国連人権理事会、中国やロシアなど複数の独裁政権を理事会に選出
国連総会は13日、国連人権理事会の理事国選挙を実施し、新たに15カ国が承認された。ジュネーブを拠点とする国連人権理事会は、拘束力はないものの各国の政策に影響を与えることができる決議を採択してきている。
人権理事会の理事国47カ国は、3年ごとにその3分の1が入れ替わる仕組みで運営されている。今年末で任期が切れる15カ国を改選する選挙が実施され、アジア太平洋枠から中国、東欧枠からロシア、中南米枠からキューバが選出された。
しかし、中国やロシアなどの独裁政権の選出が人権NGOらの反発を招いている。『フランス アンフォ』によると、ジュネーブに拠点を置くNGO 、「UNウォッチ」の事務局長は、「独裁政権を国連の人権裁判官に選ぶことは、放火魔の一団を消防団に入れるようなものだ」と批判している。...
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人権理事会の理事国47カ国は、3年ごとにその3分の1が入れ替わる仕組みで運営されている。今年末で任期が切れる15カ国を改選する選挙が実施され、アジア太平洋枠から中国、東欧枠からロシア、中南米枠からキューバが選出された。
しかし、中国やロシアなどの独裁政権の選出が人権NGOらの反発を招いている。『フランス アンフォ』によると、ジュネーブに拠点を置くNGO 、「UNウォッチ」の事務局長は、「独裁政権を国連の人権裁判官に選ぶことは、放火魔の一団を消防団に入れるようなものだ」と批判している。
今回、中国に関しては、60カ国以上から400以上の市民団体が反対の声を上げていた。今月6日には、国連加盟国のうちの39カ国は、国連での共同声明で中国政府による虐待に深い懸念を表明した。しかし、新疆ウイグル族の苦境をめぐり、ドイツを筆頭とする39カ国が国連で中国を批判した際、中国は59カ国の指示のもと批判に反論した。
ロシアの選出に対しても、政治囚の存在やアレクセイ・ナヴァルニーの毒殺の試み、シリアの民間人の爆撃などを理由に反対の声が上がっていた。
『フランス アンフォ』は、人権理事会の正当性に関する議論は新しいものではないと指摘している。2000年代初頭には、権威主義体制の侵入を防ぐために、元国連事務総長のコフィ・アナンによって改革された。しかし、努力の甲斐もなく、今日また同じことが起きているというのだ。
カタール『アルジャジーラ』の取材に対し、コペンハーゲン大学国際法部教授のケビン・ジョン・ヘラー氏は、次のように述べている。「ひどい人権記録を持つ国が理事会に選出されるのは残念なことだ。しかし、それが国連の煩雑とした官僚体制の性質である」と述べている。そして、「こうした結果を招くような裏取引を避ける方法はなく」、「各国が投票の際に人権記録を考慮に入れているという証拠はない」と指摘している。
しかし、ヘラー氏によると、疑わしい人権記録を持つ国を選出することには、いくつかのプラス面があるという。「人権の守護者とされる立場上、彼ら自身の人権侵害を隠蔽することをはるかに困難にする」ためだ。
理事会を創設した決議60/251によると、選出された国は、人権の促進と保護において最高水準を維持しなければならないとしている。
イスラエルの『エルサレムポスト』によると、「UN ウォッチ」のヒレル・ノイアー事務局長は、国連人権理事会の選挙を中止して、国連加盟193カ国の全加盟国に開放することを求めていた。理事会メンバーを47カ国に制限することは、人権面での実績が乏しいにもかかわらず、選挙で選ばれた国にステータスシンボルを与えることになるためだ。
ノイアー氏は、2006年に国連人権理事会を設立した決議は、その国の人権記録に基づいて理事会メンバーに選出されるべきだとしているが、その決議が守られることはほとんどない、と付け加えている。そして、「最悪の人権侵害国の多くが選出されてきたことが頻繁に起こっている。理事会の歴史が証明している」と述べている。
理事会メンバー国の任期は3年で、最大2期までと定められる。しかし、人権理事会が年々その存在意義を失っていっているという声はこれからも上がることだろう。
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2020年アラブ・ユース・サーベイ、アラブ人の若者のほぼ半数が海外移住を検討
ドバイ首長国に拠点を置く広告会社「ASDA’A BCW」は6日、アラブ人の若者を対象とした世論調査「アラブ・ユース・サーベイ」の結果を発表した。今年は、移住や汚職が若者の関心事のトップに来ている。
毎年行われているこのサーベイには、アルジェリア、バーレーン、エジプト、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、リビア、モロッコ、パレスチナ、スーダン、シリア、チュニジア、アラブ首長国連邦、イエメン、計15か国の国・地域の、18歳から24歳までの男女約4000人が参加している。
今年の調査では、アラブ人の若者の一番の関心事は移住であることが判明した。この地域の若者の10人に4人以上が、他国への移住を検討している、あるいは過去に検討したことがあると回答している。...
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毎年行われているこのサーベイには、アルジェリア、バーレーン、エジプト、イラク、ヨルダン、クウェート、レバノン、リビア、モロッコ、パレスチナ、スーダン、シリア、チュニジア、アラブ首長国連邦、イエメン、計15か国の国・地域の、18歳から24歳までの男女約4000人が参加している。
今年の調査では、アラブ人の若者の一番の関心事は移住であることが判明した。この地域の若者の10人に4人以上が、他国への移住を検討している、あるいは過去に検討したことがあると回答している。
海外への移住志向の高い国・地域は、危機に見舞われたレバノン、リビア、イエメン、次いで北アフリカとなった。レバノン、リビア、イエメン、イラクでは、60%以上の若者が海外移住を検討している。
『エルサレムポスト』や『アルジャジーラ』によると、中でもレバノンでは77%もの若者が移住を検討しているという。反面、サウジアラビアとアラブ首長国連邦の湾岸諸国では3%にとどまっている。
多くの若者が移住を検討している理由として、自国の貧弱なリーダーシップ、横行する汚職、広範な経済的失敗などへの失望をあげている。アラブ・ユースの77%が自国に汚職があると回答しており、特にイラク、リビア、チュニジア、イエメンが上位を占めている。
サーベイでは、若者が反政府デモを熱心に支持していることも判明した。アルジェリア、レバノン、イラク、スーダンではいずれも最近大規模な抗議運動が起こっており、それぞれの国の若者の80%以上が支持している。
『モロッコワールドニュース』によると、若者の3分の1以上は、政府が国内の汚職を止めること最優先事項とし、続いて新たな雇用創出に力を入れるべきだと回答している。
なお、若者の35%が借金をしており、2019年の21%から大幅に増加している。学生ローンや車のローンが主な借金内容となっている。
しかし、87%以上が失業を懸念していると回答しており、これらの借金に対処するのは難しい状況となっている上、政府が失業問題に対処できると確信しているのは、半数以下だった。
『エルサレムポスト』によると、若者の20%が、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で、自分か家族の一人が職を失ったと答え、72%が仕事を見つけるのが困難だと答えている。就職に最も苦労しているアラブの若者はヨルダンで90%、レバノンで91%となっている。
『モロッコワールドニュース』は、2019年のサーベイと同様に、今年も、アラブ人の若者、特に北アフリカでは、宗教が自分たちのアイデンティティの重要な部分であると考えていると伝えている。
しかし、67%が中東では宗教があまりにも大きな役割を果たしており、66%が宗教機関の改革を希望していると回答している。イエメンとアラブ首長国連邦の若者が、宗教とのつながりが最も低く、宗教が自分たちのアイデンティティにとって重要な要素であると答えた若者は10%に満たない。
『モロッコワールドニュース』は、2020年のアラブ・ユース・サーベイは、この地域の若者が改革を熱望していることを改めて示していると伝えており、次世代が、緑の牧草地に見える海外の国に出ていくことがないよう、各国政府は仕事、教育、腐敗との戦いを優先すべきであると指摘している。
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