台湾で、3月14日から15日にかけて20歳以上の成人1077人を対象に電話で行われた世論調査によると、中国の侵略に対抗するために米国が軍事介入すると考えている台湾人は、現在3人に1人しかいないことがわかった。
人口2400万人の主権国家であり民主主義国家である台湾は、ウクライナと同様、強大な隣国からの脅威に常にさらされている。中国の習近平国家主席は、台湾をすでに主権国家であり、「一つの中国」の一部ではないと見ている蔡英文総統の2016年の当選以来、台湾に対して著しく攻撃的なアプローチをとっている。中国共産党は台湾を支配したことはないが、同諸島を歴史的な省のひとつとみなしている。
こうした中、仏誌『レゼコー』は、台湾世論財団が行った最新の世論調査で、日本が軍事援助を行うと考える台湾人の割合は、アメリカの援助に期待する人の割合を上回っていることが判明したと伝えている。...
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人口2400万人の主権国家であり民主主義国家である台湾は、ウクライナと同様、強大な隣国からの脅威に常にさらされている。中国の習近平国家主席は、台湾をすでに主権国家であり、「一つの中国」の一部ではないと見ている蔡英文総統の2016年の当選以来、台湾に対して著しく攻撃的なアプローチをとっている。中国共産党は台湾を支配したことはないが、同諸島を歴史的な省のひとつとみなしている。
こうした中、仏誌『レゼコー』は、台湾世論財団が行った最新の世論調査で、日本が軍事援助を行うと考える台湾人の割合は、アメリカの援助に期待する人の割合を上回っていることが判明したと伝えている。43%の人が「中国が攻めてきた場合、日本が介入する」と考えているのに対し、米政府が台湾を守るために軍隊を派遣してくれると考えている人の割合は34.5%に過ぎなかった。
昨年11月、ワシントンで民主主義サミットが開催され、バイデン大統領が習近平国家主席と長時間会談していた頃、台湾人の65%がアメリカの介入を信頼していた。この調査を依頼した民間財団は、今回の結果について、ウクライナ戦争が「台湾の世論に強い印象を残した」と説明している。国民は従来の同盟国から有効な支援が得られないことに不安を感じているという。なお、前回の調査では、日本が介入すると答えた人は68%だったのに対し、今回は43%にとどまった。日本に対する信頼も低下している。
仏『リベラシオン』は、ウクライナ戦争は台湾人に衝撃を与え、防御力強化の意識をめばえさせたと伝えている。ロシアによる侵攻の翌日、台湾の蔡英文総統は「ウクライナ情勢と台湾海峡の情勢は根本的に異なる」と弁明し、「ウクライナ情勢を利用して台湾人の士気を貶めようとする心理戦」を糾弾した。しかし、ロシア軍が次々と挫折し、国際社会の結束が強まると、政府の言説はにわかに戦意高揚に向かった。蔡総統は3月12日、「ウクライナの状況は、侵略に立ち向かうためには、国際的な支援だけでなく、すべての国民の団結が必要であることを示している」と軍服姿で陸軍予備兵を前に述べた。
約400名の予備役が戦闘に備えるプログラムの一環として射撃訓練に参加した。3月上旬に始まった訓練は、首都台北近郊の海岸の防衛を想定して行われた。
台湾軍第6軍司令部のトップは、職業軍を補うための予備軍の重要性を強調している。「国全体の安全保障は兵士だけには依存しない。ウクライナでは、戦場にいる兵士や、妻子を避難させた上で戦場に赴く男性たちを見かける。軍事力には限りがあるが、国民の力には限りがない。」と語っている。
米『ロサンゼルスタイムズ』は、台湾はウクライナよりも侵攻しやすいように見えると指摘している。台湾の人口は2400万人と、ウクライナの4400万人より少ない。台湾の軍事力は中国の10分の1であり、ウクライナが現在効果的に使っているような領土防衛力を構築していない。さらに中国の海軍と海兵隊は何十年もかけて、台湾のような島に水陸両用で上陸するノウハウを蓄積してきた。
しかし、『ロサンゼルスタイムズ』は台湾にはウクライナにはない利点があることも指摘している。台湾海峡の幅は130km以上あり、水陸両用で侵攻するのは困難である。台湾は米国から安全保障を約束されている。米国がNATOの同盟国を守ることを約束する条約ほど強力ではないが、ウクライナに対してよりも強力である。さらに、米国はウクライナよりも台湾に直接的な経済的関心を持っている。米国の主要な貿易相手国であり、世界の最高級マイクロチップの半分以上を生産する国である。
ジョージタウン大学のエヴァン・メデイロス氏(元国家安全保障会議幹部)は、「ウクライナで見られたことは、中国にとって台湾に対する軍事行動のリスクについて深刻な疑問を投げかけている。中国は、武力を行使する時は、それは素早く成功するものであり、経済的には西側諸国は台湾よりも中国を必要としているという理論を構築していた。しかしこうした前提はすべて疑問視されるようになった。」と述べている。
一方、台湾にとっても重要な教訓があったという。ウクライナで、ロシア軍の不振を上回る最大の驚きは、予備役と訓練にばらつきのある民間人からなるウクライナ防衛軍の成功であった。ジャーマン・マーシャル基金の中国専門家、ボニー・グレーザー氏は「これが台湾のウクライナの本当の教訓だ。ライフルの使い方を知っている民間人が必要だ。簡単にそのようなことができるのに、台湾はそうしてこなかった。」と指摘している。
トランプ政権の元国防省トップであるエルブリッジ・コルビー氏は、「人々は闘志あふれる断固たる人を愛する。もしウクライナが折れていたら、国際的な支援は実現しなかっただろう」と指摘している。『ロサンゼルスタイムズ』は、決意あるウクライナ国民が侵略を手こずらせることができることを示せば示すほど、台湾のような小国に自衛の方法の参考となり、運が良ければ侵略に対する抑止力となっている可能性がある、と伝えている。
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アメリカのバイデン大統領は就任1周年を迎える前日の19日、昨年11月以来となる久しぶりの記者会見を開いた。しかし、バイデン大統領はウクライナ問題に対する回答で、ロシアに侵入を促すかのような発言をしたことが波紋を呼んでいる。
『AP通信』によると、会見前半、バイデン大統領は、手元のリストをもとに特定の記者に呼びかけるという、予め設定された流れを守って会見をすすめていた。しかし、「CNNの記者が、混乱を招いたアフガニスタン撤退と新型コロナウイルスの検査キット不足など、アメリカ人の多くが政府の能力に懸念を抱いていることに言及した質問を投げかけたことをきっかけに、大統領は暴走し始めた」という。「大統領は手当たり次第に記者を当て始め、極めて伝統的な大統領記者会見が、2時間近くに及ぶ全く別のものになった。」
そうした中、政治専門誌『ザ・ヒル』によると、バイデンは、ロシア軍による「小規模な侵攻」であれば、米国からそれほど攻撃的な反発を受けないかもしれないと示唆した。この発言はソーシャルメディアで話題になり、記者会見の後半で2人目の記者がバイデンにこの件について再度質問した。しかし、その質問への受け答えにも失敗し、今度はロシアの限定的な侵攻となれば、NATO側からの統一した対応が難しくなることをほのめかした。
同誌は、「バイデンの饒舌さは、過去に問題を起こしたことがあるが、19日に再びそれが証明された。」と伝えており、「問題の核心は、バイデンの発言が弱々しく、臆病に聞こえたことであり、プーチンはこれを最大限利用することが懸念される。」と述べている。「特に、今回、ロシアとの交渉におけるアメリカ政府のアプローチは、本気であることを示すことにあった。しかし、バイデンは記者会見で、明白な理由もなく、自らの戦略に墓穴を掘ってしまった」。また、「国内政治の面では、このような発言は、民主党は世界の舞台では弱々しいとする保守派の非難を一層強めるものとなる。」と指摘している。
米日刊紙『ロサンゼルスタイムズ』と英『デイリーメイル』によると、ホワイトハウスと西側諸国首脳は20日、ウクライナへの侵攻を阻止することを目的とした数週間に及ぶ米国主導の激しい外交が台無しになることがないよう、バイデン大統領の失言による被害の収拾に努めたという。
バイデン大統領は翌日の20日、用意された原稿を読み上げ、「プーチン大統領にははっきりと伝えている。誤解はない。もしロシアの部隊がウクライナの国境を越えるならば、それは侵略である。一致された、厳しい経済制裁で対応することになる」と述べた。
英国のジョンソン首相は、「どんな規模であれ、ウクライナへの侵攻は、ウクライナだけでなく、ロシアにとっても大惨事となるだろう」と述べた。また、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長はCNNで、「ロシアはウクライナに対して軍事力を行使しない」ように呼びかけ、バイデンの発言は侵略を促すものではないと説明した。
一方、ウクライナの大統領は、自国への「小さな」侵攻でさえも破滅的であり、「大国には、小さな侵略や小国というものは存在しないことを認識してもらいたい。愛する人を失うことに対し、取るに足りない死傷者、少しだけの悲しみなどは存在しない」と反論した。同国の外相は、「小規模な侵略」は「半分攻撃的」であると言っているようなもので、非論理的であると指摘した。
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