米・中国メディア;米・中国間のつばぜり合いは2016年も続く(2016/01/04)
米・中は、温暖化対策、過激派組織イスラミックステート(IS)追撃等では歩調を合わせるようにしているが、それ以外のほとんどの分野では、超大国としての覇権争いをしている。例えば、無人爆撃機であり、南シナ海に派遣する戦力増強などである。米・中国メディアがつばぜり合いの様子をそれぞれ伝えている。
12月29日付中国
『アジア・タイムズ』香港オンラインニュースは、「中国製の無人爆撃機は、サイバー攻撃によって手に入れた米情報に基づいて製造?」との見出しで、「12月に発表された、中国の無人ミサイル爆撃機“彩虹-4”(ツァイホン)は、米国製の無人ミサイル爆撃機“MQ-9リーパー”(刈り取り機)に酷似している。機体サイズ、主翼・尾翼間の距離、V字型垂直尾翼、ジェットエンジンなどがほぼ一緒で、唯一の違いと言えば、エンジンへの空気取り入れ口が機体の上にあるか下にあるか位である。...
全部読む
12月29日付中国
『アジア・タイムズ』香港オンラインニュースは、「中国製の無人爆撃機は、サイバー攻撃によって手に入れた米情報に基づいて製造?」との見出しで、「12月に発表された、中国の無人ミサイル爆撃機“彩虹-4”(ツァイホン)は、米国製の無人ミサイル爆撃機“MQ-9リーパー”(刈り取り機)に酷似している。機体サイズ、主翼・尾翼間の距離、V字型垂直尾翼、ジェットエンジンなどがほぼ一緒で、唯一の違いと言えば、エンジンへの空気取り入れ口が機体の上にあるか下にあるか位である。2012年に米国防総省が、中国によるサイバー攻撃で多くの機密情報が盗み取られたと発表したが、無人機に関しては、新しく開発するより、成功例を参考にした方が時間も経費も大幅に節約できることから、そういった行動に出たものと考えられるとしていた。そしてその事態はいみじくも、元CIA職員のエドワード・スノーデンが持ち出した機密文書から明らかにされた-すなわち、2010年頃から仕掛けられた中国のサイバー攻撃は3万回以上、少なくとも1,600ものネットワークに侵入していて、盗み出したデータ総量は50テラバイト、世界第2位の規模の米議会図書館(2,390万冊の蔵書)の5倍もの情報量に匹敵する。」とし、「なお、中国が盗み出したのは、無人機情報だけでなく、B-2爆撃機、F-22ジェット戦闘機、F-35ステルス戦闘機である。中国が最近製造したというJ-20ステルス戦闘機は、F-35を基にしたと言われている。」と報じた。
一方、同日付中国
『人民日報』共産党機関紙は、「米国は南シナ海での愚かな行動を止められる?」との見出しで、「オバマ大統領は、“愚かなことは止めろ!”とよく口にするが、過去10年、米国こそが愚かなことを続けてきたと言える。米国は、アフガニスタンのタリバンや、イラクのサダム・フセイン独裁政権を倒したと言い、また、アラブの春で中東に民主主義を目覚めさせたと話すが、これこそが今のイスラム教国の宗派対立を助長し、ISの台頭を引き起こしているからである。にも拘らず、米国はまたしても南シナ海で、“航行・飛行の自由”などと称して、中国の主権内の諸島や岩礁近海に戦艦や爆撃機を航行させて、いたずらに同海域の緊張を高めている。更に、その尻馬に乗って豪州や日本までも、パワーゲームに首を突っ込もうとしている。中国は、ことあるごとに南シナ海の軍事化は考えていないと発言し、また、東南アジア諸国連合(ASEAN)との領有権問題に関し、平和裏の話し合いによる解決を目指している。従って、フィリピンと日本を除き、アジアの各国は中国の意向を理解しており、むしろ、米国の軍事行動によって米中間で衝突が起きるのではないかと懸念している。」と伝えた。
また、12月31日付米
『Foxニュース』(
『AP通信』記事引用)は、「中国、2隻目の空母建造と発表」との見出しで、「中国の国防部(防衛省に相当)の陽(ヤン)報道官は12月31日、中国が国内初の純国産の空母を建造中であると初めて公式に発表した。大連港で建造中の5万トン級空母で、原子力ではなく通常動力型で、J-15戦闘機などの離発着に使うという。名前は未定だが、これは中国保有の2隻目の空母となる。1隻目は“遼寧”で、十数年前にウクライナから購入し、その後エンジン、兵器などを装備して2013年に就航したが、依然長時間航行に耐えられるよう整備中である。新規建造船も“遼寧”と同サイズであるが、米国が10隻保有する大型原子力空母(ニミッツ級)の半分程度である。」とし、「なお中国は最近、フリゲート艦、駆逐艦、原子力潜水艦などを着々と増強しており、日米や南シナ海で領有権を争うASEANの一部の国との緊張を高めている。」と報じた。
更に、1月2日付米
『Foxニュース』は、「中国、宇宙及びサイバー部隊を強化」との見出しで、「国営新華社通信は1月2日、中国人民解放軍が新たに、核抑止と核反撃の能力増強に資する“ロケット軍”とサイバーや衛星分野の戦略を担う“戦略支援部”を創設したと発表した。北京にある中国軍の施設で12月31日、習国家主席が出席し、新部隊の発足式が開かれたという。」とし、「人民解放軍は、1949年には500万を超える兵員を擁していたが、その後漸減し、昨年秋、230万人の兵員を200万人に減じるとともに、武器の近代化に注力すると発表していた。」と伝えた。
冷戦時代の米・ソの軍事拡張競争のような事態が、米・中間で繰り広げられ、新たな冷戦時代の再来とならないよう、両国の節度ある自重を望むばかりである。
閉じる
北米・中国メディア;北朝鮮、相変わらず不可解な行動(2)(2015/12/21)
12月14日付
Globali「北朝鮮、相変わらず不可解な行動」の中で、“金正恩(キム・ジョンウン)第一書記がお気に入りの、全員女性から成る北朝鮮のポップスグループが、突然北京公演をキャンセルして帰国の途に就いた。これで中朝間がまた冷え込む恐れがある”と報じた。その後の各国メディアの報道では、金氏の水爆保有発言や、南北間高官対話不調が中国を不快にさせたからとか、招待客限定の同公演の観覧者が、中国指導部から次官級に格下げされたために金氏が激怒したから等、様々な情報が飛び交っている。
12月16日付中国
『アジア・タイムズ』香港オンラインニュースは、「北京、北朝鮮ポップスグループ公演を観損なう」との見出しで、「北朝鮮の女性21人のポップスグループ、牡丹峰(モランボン)らが北京公演をキャンセルして、12月11日に突然帰国してしまった。理由は公にされていないが、同グループの女性と金第一書記が不適切な関係にあるとの根拠のない噂を、ある中国メディアが報じたことに金氏が激怒したとか、また、同グループらによる、独裁者の金氏を礼賛する歌などが過剰過ぎるとして中国側が内容を変更するよう求めたことに対して、北朝鮮側が最高尊厳(金氏)への冒涜として呼び戻した等と言われている。...
全部読む
12月16日付中国
『アジア・タイムズ』香港オンラインニュースは、「北京、北朝鮮ポップスグループ公演を観損なう」との見出しで、「北朝鮮の女性21人のポップスグループ、牡丹峰(モランボン)らが北京公演をキャンセルして、12月11日に突然帰国してしまった。理由は公にされていないが、同グループの女性と金第一書記が不適切な関係にあるとの根拠のない噂を、ある中国メディアが報じたことに金氏が激怒したとか、また、同グループらによる、独裁者の金氏を礼賛する歌などが過剰過ぎるとして中国側が内容を変更するよう求めたことに対して、北朝鮮側が最高尊厳(金氏)への冒涜として呼び戻した等と言われている。今回の公演は、ぎくしゃくした中朝関係を改善するワンステップとして企画されたものというが、この“ドタキャン”で関係が逆に更に悪化する恐れがある。」とし、「なお、中国は2千人の兵士を北朝鮮国境に急きょ派遣している。」と報じた。
12月18日付米
『NYSEポスト』オンラインニュースは、「金氏が女性バンドを呼び戻したことで中国側困惑」との見出しで、「中国はこれまで、北朝鮮と他国との関係の仲介役を果たそうとしてきたが、12月11日に持たれていた南北高官対話が何の進展もなく終わったことに不快感を示したためか、当初政治局員(共産党指導部)が同バンドを観賞する予定だったが、急きょ副部長級(次官級)に格下げした。これに金氏他北朝鮮側が激怒して、公演を急きょキャンセルしたのではないかと言われている。」とし、「近年中国側は、金氏や側近の気まぐれで予測不可能な態度・発言に嫌気しており、習主席は特に金氏と距離を置き始めているという。」と伝えた。
同日付カナダ
『ロイター通信』は、「北朝鮮の女性バンド公演キャンセルは、反米ソングが理由か」との見出しで、「中国当局は、北朝鮮バンドが披露する歌の中に、米国を“粗野なオオカミ”と呼んだり、1950~1953年の朝鮮戦争を賛美したりする歌詞が含まれており、いたずらに米国を挑発することに懸念を示した。しかし、同女性バンドメンバーの人選からショーの中味まで金氏が関わっていると言われていることから、北朝鮮側が反発して急きょ呼び戻したのではないかとみられる。」と報じた。
一方、同日付中国
『グローバル・タイムズ(環球時報、人民日報英語版)』は、「中国、国連での北朝鮮非難決議に反対票」との見出しで、「国連総会は12月17日、北朝鮮の人権問題を非難し、かつ、国連安全保障理事会に対し、北朝鮮を国際刑事裁判所に告発するよう求める決議を採択した。賛成119票、反対19票、棄権48票だったが、中国は反対票を投じた。但し、中国は、北朝鮮の人権問題は許されると認めた訳ではなく、中国の主張である、国内問題に他国は干渉すべきではないとの立場から、反対したものである。」とし、「中国国民からみれば、国内にも反対の声もあるのに、中国がこのように、結果として北朝鮮を擁護する対応をしているのに、中朝交流の一環で企画された北朝鮮女性バンドの公演を急にキャンセルするなど、北朝鮮は本当に不可解な国だと思われるはずだ。」と批評している。
なお、中国関係者の直近の情報では、モランボン楽団らの公演のリハーサルをみた中国当局関係者が、背景の映像に、同公演本番日の3年前の2012年12月12日に北朝鮮が行った、長距離弾道ミサイルの発射実験の様子が含まれていたことを認めた。この時中国政府は、自重を求めていたにも拘らず発射実験を行ったことに不快感を示していたが、2013年2月12日に北朝鮮が3度目の核実験を行ったことで、ついに中国の堪忍袋の緒が切れて、中国は、同年3月に提議された国連安保理の対北朝鮮追加制裁決議の賛成に回っている。従って、中国の顔に泥を塗るような、ミサイル発射実験の映像を流させることなどとても容認できず、習主席自身が、当該映像をあくまで流すというなら、即刻帰国させるよう指示を出したと言われている。
なおまた北朝鮮は2013年12月12日、当時No. 2だった張成沢(チョン・ソンテク、金第一書記の叔父)を粛清している。中国にとっては、北朝鮮との経済関係の交渉・調整役と認めていた張氏の排除についても、非常な不快感をもたらす事件だっただけに、2015年12月12日にも、金氏が何かしでかすのではないかと疑心暗鬼になっていたことも背景にあるとみられる。
閉じる
その他の最新記事