5月28日付Globali「東・南シナ海問題でG-7対中国が火花、また米軍対中国軍の挑発行動も>の中で触れたとおり、主要7ヵ国首脳会議(G-7サミット)による東・南シナ海問題懸念の共同声明に中国側が不快の念を示せば、米軍による“航行の自由作戦(FONOPS)”等の行動に対抗するように、中国戦闘機が妨害行為に出ている。しかし、米メディアによれば、5月29日に北朝鮮が3週連続の弾道ミサイル発射による脅威増幅によって、トランプ大統領もマティス国務長官も、南シナ海問題より北朝鮮問題での中国の協力を仰ぐ方が大切としている模様と報じれば、ロシアメディアは、貿易と気候変動問題で意見の統一ができないG-7が、日米の策略によって、東・南シナ海問題に関し中国を非難することで唯一の合意点を見出したと皮肉な報道をしている。一方、日中高官の協議について、西側メディアが、北朝鮮問題で日本が中国側圧力強化に期待すると述べたと報じているのに対して、中国メディアは、北朝鮮問題の話題には一切触れず、日中間の中・長期的問題について協議したとのみ報道している。
5月30日付米
『ザ・クォーツ』オンラインニュース:「北朝鮮、中国は意識しているかどうか不詳だが、南シナ海問題から目を逸らさせることで間接的に中国に協力」
北朝鮮は5月29日、3週間で3度目の弾道ミサイルを発射したが、国際社会以上に中国が辟易しているとみられる。しかし、別の見方をすると、北朝鮮の脅威が世間から注目されればされる程、中国が真に関心のある南シナ海問題について、国際社会の目を逸らさせるアシストとなっている。
すなわち、5月25日に米軍が南シナ海の中国人工島周辺でFONOPS作戦を展開し、更に、5月27日にG-7が中国の一方的な海洋活動に懸念を表する共同声明を発信したばかりであるのに、5月28日の報道番組に登場したジェームズ・マティス国務長官は、北朝鮮について“(米国にとって)直接的な脅威”だと深刻に危機感を表明したものの、南シナ海問題には一切言及しなかったからである。
5月29日付ロシア
『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「米国、“中国の弱点を突くため”G-7サミットを利用」
G-7サミットは5月27日、東・南シナ海における中国の海洋活動に懸念を表する共同声明を出した。しかし、本紙がインタビューしたロシアの政治及び軍事評論家の多くは、G-7で貿易及び気候変動問題で意見の一致を見出せないことから、日米が画策して、中国が関わる東・南シナ海問題を挙げることで共同声明をまとめるべく腐心した、とコメントしている。
また、政治評論家は、G-7他西側諸国は中国の成長に危機感を覚えているとした上で、国際通貨基金(IMF)やその他の国際経済・金融組織の評価では、2050年までに中国が世界最大の経済大国となり、米国はインドに抜かれて3位に落ち、更に、欧州主要国は上位10傑からも漏れると予測していると言及している。
なお、ロシア極東問題専門家は、日米の主導もあって、いずれにせよ今後ともG-7は中国を目の敵にしようから、中国にとってロシアとの連携強化が重要となるとコメントした。
一方、5月30日付英
『メール・オンライン』(
『ロイター通信』配信):「日本、北朝鮮問題で中国に大きな役割期待と表明」
日本の国家安全保障局の谷内正太郎局長は、北朝鮮が再度の弾道ミサイルを発射したのと同日の5月29日、中国の楊潔篪(ヤン・チエチー)外交統括担当国務委員を迎えて、更に脅威を増した北朝鮮問題を改善するため、中国側に更に大きな役割が期待されると表明した。
一方、中国外交部は当日夕方、楊国務委員は日本側に対して、目下日中関係は重要な局面にあること、また、南シナ海問題は当事国間の対話に委ねられていることを認識するよう話したと発表したが、北朝鮮問題については一切言及していない。
同日付中国
『環球時報』(
『新華社通信』配信):「日中高官が4度目の政治対話」
中国の楊国務委員と日本の谷内局長が共同議長となって、日中高官による4度目の政治対話が5月29日に日本で開催された。
楊国務委員は日本側に対して、日中間は目下重要な局面にあり、また、国交回復45周年に当ることもあって、歴史を忠実に捉えて将来に繋げるべきだと表明した。すなわち楊氏は、台湾問題や南シナ海問題につき、歴史的事実に則して日本側に建設的な対応を求め、また、東シナ海の平和と安定のために双方の努力が必要と述べた。
更に楊氏は、中国が推進する一帯一路経済政策への日本の参加・協力に期待するとも表明した。
これに対して谷内局長は、アジアにおける経済大国である日中は、今後とも地域の安定のために、脅しあうのではなく相互協力体制の構築が必要だと述べた。更に同局長は、日本は台湾問題含めてこれまでの歴史認識について変更はないと語った。
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史上稀にみる誹謗中傷に明け暮れた、米大統領選の結果がもうすぐ判明する。米国のみならず、国際社会のリーダー的役割を担う米大統領選挙が、“どちらが、より嫌いでないか”という消却方で決まるという状況に、米国民のみならず、多くの国から失望の声が聞こえる。オバマ大統領が“アジア太平洋重点政策”に挙げたアジアの国も、冷やかに見ているようである。
11月8日付米
『Yahooニュース』(
『ロイター通信』配信):「アジア、どちらが米大統領選で勝とうとも米戦略見直し必至」
「●日本の元外交官は、日本側がより好ましいと思うヒラリー・クリントン氏が仮に勝利しようとも、“アジア太平洋重点政策”を進めるに当っては、米国の信頼を取り戻すことが必須と発言。
●何故なら、ひとつには、アジア太平洋諸国が自由貿易発展を願って、漸く基本合意に漕ぎ着けた「環太平洋戦略的経済協定(TPP)」について、ドナルド・トランプ候補だけでなく、クリントン候補も選挙中は反対を表明していたこと、二つ目は、誹謗中傷・暴言等で名立たるトランプ氏を、曲りなりにも共和党代表候補に選んだという米国民に対する批判の目があること。
●インドネシアのバスリ前財務相も、TPPは中国排除の、言わば“アジア太平洋重点政策”を推し進める上で米国にとって最重要ツールであるにも拘らず、両候補がいずれもこれに否定的であることから、アジアにおける自由主義貿易推進の先進国、特に日本、韓国、台湾、シンガポールなどが、今後の対米戦略に懸念を抱いているとみられること。
●更に、シンガポールのアジア研究専門家のバジパイ教授も、米国がTPPから離脱するとなれば、それは中国がアジア地域での影響力増大を獲得することを意味すると解説。
●現実問題、既にフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領、マレーシアのナジブ・ラザク首相は、米国を見限って中国寄りの政策を推進。」
同日付シンガポール
『チャネル・ニュース・アジア』オンラインニュース(
『AFP通信』配
信):「アジア市場はクリントン氏勝利に期待して上昇せるも、投資家は苛立ち」
「●11月8日のアジア市場は、クリントン候補が勝利するとの期待の下、軒並み上昇。
●香港+0.5%、シドニー+0.1%、ソウル+0.3%、シンガポール+0.7%、上海+0.5%。
●ウェリントン(ニュージーランド)、台北、マニラ市場も上昇したが、日経株価は若干下落。
●また、ロンドン▼0.1%、パリ▼0.2%、フランクフルト横ばいと、欧州市場は悲観的。」
同日付中国
『人民日報』:「どちらの候補が勝とうが、米大統領選は“偽物の”民主主義を露呈」
「●今回の米大統領選が民主主義とはほど遠いと言える第一の理由は、二人の候補が、政策論争ならぬ誹謗中傷合戦に終始。
●第二に、民主党候補にクリントン氏が決まった途端、敵である共和党の重鎮たちが、トランプ候補を落選させるべく、共和党員にクリントン氏への投票を呼びかけ、更には、(中立であるべき)大手メディアの多くが、クリントン氏支持を公にしたこと。
●また、米経済、社会、政治をみてみても、米国が“病んでいる”ことが明白:
・米経済は成長しているとするが、貧富格差は拡大(弱者の犠牲の上で経済成長)。
・(初の黒人大統領の)オバマ政権の8年間を経ても、依然米社会の人種差別問題は未解決どころか悪化。
・政治的にも、二大政党がそれぞれ極端な政策を標榜し、かつ、相手方を非難するばかりで、およそ民主主義政党と評価するのは困難。
●以上より、どちらの候補が勝利したとしても、米国の真の政治的問題に直面することになろうし、国際社会も米国の将来について、大いなる懸念をもって注視。」
一方、同日付米
『クォーツ』オンラインニュース:「中国国内で米大統領選の結果を知る方法」
「●世界中で、米大統領選の投票状況についてのニュースが飛び交っているが、中国国内の大衆にとって、その情報を得るのは一苦労。
●第一に、中国政府がフェイスブック、ツイッター、ユーチューブ他多くの外国ネットサービスの閲覧を制限。
●更に、中国メディアに対しても、選挙戦の生放送は通常禁止。
●しかし、当クォーツが中国国内をチェックしたところ、米ABCニュース、CBSニュース、CNN、Foxニュース、NBCニュース、更には、当クォーツ・オンラインニュースは、これまで中国政府に制限されたことはなかったので、今回も当該選挙速報がつぶさに入手可能。」
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