韓国政府情報では、北朝鮮が米大統領選前後に7度目の核実験を行い、米国に対して示威行動に出る可能性があるという。しかし、脱北者の証言によると、金正恩朝鮮労働党総書記(キム・ジョンウン、40歳、2011年最高指導者就任)は、かつての盟友ドナルド・トランプ前大統領(78歳、2017~2021年在任)の再選を渇望している模様である。
7月31日付英国
『ジ・インディペンデント』紙は、韓国政府は北朝鮮が米国に対する示威行動の一環で米大統領選前後に7度目の核実験を行う準備をしているとしているが、8月1日付欧米
『ロイター通信』は、金総書記は元盟友のトランプ前大統領の再選に期待しているとする脱北者の証言を報道している。
韓国国防部(省に相当)の申源湜長官(シン・ウォンシク、66歳、2023年就任)は7月28日、翌日開催される日米韓国防相会談に出席するために来日した。
同長官は到着時の記者会見で、北朝鮮が2017年9月以降中断している7度目の核実験を実施するための準備を終えたとする韓国諜報機関の情報についてコメントした。
すなわち、同長官は、“北朝鮮が、己の軍事力を大いに喧伝する決定的な瞬間が訪れた際、7度目の核実験を実施すると見込まれるが、それは米国に対する影響力を高めるため、米国大統領選挙の直前または直後である可能性が高い”と明言した。
かかる事態から、日米韓三ヵ国はこの程、北朝鮮のミサイル情報をリアルタイムで共有する仕組みの連携強化や、共同訓練の効率的な実施など、防衛協力を制度化することで合意している。
一方、昨年11月に脱北した在キューバ北朝鮮大使館前参事官の李日圭氏(イー・イルキュー、52歳)は『ロイター通信』の独占インタビューに答えて、“北朝鮮は、もしトランプ前大統領が再選されたならば、米国と核問題について協議したいというのが本音だ”と明言した。
李氏によれば、北朝鮮の外交官たちは、北朝鮮の兵器計画に対する制裁並びにテロ支援国家としての指定を解除し、かつ経済援助を引き出すことを目標に、そのための戦略を練っているという。
すなわち、北朝鮮はロシアとの連携を強化してミサイル技術及び経済支援を確保したことから、それを米国との交渉の強みとした上で、彼らにとって最も有益となる現行の制裁解除及び新たな制裁が科されないことを目指した対米交渉を図りたいと考えているとする。
更に、岸田文雄首相(67歳、2021年就任)が金総書記と会談したいと表明していることに関し、李氏は、北朝鮮が日本人拉致問題に関する譲歩と引き換えに、日本から経済的援助を引き出すべく同首相との首脳会談を模索しているとコメントしている。
なお、従来より北朝鮮が拉致問題は解決済みと公言していることに対しては、“首脳会談で北朝鮮側が優位に立ち、日本側の譲歩を引き出すための戦略だ”と同氏は補足している。
(参考)北朝鮮の核実験:金正日前総書記下で①2006年10月、②2009年5月、次いで金正恩総書記下で③2013年2月、④2016年1月、⑤同年9月、⑥2017年9月に計6度実施。
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7月28日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』(ロイター通信):「在日米軍司令部を強化、中国の脅威に警戒」:
28日米国は、日米両国が「最大の戦略的課題」とする中国を念頭に、在日米軍の主要軍事司令を強化すると発表。
ブリンケン国務長官、オースティン国防相と日本の閣僚らがいわゆる「2プラス2」会合を行った。共同声明では、司令部組織は2025年3月までの自衛隊の合同司令部の設置案に沿って実行されるもので、「日米の軍事統合は70年の軍事協力で最も大きな前進の一つである」とした。...
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7月28日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』(ロイター通信):「在日米軍司令部を強化、中国の脅威に警戒」:
28日米国は、日米両国が「最大の戦略的課題」とする中国を念頭に、在日米軍の主要軍事司令を強化すると発表。
ブリンケン国務長官、オースティン国防相と日本の閣僚らがいわゆる「2プラス2」会合を行った。共同声明では、司令部組織は2025年3月までの自衛隊の合同司令部の設置案に沿って実行されるもので、「日米の軍事統合は70年の軍事協力で最も大きな前進の一つである」とした。
この再編策は大国中国による脅威という「拡大する安全保障環境」への対抗策とされる。声明では、中国による韓国や東シナ海での「挑発的」行為やロシアとの合同軍事訓練、核戦力開発を批判し、中国の「外交政策は自国の利益のため国際秩序を無理変えようとするもの」であり、「このようなふるまいは同盟国及び国際コミュニティへの深刻な懸念であり、インド太平洋地域等にとり最大の戦略的課題」だと述べている。
オースティン氏は今回の再編は「中国の脅威によるものではない」が、同盟国の寄り緊密に効果敵に協働しようという願いを反映したものだと説明している。
日本は米国へ、アジアにおける軍事プロジェクトの基地を提供、5万4千人の軍人、航空機数百機を擁している。中国の軍事的台頭や北朝鮮による定期的なミサイル発射実験により、近年日本は、戦後の平和主義を劇的に変化させている。2022年にはGDP比2%までの防衛費増加案を発表している。
今回、核兵器抑止で、米国のコミットメントを示す「拡大抑止」という言葉が閣僚らにより使用されたのは初めてのことだった。唯一の核被爆国であり核非拡散を訴えてきた日本では、これは非常にデリケートな話題である。
公式声明によると、地域の安定を目的とした拡大抑止や紛争勃発の抑止が議論された。ウクライナでの戦争支援目的で、北朝鮮からロシアへ弾道ミサイルが供給され、大量破壊兵器やミサイル関連技術が北朝鮮へ流れている可能性についても指摘された。北朝鮮は、28日の国営放送「KCNA」によると、戦争がおきた場合は敵を「完全に破壊する」と宣言している。
オースティン氏と木原防衛大臣は韓国のシン・ウォンシク国防相とも会談。北朝鮮のミサイル警告データの共有や合同軍事演習での三者協力「制度化」の覚書に署名した。この覚書は、国際情勢が変化しようとも、我々のパートナーシップを揺るぎないものとし、日本、米国、韓国の間の協力を強化するものであるという。バイデン政権は、1910年から45年の韓国併合での禍根が残る日韓との協力強化を押し進めている。
米国は、ウクライナや中東での紛争による米国産武器メーカーへの圧力を和らげるため、日本への協力を求めており、日米は、サプライチェーン開拓、船舶や航空機修理、ミサイル共同生産等、この分野で様々な協力を模索しているが、地対空迎撃パトリオットミサイルの生産に日本の工場を使用するという重要プロジェクトは、ボーイング社製の重要部品の不足により遅延していると報じられている。
ブリンケン氏とオースティン氏はこの後、バイデン政権の対中国政策の一環としてもう一つのアジア同盟国であるフィリピンと安全保障会議を行う予定。ブリンケン氏は27日、ラオスで中国の王毅外相とも会談。米国と同盟国は「自由で開かれたインド太平洋」をめざすと強調したという。
同日付露『スプートニク』:「米日、新たな合同司令部で軍事連携強化へ」:
米国防総省が28日発表した「日米安全保障協議委員会」(2プラス2会合)声明によると、日米は、軍事協力を強化するため、「統合作戦司令部(JJOC)」を設置する。
これはアントニー・ブリンケン米国務長官、オースティン国防長官、そして上川外務大臣、木原防衛大臣の間で合意された。
米国は、日本の拡大軍事予算維持、自衛隊との統合司令部、サイバーセキュリティや迎撃能力特化等での防衛強化を歓迎するとした。
声明では、日米は意思決定を一致させ、軍事計画と演習での協力を強化するとしている。これには、諜報、監視、偵察活動(ISR)、訓練や軍事演習、作戦計画、緊急事態計画、ロジスティクスなどの分野での相互活動を統合することが含まれるとしている。
また、JJOCはインド太平洋上における脅威の台頭に迅速に対応するための抑止能力強化を目的とした連携協力であるとしている。
オースティン米国防長官は合同記者会見で、司令部設置の決定は中国の活動に関係なく、「より効果的に協働しようという両国の意思に基づくもの」だと強調した。米国は、大統領選挙の結果如何にかからわず、日本との同盟強化を継続する意向を示している。
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