63人から微減し56人、22日現在で、中国本土の感染者は10万5603人となっている。
同日付中国『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』:「冬季五輪が迫る中、北京地区でコロナ検査体制」:
北京冬季五輪まで2週間未満となり、首都地区では23日に大規模な新型コロナウイルス検査が開始された。近郊地区ではコロナ感染が拡大している。
感染拡大の中心とされる北京市の南西部にある豊台区では、1日に200万人の住民の検査サンプルを採取する。北京市近郊の山東省、山西省では4人の感染が確認されたが、全員が冷却貯蔵工場の従業員とみられる。
女性がカナダからの郵便物により感染したと考えられていることから、北京市では海外からの郵便物を開ける際、マスクやグローブを着用するよう呼びかけている。カナダ保健当局は、汚染ポストを介した感染拡大は全くあり得ないとしている。
国家健康委員会は22日、北京の数地区での感染拡大を「非常にハイリスク」だとし、対策強化の必要性を訴え、ハイリスク地域の住民に対し市外への渡航しないよう、また集団を避けるよう呼び掛けている。
中国では2月4日からの冬季五輪に向け、アスリートと他の参加者を隔離する閉鎖区域バブル内での開催に向けた対策を行っている。22日の国内感染者は天津の5人を含む19人で、海外からの渡航者では64人となっている。
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