中国で今年5月、50代の日本人男性2人がスパイ容疑で逮捕されたことが9月末に明らかになった。2人は、浙江省の沿岸部にある軍事施設の周辺と、また、遼寧省の北朝鮮との国境地帯において、それぞれスパイ行為に関わった疑いがあるとして中国当局に拘束されている。そして今度は、上海で50代の日本次女性が、また、北京では60代の日本人男性が、それぞれスパイ行為の嫌疑で拘束されたと北米・アジアメディアが一斉に伝えている。
10月12日付
『ボイス・オブ・アメリカ』(米国、
『AP通信』記事引用)は、「中国、更に2人の日本人をスパイ容疑で拘束」との見出しで、「10月11日のNHKニュースによると、中国当局が今年6月、50代の日本人女性を上海で、また、60代の日本人男性を北京で、それぞれスパイ容疑で逮捕したという。中国は昨年11月、反スパイ行為取締法を制定して、中国国内の外国人の行動について監視を強化していた。なお、法制定前の2010年に、日本の建設会社社員4人が、河北省の軍事施設の写真を撮ったとして訴追されたが、数週間後に釈放されている。」と報じた。
同日付
『アジア・タイムズ』オンラインニュース(香港・タイ拠点のメディア)は、「中国、また2人の日本人をスパイ行為の嫌疑で逮捕」との見出しで、「上海で拘束された50代の女性は、東京で日本語学校を経営しており、中国を頻繁に訪問していた。一方、北京の60代の男性は、元航空会社職員で、中国共産党要人とパイプを持ち、しばしば中国を訪れて中国の政治状況を調べていたとされている。なお中国当局は、5月に拘束した2人の日本人男性は、日本の公安調査庁から依頼されてスパイ行為をしていたとしているが、菅官房長官は公式会見で、日本は他国へスパイを送り込むようなことは一切していないと断言している。」と伝えた。
また、同日付
『人民日報』(中国)は、「日本人女性、スパイ行為で拘束」との見出しで、「今年4人目のスパイとして拘束された日本人女性は、元中国人で現在は日本に帰化している。ただ、中国当局は、どのような行為を理由に逮捕したのか明らかにしていない。」とし、中国現代国際関係研究院の反テロリズム研究専門家の李氏のコメントを引用して、「日中間が緊張関係にあることから、通常の官民レベルでのコミュニケーションが図れないため、日本は外交上及び国内政策に資する情報収集を求めてスパイを送り込んだものと想像される。」と報じた。
一方、同日付
『ロイター通信』(カナダ)は、「新たなスパイ疑惑の中、中国高官が訪日」との見出しで、「中国外交部の華春瑩(ホァ・チュンイン)報道官は10月12日、楊潔箎(ヤン・チエチー)国務委員(副首相級)が今週訪日し、日本側と二国間関係につき政府高官と協議すると述べた。なお、華氏は、先の日本人スパイの拘束については明言を避けた。一方、昨年、当時の駐アイスランド中国大使が、日本側に中国の内部情報を漏らした罪で逮捕されたとの報道があったが、同大使のその後の行方は判っておらず、中国側も口を閉ざしている。」と伝えた。
今週来日する楊国務委員は、10月13日に谷内国家安全保障局長と会談し、翌日には安倍首相を表敬訪問する予定という。なお、楊氏は中国外交を統括する立場にあり、今月末にソウルで開催が予定されている、日中韓首脳会談に向けて意見交換をするとみられる。
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