中国が2013年より主導する「一帯一路経済圏構想(BRI)」の下で推進されているインフラプロジェクトは、アフリカやアジアの途上国を「債務の罠(注1後記)」に追い込む結果を招いている。そしてこの程、中東ヨルダン(1946年英国より独立)も、中国主導で建設された火力発電プロジェクトの採算が全く取れず、「債務の罠」にはめられたとして、対中政策を見直すとしている。
7月5日付
『AP通信』は、中東ヨルダンが、中国主導で建設した火力発電所の採算が全く取れず、「債務の罠」にはめられたとして対中政策を見直すことになったと報じている。
中東ヨルダンは、中国主導で建設された、オイルシェール(注2後記)を燃料とするアッタラット火力発電所が、同国の巨大な電力供給源となるだけでなく、中国との関係が盤石なものになると大いに期待していた。
しかし、公式開業してから僅か数週間後に、同発電所プロジェクトが同国にとって最悪のものであることが明らかになった。...
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7月5日付
『AP通信』は、中東ヨルダンが、中国主導で建設した火力発電所の採算が全く取れず、「債務の罠」にはめられたとして対中政策を見直すことになったと報じている。
中東ヨルダンは、中国主導で建設された、オイルシェール(注2後記)を燃料とするアッタラット火力発電所が、同国の巨大な電力供給源となるだけでなく、中国との関係が盤石なものになると大いに期待していた。
しかし、公式開業してから僅か数週間後に、同発電所プロジェクトが同国にとって最悪のものであることが明らかになった。
すなわち、まず、プロジェクト推進中に、燃料となるオイルシェールの採掘及び処理が非常に厳しい条件であることが判明したため、ヨルダンとして代替燃料確保に走る必要に迫られ、2014年にイスラエルと総額150億ドル(約2兆1,750億円)の天然ガス輸入契約を成約することができたことから、当該発電所の電力に頼る必要が減少していることである。
一方、総工費21億ドル(約3,045億円)かかった中国主導の同発電所との30ヵ年電力供給契約に基づき、ヨルダン側が中国に対して総額84億ドル(約1兆2,180億円)も支払わなければならないからである。
同国財務省の推計によると、上記電力購入契約を続ける限り、ヨルダン側は毎年2億8千万ドル(約406億円)損失を被ることになるという。
エネルギー専門家は、もし政府が上記を国民に付け替えるとしたら、電力料金を17%も値上げする必要となると試算している。
ヨルダンとしては、1990年代に開発した東部砂漠の天然ガス田の経済埋蔵量が大きく減少する恐れが出てきたため、代替ソースとして同国中央部砂漠(首都アンマンから約100キロメートル南東)のアッタラットにおけるオイルシェール採掘プロジェクトに依存しようと考えた。
その際、米国の中東への関与度が減退する代わりに進出してきた中国が、BRI構想の一環でヨルダンのアッタラット・オイルシェール火力発電所建設プロジェクトに深く関与するようになった経緯がある。
米シンクタンクのスティムソン・センター(1989年設立、本部ワシントンDC)のジェシー・マークス研究員は、“アッタラット発電所プロジェクトは、中国が推進するBRIの中東における典型的な事業である”とコメントしている。
ただ、冒頭の事態に直面することになったヨルダン政府は、中国と連携して他のプロジェクトを推進する気持ちは失せた模様である。
実際に、同政府は今年5月、第5世代移動通信システムについて、長らく関係を続けてきた中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ、1987年設立)ではなく、フィンランドの通信インフラ大手のノキア(1865年設立)と新規に契約を締結している。
(注1)債務の罠:別名、借金漬け外交。国際援助などの債務により債務国、国際機関の政策や外交等が債権国側から有形無形の拘束を受ける状態をいう。この表現は、インドの地政学者ブラフマ・チェラニー教授によって中国のBRIと関連づけて用いられたのが最初。債務国側では放漫な財政運営や政策投資などのモラル・ハザードが、債権国側では過剰な債務を通じて債務国を実質的な支配下に置くといった問題が惹起されうる。
(注2)オイルシェール:油母頁岩、油質頁岩、あるいは油頁岩といい、油母 (ケロジェン) を多く含む岩石のこと。これらを化学処理して液状もしくはガス状炭化水素とすることが可能。世界には、米国を中心に約3兆バレル(約4,770億キロリットル)賦存していると言われる。
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オランダでは、来年1月から学校での携帯電話、タブレットの授業内での使用を禁止するという。教育省は、このようなデバイスは生活に不可欠だが、生徒の気を散らすものだとしているという。
7月4日付
『ロイター通信』:「オランダ、来年から学校での携帯電話禁止へ」
オランダ政府は4日、学校でのタブレット、スマートフォン、携帯電話等の使用を概して禁止すると発表した。
2024年1月からで、学習の妨げへの影響を考慮しての措置で、デジタルスキル関連授業等、特別に必要とされる場合や、障害者による利用は例外とする。
ロベルト・ダイクラーフ教育大臣は声明で、「携帯電話は我々の生活の一部として欠かせないものだが、敎育に必ず必要というものではない。...
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7月4日付
『ロイター通信』:「オランダ、来年から学校での携帯電話禁止へ」
オランダ政府は4日、学校でのタブレット、スマートフォン、携帯電話等の使用を概して禁止すると発表した。
2024年1月からで、学習の妨げへの影響を考慮しての措置で、デジタルスキル関連授業等、特別に必要とされる場合や、障害者による利用は例外とする。
ロベルト・ダイクラーフ教育大臣は声明で、「携帯電話は我々の生活の一部として欠かせないものだが、敎育に必ず必要というものではない。学生には、集中しよく学習する機会が必要で、携帯電話は妨げになると科学調査は示している。我々は学生を守らねばならない」と述べている。
今回の措置は、政府、学校、関係機関で協議の上に決定された。禁止の具体的適用については、各校に一任されているが、2024年夏までに十分な結果が出ない場合には、法的規則を設けることも検討されている。
同日付独『DW』:「オランダの学校で携帯電話が使用禁止へ」:
オランダ政府は、生徒が電子機器を必要とする明確な理由がない限り、授業の妨げとならないよう、学校での携帯電話、タブレット、スマートウォッチを禁止する。
オランダ敎育省が4日、2024年1月から禁止措置をスタートすると発表した。デジタルスキル授業や生徒が障害や医療で必要な場合は例外としている。
先週フィンランドでも同様の決定があった。ドイツでは、バイエルン州のみで、先学期まで学校での携帯電話が正式に禁止されていたが、禁止は解除された。学校に独自の規則を設ける自由が認められているものの、ドイツ連邦共和国基本法はこの携帯禁止とは矛盾している。
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