今年の米大統領選に関わる直近の世論調査では、民主党・ジョー・バイデン大統領(81歳、2021年就任)と共和党・ドナルド・トランプ前大統領(78歳、2017~2021年在任)の支持率が拮抗している。かかる背景下、スイング・ステート(注1後記)の投票結果が益々重要視されることになると英国メディアが分析している。
6月15日付
『BBCニュース』は、今年の米大統領選ではスイング・ステートの投票結果が益々重要視されるとみられると報じた。
今年の米大統領選では、約2億4千万人が選挙人登録を行って一般投票を行うと見込まれる。
ただ、形式上間接選挙(注2後記)であるため、必ずしも総得票数の多い候補者が当選することにはならない。
今回の民主党・共和党の大統領選候補者は、ジョー・バイデン大統領とドナルド・トランプ前大統領となるとみられているが、目下のところ支持率は拮抗している。
かかる状況下、今年の米大統領選においてもスイング・ステートの投票結果が益々重要視されることとなり、現在では以下の6州が注目されている。
● アリゾナ州(有権者約400万人、選挙人11人)
・2020年選挙では、バイデン氏が辛うじて勝利したが、民主党としては1990年代以来の返り咲き。
・同州の争点は、国境を接するメキシコからの不法移民流入。バイデン政権下で史上最多となっているため、民主党支持率が低下しており、同政権として移民対応への厳格化の採択を検討。一方、トランプ候補は、当選の暁には「史上最大の国外追放政策」を実施と豪語。
・また、民主党主導の同州議会が今年5月、「1864年制定の人工妊娠中絶禁止法を廃止する法案」を可決しているが、共和党はこれに全面対決。よって、2022年6月の米最高裁による「1973年の妊娠中絶権を認めた判決を覆し、憲法上の保障を否定」判決との関係で争点。
● ジョージア州(有権者約580万人、選挙人16人)
・2020年にバイデン候補が当選したことに対して、トランプ陣営がこの結果を違法に覆そうとしたとして目下係争中。
・同州で33%も占めるアフリカ系米国人が民主党を支持したものの、目下、人種的不公平の是正や経済活性化への取り組みが不十分として民主党政権への批判票が増加。
● ミシガン州(有権者約720万人、選挙人16人)
・2016年、2020年の両選挙で、同州で勝利した候補者が当選。
・バイデン大統領もこの恩恵に与った訳だが、同大統領のイスラエル支援があだになって、全米の中でアラブ系米国人が最も多い同州では不支持率が上昇中。
・一方、トランプ候補はイスラエルに対して、ハマスへの攻撃を速やかに停止するよう要求。
● ネバダ州(有権者約140万人、選挙人6人)
・過去複数回の選挙で民主党候補が勝利。
・しかし、トランプ候補が、当選の暁には減税、規制緩和を打ち出していることを理由として、目下はラテン系米国人を中心に同候補支持が堅調。
・バイデン政権下で、経済成長・雇用創出がなされているが、他州に比べてコロナ禍後の回復が遅延していて、失業率も5.1%と全米で最悪なことから不支持率が上昇。
● ペンシルベニア州(有権者約900万人、選挙人20人)
・2020年選挙で民主党候補を選択する結果となったものの、他州以上に「生活費の上昇」に危機感を抱いていて、食料品価格が全米で最も早く上昇に転じたことから、バイデン政権にとって逆風。
・一方、トランプ候補は、同州においてバイデン政権の物価抑制政策の失敗を責める戦法を取ろうとしているが、それ以前に、共和党予備選で最後まで争ったニッキー・ヘイリー候補(52歳、元国連大使)が同州で善戦していることから、同候補支持の共和党員の抱き込みに苦労。
● ウィスコンシン州(有権者約390万人、選挙人10人)
・2016年、2020年選挙とも民主党候補が勝利したものの、その差は僅か2万票ちょっと。
・従って、民主党、共和党以外の第三の候補の得票数が、バイデン候補かトランプ候補のどちらかかに影響を与える可能性大。
・目下のところ、昨年10月に無所属での出馬を表明したロバート・ケネディJr.候補(70歳)への支持率が上昇中。
・トランプ候補は、今夏の共和党全国大会が同州最大都市のミルウォーキーで開催されることもあって、「当州で勝つことによって自分の当選が確実となる」と強調。
・一方、バイデン大統領は、前任者が公約を果たせなかった雇用創出について成果をアピール。一例として、マイクロソフト(1975年設立)の新データセンター誘致を強調。
(注1)スイング・ステート:米大統領選挙の勝者総取り方式において、共和党・民主党の支持率が拮抗し、選挙の度に勝利政党が変動する州。「注目州」「揺れる州」「揺れ動く州」「激戦州」、また「パープル・ステート」(共和党の赤、民主党の青と区別する色)とも呼称。2020年選挙では、以下の12州が挙げられている。アリゾナ州、フロリダ州、ジョージア州、アイオワ州、ミシガン州、ミネソタ州、ネバダ州、ノースカロライナ州、オハイオ州、ペンシルバニア州、テキサス州、ウィスコンシン州。
(注2)間接選挙:有権者は一般投票日に、選挙人団(計538人)に票を投じ、その選挙人が本選挙において、前もって誓約していた特定の大統領候補と副大統領候補のペアへ投票する方式。選挙人団の過半数270人を獲得した候補者が当選。有権者の投票数の比が直接反映される制度ではないため、1824年・1876年・1888年・2000年・2016年の選挙では一般投票での次点候補が当選している。
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世界長者番付第2位の米著名起業家のイーロン・マスク氏(52歳)は、最高経営責任者(CEO)を務める電気自動車(EV)メーカーのテスラ(2003年設立)から、米史上最大の報酬パッケージを受け取れる可能性が出てきた。6月13日に開催される同社定時株主総会で決議される見通しである。
6月13日付
『ロイター通信』等は、米著名起業家のイーロン・マスク氏がCEOを務めるテスラ株主総会において、同氏宛の破格の報酬パッケージ案が承認される見通しだと報じている。
イーロン・マスク氏は2004年、テスラに対して650万ドル(約10億円)を出資すると同時に会長に就任して、同社を世界最大の電気自動車(EV)メーカーに仕立て上げた。
実際、2021年後半には同社の時価総額が1兆ドル(約157兆円)超と、一時的ではあるが世界最大の自動車メーカーのトヨタをも超えていた(編注;6月13日現在5,840億ドル)。
ただ、同氏はテスラから給与・ボーナスを得る代わりに、自社株取得(ストックオプション)の報酬契約を希望していて、2018年の同社取締役会において、今後10年間で同社時価総額が6,500億ドル(約102兆円)まで引き上げられた場合、同氏は最大560億ドル(約8兆7,920億円)の株式報酬を得るとの報酬パッケージが承認された。
ところが、同社の一部株主が、取締役会決定に対する不服申し立てを行ったところ、今年1月、デラウェア衡平法裁判所(米ビジネス紛争専門)がこの訴えを認め、同氏への報酬パッケージを無効とする判決を下した。
同社取締役会としては、上記判決の結果を受けて、もし同氏が同社CEOを辞任することになれば、同社の損失は上記報酬パッケージ総額を大きく上回る恐れがあるとして、当該判決を不服として上訴していく意向である。
そこで、同取締役会は、控訴審で審理を有利に運ぶべく、同社定時株主総会で本提案を承認してもらうこととした。
マスク氏自身も、他の株主の支持を取り付けるべく奔走していて、同氏の6月12日晩のSNS『X』への投稿では、“多くの株主が、当該報酬パッケージ提案への賛成票を投じる見通しだ”として、株主総会での本議案採択の可能性を示唆している。
なお、他の米企業CEOの報酬総額は以下のとおり、同氏の報酬パッケージを遥かに下回る。
①スンダ―・ピチャイ(グーグル親会社のアルファベット):2億2,600万ドル(約355億円)
②ホック・タン(半導体メーカーのブロードコム):1億6,200万ドル(約254億円)
③ティム・クック(アップル):6,300万ドル(約99億円)
④サティア・ナデラ(マイクロソフト):4,900万ドル(約77億円)
⑤デビッド・リックス(製薬大手イーライリリー):2,700万ドル(約42億円)
⑥マーク・ザッカーバーグ(メタ):2,400万ドル(約38億円)
⑦ライアン・マキナニー(ビザ):2,300万ドル(約36億円)
⑧ジェンスン・フアン(半導体メーカーNvidia):2,100万ドル(約33億円)
⑨アンディ・ジャシー(アマゾン):100万ドル(約1億6千万円)
⑩ウォーレン・バフェット(保険・投資バークシャー・ハサウェイ):40万ドル(約6千万円)
(参考)世界長者番付:米経済誌『フォーブス』が今年4月公表した2024年番付によると、①ベルナール・アルノー(ファッション・小売LVMH会長兼CEO)2,330億ドル、②イーロン・マスク1,950億ドル、③ジェフ・ペゾス(アマゾン会長)1,940億ドル、④マーク・ザッカーバーグ(メタCEO)1,770億ドル、⑤ラリー・エリソン(オラクル会長)1,410億ドル。マスク氏の上記報酬パッケージが不実現、もしくは減額されると長者番付が5位以下に転落の可能性。
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