イスラエルとスーダンの国交正常化、中東メディアの報道
米ホワイトハウスは23日、イスラエルとアフリカのスーダンが国交を正常化することで合意したと発表した。スーダンは、米国が仲介するイスラエルとアラブ諸国の関係改善において、イスラエルと国交正常化で合意した3カ国目となった。中近東メディアでは賛否両論の声が上がっており、UAEやバーレーンとの国交正常化の時よりも慎重論が目立つ。
カタールの
『アルジャジーラ』は、スーダンの各政党が、イスラエルとの関係を正常化するという暫定政府の決定を拒否し、合意に反対していくと述べたと報じている。
イスラエルとスーダンの国交正常化が発表された23日、首都ハルツームで数十人が、「平和も交渉もイスラエルとの和解もない」、「私たちは降伏しない、私たちは常にパレスチナと共に立つ」と叫んで、デモ行進を行ったという。
人民会議党(Popular Congress Party)のリーダーの1人であるカマル・オマル氏は声明で、スーダンの暫定政府は選挙で選ばれたものではないため、イスラエルとの関係を正常化する権限はないと述べた。...
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『アルジャジーラ』は、スーダンの各政党が、イスラエルとの関係を正常化するという暫定政府の決定を拒否し、合意に反対していくと述べたと報じている。
イスラエルとスーダンの国交正常化が発表された23日、首都ハルツームで数十人が、「平和も交渉もイスラエルとの和解もない」、「私たちは降伏しない、私たちは常にパレスチナと共に立つ」と叫んで、デモ行進を行ったという。
人民会議党(Popular Congress Party)のリーダーの1人であるカマル・オマル氏は声明で、スーダンの暫定政府は選挙で選ばれたものではないため、イスラエルとの関係を正常化する権限はないと述べた。
スーダンは、国内通貨のスーダン・ポンドの急激な下落や消費者物価の高騰など、深刻な経済的苦境に陥り、2019年4月には政府に対する大々的なデモ運動の結果、独裁的なバシール政権が崩壊した。現在は軍民共同の新暫定政府が統治しているが、経済的に厳しい状況が続いている。
バアス党のリーダー、ムハンマド・ワダア氏は、イスラエルとの正常化が合意された場合、暫定政府に対する支援を撤回すると警告する政党がいくつもあると述べている。そして、「政府は大きな間違いを犯した。これは経済的豊かさに導くものではない」と批判した。
一方で、サウジアラビアの『アラブニュース』は、イスラエルのネタニヤフ首相が、両国が関係を正常化することで合意したと発表したわずか2日後の25日に、イスラエルがスーダンに500万ドル相当の小麦を送ると発表したことを報じている。
イスラエル政府は、「我々は暖かい平和を楽しみにしており、新しい友人スーダンにすぐに小麦500万ドル相当を送る」というコメントをツイッター上で発信したという。
スーダンは公式の統計によると年間200万トンの小麦を消費しており、輸入に大きく依存している。ネタニヤフ首相は、「イスラエルはスーダンの民政移管を支援するために、米国と緊密に協力していく」と語り、「まもなくイスラエルの代表団が、多くの分野での協力を議論するために、スーダンで話し合いをすすめることになる」と述べた。
しかし、『アラブニュース』は、関係を正常化する今回の動きは、それを裏切りと呼ぶ人もいれば、沈没する経済を救う方法と見なす人もいるなど、スーダンの深い社会的分裂を表面化させたと指摘している。
なお『エルサレムポスト』は、今回の国交正常化で最もダメージを受けるのはイランだと報じている。イデオロギー的またロジスティックスの両面で打撃を受けるという。
まず、1989年に、30年もの間不動の指導者であったバシール政権が倒され、イスラエルとの正常化が今後実現するのであれば、イランの最高指導者ハーメネイーにも同じことが起こりうることが考えられる。
また、1967年にアラブ連盟が「イスラエルとの和平も、イスラエルの承認も、イスラエルとの交渉もしない 」と宣言し、イスラエルとの国交正常化への反対を宣言した場所だったスーダンの首都ハルツームが、今回この宣言から撤退したことになる。
さらに今回、イスラエルとの国交正常化が、サウジアラビアの影響下にある小さな国を超え始め、拡大しつつあることを象徴した動きだとも推測できる。
国交正常化は、ロジスティックス面でもイランにとっては痛手となる。長年に渡りスーダンは、アルカイダ、イラン、ハマス、その他のテログループにとって西側の監視から姿を消すことができる地域の一つだった。また、ハマスやその他イランの代理組織にイスラエルに対して使用する武器の絶好の密輸ルートとして使われていた。
しかしスーダンとイスラエルとの国交正常化は、イランがこの地域を掌握できなくなる傾向を強めることになる。
トランプ大統領は23日、少なくとも他に5カ国がイスラエルとの国交正常化を希望していると述べている。
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国連人権理事会、中国やロシアなど複数の独裁政権を理事会に選出
国連総会は13日、国連人権理事会の理事国選挙を実施し、新たに15カ国が承認された。ジュネーブを拠点とする国連人権理事会は、拘束力はないものの各国の政策に影響を与えることができる決議を採択してきている。
人権理事会の理事国47カ国は、3年ごとにその3分の1が入れ替わる仕組みで運営されている。今年末で任期が切れる15カ国を改選する選挙が実施され、アジア太平洋枠から中国、東欧枠からロシア、中南米枠からキューバが選出された。
しかし、中国やロシアなどの独裁政権の選出が人権NGOらの反発を招いている。『フランス アンフォ』によると、ジュネーブに拠点を置くNGO 、「UNウォッチ」の事務局長は、「独裁政権を国連の人権裁判官に選ぶことは、放火魔の一団を消防団に入れるようなものだ」と批判している。...
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人権理事会の理事国47カ国は、3年ごとにその3分の1が入れ替わる仕組みで運営されている。今年末で任期が切れる15カ国を改選する選挙が実施され、アジア太平洋枠から中国、東欧枠からロシア、中南米枠からキューバが選出された。
しかし、中国やロシアなどの独裁政権の選出が人権NGOらの反発を招いている。『フランス アンフォ』によると、ジュネーブに拠点を置くNGO 、「UNウォッチ」の事務局長は、「独裁政権を国連の人権裁判官に選ぶことは、放火魔の一団を消防団に入れるようなものだ」と批判している。
今回、中国に関しては、60カ国以上から400以上の市民団体が反対の声を上げていた。今月6日には、国連加盟国のうちの39カ国は、国連での共同声明で中国政府による虐待に深い懸念を表明した。しかし、新疆ウイグル族の苦境をめぐり、ドイツを筆頭とする39カ国が国連で中国を批判した際、中国は59カ国の指示のもと批判に反論した。
ロシアの選出に対しても、政治囚の存在やアレクセイ・ナヴァルニーの毒殺の試み、シリアの民間人の爆撃などを理由に反対の声が上がっていた。
『フランス アンフォ』は、人権理事会の正当性に関する議論は新しいものではないと指摘している。2000年代初頭には、権威主義体制の侵入を防ぐために、元国連事務総長のコフィ・アナンによって改革された。しかし、努力の甲斐もなく、今日また同じことが起きているというのだ。
カタール『アルジャジーラ』の取材に対し、コペンハーゲン大学国際法部教授のケビン・ジョン・ヘラー氏は、次のように述べている。「ひどい人権記録を持つ国が理事会に選出されるのは残念なことだ。しかし、それが国連の煩雑とした官僚体制の性質である」と述べている。そして、「こうした結果を招くような裏取引を避ける方法はなく」、「各国が投票の際に人権記録を考慮に入れているという証拠はない」と指摘している。
しかし、ヘラー氏によると、疑わしい人権記録を持つ国を選出することには、いくつかのプラス面があるという。「人権の守護者とされる立場上、彼ら自身の人権侵害を隠蔽することをはるかに困難にする」ためだ。
理事会を創設した決議60/251によると、選出された国は、人権の促進と保護において最高水準を維持しなければならないとしている。
イスラエルの『エルサレムポスト』によると、「UN ウォッチ」のヒレル・ノイアー事務局長は、国連人権理事会の選挙を中止して、国連加盟193カ国の全加盟国に開放することを求めていた。理事会メンバーを47カ国に制限することは、人権面での実績が乏しいにもかかわらず、選挙で選ばれた国にステータスシンボルを与えることになるためだ。
ノイアー氏は、2006年に国連人権理事会を設立した決議は、その国の人権記録に基づいて理事会メンバーに選出されるべきだとしているが、その決議が守られることはほとんどない、と付け加えている。そして、「最悪の人権侵害国の多くが選出されてきたことが頻繁に起こっている。理事会の歴史が証明している」と述べている。
理事会メンバー国の任期は3年で、最大2期までと定められる。しかし、人権理事会が年々その存在意義を失っていっているという声はこれからも上がることだろう。
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