米ウォール街(金融・証券業界)富豪は、2020年大統領選時、ドナルド・トランプ前大統領(77歳、2017~2021年在任)の政策等を嫌気して、ジョー・バイデン大統領(80歳、2021年就任)を支援すべく巨額献金をした。そして2024年選挙に臨み、バイデン政権に失望したため共和党支援に鞍替えするも、反トランプの姿勢は変えず、反トランプ立候補者への支援を打ち出している。
7月16日付
『NBCニュース』は、米ウォール街の富豪らが、2024年大統領選に臨むに当たって、早くも反トランプの姿勢をみせてトランプ以外の共和党予備選候補者支援を表明していると報じた。
米ウォール街の富豪らは、2024年大統領選に臨むに当たって、反トランプの姿勢を示し、トランプ以外の共和党予備選候補者への献金を挙って行っている。
『NBCニュース』(1940年開局)と『CNBCニュース』(1989年開局)が共同で、直近の連邦選挙委員会(FEC、注1後記)報告データを分析したところ、十数名のウォール街富豪がドナルド・トランプ前大統領以外の共和党予備選候補者に献金していることが分かった。
FECの規制で、1人当りの個人候補者宛の献金は3,300ドル(約46万円)、また、候補者支援の政治行動委員会(PAC、注2後記)を通じての献金は6,600ドル(約92万円)が上限とされている。
ウォール街富豪やその他財界人は2020年大統領選時、トランプ前大統領の政策等を批判して、民主党・バイデン候補に計7,400万ドル(約103億6千万円)もの献金を行っていた。
その時、トランプが得ていた献金は1,800万ドル(約25億2千万円)に止まっていた。
なお、共和党予備選候補者のうち、今年4~6月期にウォール街富豪らから多くの献金を集めたのは以下の候補者で、いずれも支持率でトランプを下回っているものの、支援の勢いが増している。
●ロン・デサンティス現フロリダ州知事(44歳、2019年初当選)
・同四半期で、少なくとも15人の富豪らから計2千万ドル(約28億円)の献金を獲得。
・主な献金者は、大型ヘッジファンド創設者のポール・チューダー・ジョーンズ氏(68歳)で、同四半期に同候補者PAC宛に上限の6,600ドルを献金。
なお、同氏は2012年選挙時、ミット・ロムニー共和党候補(現76歳、2019年ユタ州選出上院議員就任)支援のスーパーPAC(注3後記)宛に20万ドル(約2,800万円)を献金していたが、同候補はバラク・オバマ民主党候補(現61歳、2009~2017年大統領就任)に敗退。
また、2016年時には、ジェブ・ブッシュ共和党予備選候補(現70歳、1999~2007年フロリダ州知事在任)及びクリス・クリスティ候補(現60歳、2010~2018年ニュージャージー州知事在任)に献金したが、いずれもトランプ候補に敗退。
・ベンチャーキャピタル実業家のジョー・ローンズデール氏(40歳)、そして米金融大手ゴールドマンサックス(1869年設立、本社ニューヨーク)のジャスティン・シーゲル副社長も、同四半期に少なくとも各々3,300ドルを寄付。
●実業家ビベック・ラマスワミィ氏(37歳)
・同四半期で7百万ドル(約9億8千万円)余りの献金獲得。
・彼の事業方針が、ウォール街が標榜する環境・社会・ガバナンス投資(ESG投資、注4後記)に反対するものだが、今回少なくとも10人余りの富豪からの献金を受領。
・ヘッジファンド、パーシング・スクエア・キャピタル(2004年設立)のビル・アックマン最高経営責任者(57歳)が同四半期初めに3,300ドルを献金。ただ、同氏は同時に民主党予備選候補者のロバート・F.・ケネディJr.弁護士(69歳)にも献金。
・投資家のグレン&エバ・ダビン夫妻(66歳、62歳)は6,600ドルを献金。
・投資コンサルタント会社、エバコアISI(1995年設立)のエド・ハイマン会長は3,300ドル献金。
●ニッキー・ヘイリィ元国連大使(51歳、2017~2018年在任)
・同四半期に500万ドル(約7億円)余りの献金を獲得。
・ヘッジファンド、AQRキャピタル・マネジメント(1998年設立)共同創設者のクリフ・アスネス氏(56歳)、ベンチャーキャピタル投資家ティム・ドレイパー氏(65歳)他十数名の富豪より献金受領。
(注1)FEC:連邦選挙に関わる献金・運動資金の適法性を監視する独立行政機関。1974年設立。本部ワシントンDC。
(注2)PAC:当該候補者の当選や立法議案の成立を援助するため組織された、政治資金団体。
(注3)スーパーPAC:「ある候補者やその選挙運動から独立した団体」で、選挙運動に直接資金援助をしたり、候補者と連携して行動することは許されないが、集めた資金は広告宣伝を中心とする、特定の候補者への支援活動に投じられることが容認されている団体。企業・個人からの献金上限はない。
(注4)ESG投資:地球温暖化などの環境的な課題、労働や人権などの社会的課題、コンプライアンスなどの企業統治の課題といった、企業が果たすべき社会的責任を重視し、その取組みや成果に着目して企業を評価し、投資の意思決定を行う手法。
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中国では、直近の生産者物価指数(PPI)が大幅に下落しただけでなく、消費者物価指数(CPI)も弱含みで推移している。そこで、経済アナリストらが、中国経済がデフレーションに陥る恐れがあるとの見方を示し始めている。
7月10日付
『ロイター通信』は、直近のPPIが大幅に下落したばかりか、CPIも弱含みのため、大胆な財政政策が講じられないとデフレーションに陥る恐れがあるとの見方が出ていると報じている。
中国国家統計局(1952年設立)が7月10日、6月のPPI及びCPIをそれぞれ公表した。
それによると、PPIは前年比▼5.4%と、前月の▼4.6%より更に下落し、2015年12月以来最も大幅な落ち込みとなった。
また、昨年10月以降9ヵ月連続の下落となっている。
一方、CPIは前年比横ばいで、前月の+0.2%より鈍化しているが、これは豚肉価格急落が起因している。
食品とエネルギー価格を除いたコアCPIも前年比+0.4%、前月の+0.6%より伸びが鈍化しており、2021年2月以来の弱含みで推移している。
かかる統計値より、コロナ禍後の経済再生が、第一四半期(1~3月期)のみ活発であっただけで、鈍化に転じているとみられ、デフレーションに陥る恐れが出始めている。
英国の国際金融大手バークレイズ(1896年設立)のエコノミストは、“デフレーション環境がより厳しくなり、また成長の勢いが急激に鈍化していることから、中国人民銀行(PBOC、1948年設立の中央銀行)は段階的利下げを行わざるを得なくなっているとみる”と分析している。
野村総合研究所(1965年設立)は、7月のCPIが前年比▼0.5%下落すると予想しており、これは夏季の行楽シーズンでの消費増を見込んだ上でも変わらないとする。
一方、英国の経済リサーチ会社キャピタル・エコノミクス(1999年設立)のエコノミストは、“中国のインフレーション率は年末までに1%程度に上昇すると予想している”としながらも、“これは中国政府の予想水準(約3%)よりかなり低いため、PBOCは一層の金融緩和に踏み切らざるを得ないだろう”と分析している。
更に、“借り入れ需要が低迷し、人民元が下落圧力にさらされていることから、財政政策と通じての支援策が講じられるとみられる”ともコメントしている。
ただ、世界最大の総合不動産サービスの米法人ジョーンズ・ラング・ラサール(1985年設立)ブルース・パン主任エコノミストは、“PPIの下落が加速したのは、不動産や建設セクターの低迷によるものだが、前年比での下落率は下げ止まった可能性が高く、今年後半には徐々に縮小していくとみる”と分析している。
しかし、多くの経済アナリストは、PBOCによる小幅な利下げでは、コロナ禍で大きな負債を抱え込んだ企業や個人にとっては魅力とはならず、大胆な財政政策発動が不可欠だとみている。
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